円盤に乗る派 資本主義社会で生きるアナタに…『幽霊はここにいる』(作・安部公房)

円盤に乗る派

「複数の作家・表現者が一緒にフラットにいられるための時間、あるべきところにいられるような場所」を作るための演劇プロジェクトとして2018年にスタート。劇場を訪れ、帰っていくまでに体験する全てを「演劇」として捉え、冊子の発行やさまざまなイベントの開催など、上演作品の発表だけにとらわれない活動を展開している。2021年にはコミュニティとしての共同アトリエ「円盤に乗る場」を設立し、表現にまつわる新しいつながりを探究している。

安部公房について

1924年東京生まれ。満州国奉天(現・瀋陽市)にて育つ。東京帝国大学医学部に留学するが、一時帰郷中に敗戦を迎え、引き揚げまでの混乱期に医学生ながら医療班に従事、大量の死者と直面する。引き揚げ後は大学に復学し卒業するが、生涯医師になることはなかった。1948年、『終りし道の標べに』で小説家デビュー。1951年 に短篇「壁 – S・カルマ氏の犯罪」で芥川賞を受賞。同時期に日本共産党に入党する(後に除名)。

その後は小説のみならず、演劇、映画シナリオ、ラジオドラマやテレビドラマのシナリオ・企画・演出など、メディアを横断して活躍。1973年には自身の演劇集団「安部公房スタジオ」を発足させ、西武流通グループ(後のセゾングループ)代表・堤清二の後援によって西武劇場(後のPARCO劇場)を拠点に活動を行った。

海外からの評価も高く、ノーベル賞にもっとも近い作家と言われたが、1993年に68歳にて没した。

代表作として、小説に『砂の女』、『燃えつきた地図』、『箱男』、戯曲に『友達』、『緑色のストッキング』など。

「こえのば」無事に終了いたしました!

こえのば当日案内より




「こえのば」
~大人も子どももごちゃまぜ、舞台と子育ての話をしよう!~
は、無事に終了いたしました。

当日は、大人の方もお子さんも、多くの皆さまにご参加いただきました。
会場でそれぞれの時間を過ごしながら、舞台のこと、子育てのこと、そして日々のあれこれについて言葉を交わすことができたことを、運営一同とても嬉しく思っております。

ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

今後も「こえのわ」では、オンラインだけでなく、こうして実際に顔を合わせ、大人も子どもも一緒に過ごせる場をつくっていけたらと考えています。

また本サイトにて今回の「こえのば」の様子をレポート記事として公開する予定です。
公開の際には、ぜひご覧いただけましたら嬉しいです。

これからの「こえのわ」と「こえのば」も、どうぞよろしくお願いいたします。

「こえのば」運営スタッフ
プラットフォームデザインlab一同

「ゆだねるからだ」になってみよう



以下詳細はこちらです!
是非チェックしてみてください。

https://www.ccma-net.jp/learn/events/studio/26-9-13-wsp/



AAPA[上本竜平・永井美里](ダンサー、演出家、振付家 ) 

それぞれに異なるからだと重力との関わりから生まれる動きを軸に、コンテンポラリーダンスの創作とボディワークを行う。2歳児の子育て中。

講師ウェブサイト

「座談会」という、つながり続けるための小さな実践



いよいよ一週間後に迫った「こえのば」。

今回は、イベントの中心となる子育て「座談会」について、少しだけお話ししたいと思います。



「座談会」と聞くと、何か意見を言わなければいけない場、発言する人が中心になる場というイメージを持つ方もいるかもしれません。 

演者、スタッフ、制作者、劇場関係者、舞台芸術に従事する様々の方々。

子育て中の人、子どもがいない人、これから子どもを持ちたいと考えている人。
同じ舞台芸術に関わっていても、立場が違えば感じていることが少しずつ違っていたり、実はお互い知らなかったこともたくさんあります。


「こえ」にできないことは、案外…たくさんある

プラットフォームデザインlabや「こえのわ」ではこれまで、取材や座談会を通して多くの声を聞いてきました。

「子どもができたら仕事は続けられるだろうか。」

「稽古場に子どもを連れて行けない。」

「周囲に迷惑をかけるのではないか。」

「フリーランスだから相談する相手がいない。」

こうした出来事は、一人ひとりの個人的な悩みのように思えますが、それは決して個人だけの経験ではないことを知りました。


一方で、それらを安心して話せる場所があるかというと、現状決して多いとは言えません。
また話すことだけですべてが解決するわけではありません。

それでもそうした場や、誰かの言葉がまた誰かにとって新しい視点になったり、自分の考えを見つめ直すきっかけになったりすることがあります。だからこそ、「話せる場所」があること自体に意味があるのだと思っています。

また「子育て」をテーマにすると、「当事者だけの話」と受け取られることがあります。

不規則な稽古時間。フリーランス中心の働き方。長期公演や地方公演。ケアを前提としていない働き方。

こうした環境は、子育てだけでなく、介護や病気、様々なライフステージの変化など誰にでも起こり得る出来事とつながっています。

子育てと生活をどちらも大切にしたい、舞台芸術の仕事を、誰もが無理なく関わり続けられる環境とは何だろうと当事者だけでなく、知ってもらうためにも様々な方と一緒に考えたいのです。


座談会は聞いているだけでも、参加になる!

座談会では、「話すこと」だけが参加ではないと思っています。

その場に居合わせ、耳を傾けること。誰かの言葉を受け取ることも大切な参加の在り方です。話す人だけでは対話は生まれません。

聞いている人がいるからこそ、安心して言葉を手渡すことができます。


だから、「何を話せばいいかわからない」と思っている方も、どうぞ気負わずに来てください!

その場にいてくださること自体が、この座談会の場をつくる一つの力になります。


もしかしたら誰かの言葉に耳を傾けることで、これまでうまく言葉にできなかった不安やモヤモヤに気づいたり、「自分だけではなかったんだ」と感じたりする瞬間があるかもしれません。

話すこと/聞くこと/その場にいることのそれぞれの参加の在り方が、この座談会の場を作ると考えています。

ゆるやかにつながり続けるために…

座談会を通して、「コミュニティをつくること」や「連携」だけを目的に活動しているわけではありません。


舞台芸術と子育てというテーマを通して、舞台芸術の創作や働き方に必要な「余白」を一緒に考えたいのです。

「答え」や「ゴール」を急がず、共感したり、時には違いをそのまま持ち寄りながら言葉を交わし、ときどき耳を傾ける。


強すぎる結びつきでもなく、弱すぎる関係でもないゆるやかなつながり。

業界の中にそうしたつながりが育まれることで、子どもを育てながら舞台芸術に関わり続ける人や、一度現場を離れたものの、もう一度関わってみたいと思う人の後押しになればと考えています。
また、現場を離れてしまったとしても、観客として「ここにいてもいいんだ」と感じられる居場所を、育んでいけたらと思っています。

これまでの私たちの座談会も、これからある「こえのば」の座談会が対話を通して人と人との関係をつなぎ続ける、小さなインフラのような存在になれたら嬉しいです。

ご参加お待ちしています!

プラットフォームデザインlab一同
記事作成:中村友美

演劇と子育てと暮らしがまざりあう場所

自己紹介とくロひげのこと

ご縁あって、このコラムを書かせていただきます。薬師寺博子と言います。普段は保育士の仕事をしています。出身は神奈川県横浜市。現在は千葉県館山市で夫と3人のこどもたちと暮らしています。

夫婦共に、実家は他県。共働きなので、夫婦でやりくりしていかなければならず、こどもの病気や怪我などで有給休暇をたくさん消費してきました。三女が3歳を過ぎてからは、急な発熱や、保育園から体調不良で呼び出されることもかなり減ったので、少しは余裕もでてきました。(今度は小学校高学年になった長女が学童に入れなくなり、そちらもそちらで悩みではあります。)

館山でのそんな生活のかたわら、くロひげという団体で演劇をしています。

くロひげは、主に横浜で活動をしています。

メインのメンバーは、わたしも入れて5人。全員が高校の同級生で、演劇部で出会った集まりです。

はじめは劇場での公演をメインでやっていましたが、いつしか劇場を飛び出して、民家での公演や、小学校旧校舎や歴史的建造物での滞在制作と発表、フリーペーパーやメールマガジンの発行など、様々な演劇の形を模索してきました。

現在は賃貸の一軒家を拠点にして、演劇活動をしています。

わたしは横浜を離れて15年になります。離れているのにくロひげで演劇を続けているし、こどもが生まれて生活が変わっても、つながりは持ち続けています。

このコラムでは、団体の拠点から離れて暮らしているわたしがどうやって活動に参加しているのか、子育てをしているメンバーが多い中、くロひげがどうやって活動を続けてきているのか、そんなことを書いています。(ちなみに、くロひげのこどもたちは全部で10人。3きょうだいが3組と、もうひとり。なんと、大人よりも多いんです。)

くロひげの活動スタイル

わたしはくロひげでは役者はやっていないので、公演のWeb広報や、終演後のアンケートの集計、メールマガジンの原稿など、現地にいなくてもできることをやっています。

ビデオ通話も昔よりずいぶん快適に使えるようになったので、稽古場につなげておしゃべりをしたり、クリエーションに参加したりして、拠点から離れていても、一緒に演劇を続けることができています。(年に数回はこどもたちを連れて帰省し、オフライン参加もしています。スケジュールやこどもの預け先の都合がつけば、公演のスタッフもしています。現場はやっぱり楽しいですね。)

館山のわが家では、オンライン参加の時は、ほぼこどもたちが一緒にいます。基本的に土日の参加なので預け先もなく、わたしだけ別室にこもるという訳にもいかず、リビングでパソコンを開いています。

そうすると、かまってもらいたいこどもたちが、話しかけてきたり、ビデオ通話に映り込もうとまわりをちょろちょろしたりします。こどもたちだけで遊んでいたり、テレビやゲームで静かな時もあるんですが、それも長くは続かない。

こどもたちの食事やトイレの対応、お昼寝に付き合うなど、生活のこともあり、ちょこちょこ落ち着かない状況での参加のスタイルがはじめは大変でした。今はそんなに手がかからないのと、オンライン参加に慣れてきたこともあり、そこまで大変さは感じていません。

一方、横浜の拠点でも、たくさんの苦労があったようです。

こどもたちが稽古中に容赦なくかかわってきて、「公園に行きたい!」「虫とりをしたい!」とその場の対応では満足できない要求をぶつけてきます。

お腹が空けば食事やおやつを用意して、眠たくなってぐずれば眠れるように環境を整え抱っこをする。夜の稽古にそなえて、お風呂タイムをとることもあります。まあ、とにかくせわしない。稽古が中断することもしばしば。一軒家を拠点にしていなければ、たぶん集まり自体が崩壊していたんじゃないでしょうか。

貸しスペースだと、飲食や、こどもの遊び、時間、たくさん気を遣わなければならないけれど、一軒家ではそれがほとんどない。稽古場に生活をそのまま持ってこられるのが、こども連れのわたしたちにとても合っているんだと思います。

館山では生活の中で稽古をするのがどこか大変で、一方横浜では稽古の中で生活をまわしてどうにかやっていて、オンライン参加、現地共に苦労が多くありました。そのたびにどうしようかと、いろいろ考えてやってきましたので、その一部と成果をご覧ください。

その1

稽古をする時間と、こどもたちと遊ぶ時間を分けて、こどもたちに負担がかからないようにするのはどうだろうか。→時間を決めたことで、メリハリはついたけれど、こどもたちはいつだって遊びたいらしい。いつでも話しかけに来ます。「この時間までは…」と待ってもらったり、一緒に遊びながら演劇のエッセンスを探ってみたり、とにかく全力でこどもたちに向き合う時間をとったりもしました。こどもたちが満足して上手くいった日もあれば、全然ダメで稽古がなかなか成り立たない日もありました。

その2

こどもを預けて大人で集まる時間を作って、短時間でも濃い稽古ができないだろうか。

→平日だと都合をつけて稽古時間をとることができますが、土日祝日はそうもいかない。パートナーが仕事でいない、頼みの実家にお願いできないことも。それでも、本番は迫ってくるので、追い込みの時期はどうにかやりくりをして、大人だけの集中稽古の時間を取るようにしています。こどもといる稽古場とは流れがかわってくるので、これはこれで、おもしろい時間でもあります。

その3

こどもを寝かしつけてから、夜にミーティングをするのはどうだろうか。

→寝かしつけからの寝落ち多発。学生の頃よりわたしたちは夜に弱くなっていました。復活して「おまたせ…」と合流できることもあれば、もはや復活もできず、翌朝謝罪メッセージが入ることも。  逆に全然寝なくて、寝かしつけそのものをあきらめ、ミーティングの後ろでこどもが遊んでいるなんてこともあります。

その4

こどもが過ごせるスペースを整えて、部屋を分けて稽古ができるようにするのはどうか。

→1階でこどもが遊んでいるすきに、大人は2階で稽古開始。これはちょっと良い流れかもしれない?やはり一軒家はわたしたちのスタイルに合っているのでは。…と思っていたのに、何故かこどもたちはじわじわと遊びのスペースを広げ、大人たちに話しかけ、気が付けばみんな稽古スペースに…。

とはいえ近頃は、こどもたちだけで過ごせる時間も増えてきました。きょうだいじゃなくても一緒に遊んで、交じり合って過ごしていて、かれらはかれらで、一軒家で会うことを楽しみにしているようです。

稽古場にこどもと一緒にいるということ

こんな感じで、館山でも横浜でも、くロひげでは創作の場にこどもがいるのが当たり前になり、こどもがいても稽古ができるようにやりくりをしています。こどもがいるという状況もまるっと受け止めて、その中で演劇をすることを探っています。

そしてこの考えは、作品や公演にも影響しています。ここ何年かは0歳のこどもから大人までが同じ空間で演劇を観るための場を考えてつくっています。

こどもが来るからといって、こども向けの作品をつくっているわけではなく、大人の会話の場面も多く出てきますし、こどもだから分からないだろう、こどもだから最後まで観られないんじゃないか、とはじめから決めつけずに、わたしたちが演劇で表現したいことに合った形式・演出で作品は構成されています。もちろん、こどもたちが親しみやすいエッセンスや、五感を刺激する場面や素材も取り入れていますが、大人が演劇鑑賞をするように、こどもはこどもとして、演劇を観て、受け取ってくれたらいいなと思っています。

なんで演劇をつづけているのか

こんなに大変な思いをして、しかも横浜から遠く離れているのに、どうしてかわたしはくロひげで演劇を続けています。もちろんあきらめようと思ったことも、何度もあります。

それでも続けられたのは、なんでかなと考えると、メンバーが一緒にやろう!と声をかけ続けてくれていたり、どうしたら遠方でも参加できるかアイデアを出してくれたり、困りごとを聞いてくれていたことが大きいです。いろんな参加の仕方を試して、上手くいったことをつなぎ合わせて、どうにかやっている、という今です。

館山から横浜に行くには交通費もかかるし、こども3人連れての移動はとっても大変なんですが、活動は面白いし楽しい。仲間から刺激はもらえるし、新しい知識もアップデートできる。演劇もやっぱり楽しい。こどもたちもくロひげの公演を見るのを楽しみにしてくれています。

横浜にいるメンバーも、仕事の都合がつかずにしばらく活動に来られなかったり、子育てでばたばたしていて少しお休みをしていたり、それぞれに事情をかかえつつ、出たり戻ったりを繰り返してくロひげは続いてきました。

おわりに

館山でのわたしのこと、横浜でのくロひげのあれこれ、それをつないだ稽古の話、と書いてきました。

前章でも書きましたが、わたしが続けてこられたのは「みんなで」仕組みをつくって、場を整えてきたからだと思います。

わたしはこれをとてもありがたいことだな、と思っていて、歳をとってもこどもが大きくなっても続けていけたらな、とのんきに考えています。メンバーも「くロひげはこの先60年は続く」って言ってますし、元気に生きて、演劇をしていきたいものです。

トップ画像:photo by takahiro imai


これからの活動

■ベイビーシアターワークショップ「からだハーモニー」

2026年8月28日(金)

①10:00開場/10:30開演 

②14:00開場/14:30開演

ボッシュ ホール(都筑区民文化センター) リハーサル室

https://tsuzuki-wcc.jp/5945/

高円寺プレイグラウンドー紙のリハーサルー


 今回の遊び場プランナー 

今井さつき(アーティスト)

神奈川県出身。
2022年東京藝術大学大学院 美術研究科 美術専攻 博士後期課程修了。

鑑賞者の参加によって完成する参加型・共創的な作品を制作している。人々が共に体験し、遊び、創造する「遊び場(PLAY GROUND)」をつくり、その中で生まれる交流や関係性を探求している。

ビデオゲーム制作、デザイン、現代美術という3つの領域を学んだ経験を背景に、人と人との関係性から生まれるコミュニケーションや創造性に関心を持つ。誰もがこの世界の主人公であり、小さな遊びや実践が社会を変える力を持つという考えのもと、その可能性を作品を通して問い続けている。

代表作は「人間ノリ巻き」、「はじまりのだいち」など。

近年の展示に、2025年「Biennale Jatim Ⅺ」(Pudak Gallery Gresik/グレシック、インドネシア)、「2024年度 はっち アーティスト・イン・レジデンス事業 活動記録展」(八戸ポータルミュージアム はっち/青森県)、2024年「はじまりの美術館 開館10周年企画『き・てん・き・てん』展<夏会期>」(はじまりの美術館/福島県)など。

イラスト:今井さつき

『高円寺プレイグラウンド』について

座・高円寺では、これまで毎年ゴールデンウィーク期間に、こどもたちと共に劇場空間を架空の「町」に変身させる参加体験型ワークショップ『みんなのリトル高円寺』を開催してきました。2026年4月の指定管理者交代に伴い、合同会社syuz’genがこの事業の精神を受け継ぎながら新たな視点で再構築したのが、『高円寺プレイグラウンド』です。毎年異なるテーマのもと、アーティストが”遊び場”を設計します。この企画は「つくる・あそぶ・であう」の三層で構成されます。アーティストが遊び場を作り、こどもたちがその中で自由に遊び、遊びがまた遊び場を変えていく。そこにアーティストが「遊び場の一部」として存在する時間が重なることで、鑑賞でも体験学習でもない——遊びの中でこどもたちがアーティストと出会う場が生まれます。

KAATキッズ・プログラム2026『子どものためのうつくしい国』


大人もこどもも楽しめる、KAAT キッズ・プログラム
当劇場は、開館以来、“おとなもこどもも楽しめる”ことを目標に掲げ、「KAATキッズ・プログラム」を継続して実施。これは、優れた芸術文化との出合いを通じて子どもの多彩な成長を促し、一緒に観劇した親や同伴者との対話などを通じてコミュニケーション力を向上させる機会となることを目指し、子どもたちが舞台芸術に触れる機会であると同時に、舞台芸術への興味や関心を高め、劇場があらゆる人にひらかれた場となることに繋げるとともに、将来の観客層を育む取り組みとなっています。これまで宮本亜門、小川絵梨子、前川知大、小野寺修二、岡田利規、森山次、北村明子、松井周、根本宗子、加藤拓也など、第一線で活躍するアーティストと企画性の高い新作に取り組み続けています。今後も、子どもたちに豊かな体験を届けるための取り組みを続けてまいります。

8/9☆こえのば通信ワークショップ講師紹介:水上祐佳さん

水上さんの普段の活動を教えてください!

べビーシッターを中心に、絵本の原画展の企画・開催、こどもたちのあそびばづくり(主に製作遊び)、ドイツミュンヘン発祥のこどものまちの開催など絵本や子どもたちに関わる仕事をしています。絵本を原作とした演劇の上演やあかちゃんのためのベイビーシアターも行いますが、現在舞台関連は休業中です。

これまで開催したイベントでの印象的だったエピソードを教えてください。


道の駅のお祭りでスライム屋さんとして参加したのですが、お祭りの時間5時間めいいっぱいスライム屋さんは行列となり、キッチンカーに行きたかったのに行けなかったことです。「スライムってすげー…」と驚きでした。


今回のスライムワークショップ、おすすめのポイントを聞きたいです!


きらきら・あわあわ・もちもち・暗いところで光るスライムの4種類を用意しています。それぞれ感触や伸び具合がちがっておもしろいですよ!自分で材料の重さをはかったり、まぜたり、色をつけたり、つくって楽しい!遊んで楽しい!です◎

子どもや子育て、舞台芸術、また保育者視点からでもなんでも大丈夫です。水上さんにとって気になること・考えていることはありますか?

子どもたちの主体性を育むことを日々意識しています。子どもたち、特にあかちゃんは何もできない存在ではありません。あかちゃんは毎日成長して、見て聞いて体験してたくさんのものを得ていっています。なんでもかんでもしてあげるのではなく、私も子どもたちも常に対等で、共に体験し、生きる日々を送りたいと思っています。



こえのばの情報はこちら!

「あれはなんだったんだろう?!」を親子で味わう


松本ゆい(以下、松本)

今回、私は7歳の息子と一緒に『さかさまの世界』を観ました。

まず印象的だったのが開演前の紙芝居です。とても作り込まれた世界観があった一方で、劇場に入るとほとんど何もないブラックボックスの空間が現れました。子ども向け作品というと、華やかな舞台美術や分かりやすい導入を想像していたので、とても意外だったんです。そしてどんどんいろいろなことが起きていく。でも観終わったあと、「あの紙芝居は何だったんだろう?」という疑問が残りました。あの導入にはどんな意図があったのでしょうか。

伊藤郁女さん(以下、伊藤)

紙芝居は、この作品を作る際に最初に生まれたものなんです。

私は子どもたちに「秘密って何?」と尋ねるところから創作を始めました。でも、いきなり「秘密はありますか?」と聞いても難しいですよね。だからまず、「秘密はどんな色?」「重い?軽い?」と想像を広げるための入り口として紙芝居を作りました。

秘密は想像力や夢とつながっています。子どもたちは秘密を抱えながら、自分だけの世界を広げていく。その力が世界を変えていくかもしれない。そんな思いが作品の根底にあります。ただ、その意味を作品の中で全部説明したいとは思いませんでした。

観た人が「どうつながっていたんだろう」と考える余白も大切にしたかったんです。フランスでは子ども向け作品でも、すべてを説明しないことは珍しくありません。子どもたちの想像する力を信じているんです。


松本  美術を極力そぎ落としたブラックボックス空間にも驚きました。

伊藤  私は何もない空間が好きなんです。セットがたくさんあると、それだけでメッセージが生まれてしまう。でも空っぽの空間なら、観客が自由に想像できる。ブラックボックスは私にとって「ブラックホール」のような存在です。空白であり禅でもありますよね。そこには何でも現れる可能性がある。その場でダンサーと出演者でその場を作っていき、さらに『さかさまの世界』は、観客と一緒に世界を作る作品です。だからまず空白を用意したかったんです。

『ひみつ小屋』紙芝居 撮影:金子愛帆

子どもたちの「秘密」

松本  改めて「秘密」をテーマにすること自体がとても面白いなと思いました。私も7歳の息子がいるのですが、そもそも秘密ってあるのかな、と考えてしまいました。

伊藤 ありますよ。絶対あります(笑)。

でも、「秘密ある?」って聞くと子どもたちは答えづらいんです。だから私はまず、「あなたの秘密は何色?」って聞くんです。すると、「レインボー」とか「透明」とか「白」とか…..いろんな答えが返ってくる。それで、「秘密は重い?軽い?…飛んでいきそう?」みたいに聞いていくんです。

そうすると子どもたちは少しずつ秘密について話し始めるんですね。

松本   初演の創作の過程では、たくさんの子どもたちに話を聞かれたそうですね。

伊藤  はい。本当に面白かったです。例えば日本の子どもたちは、「夢」を秘密として持っていることが多かったですね。「世界が終わる夢を見た」と話す子もいました。ある幼稚園では、「竜は子どもの時は色があるけど、大人になると黒くなる」と真剣に話してくれた子もいました。大人から見ると辻褄が合わないように見えるかもしれません。でも想像ってそういうものなんです。

飛びながらつながっていく。その豊かさを作品の中に残したかったんです。


左から 岡本優、Aokid、川合ロン、浅川奏瑛
撮影:金子愛帆

観劇後に生まれた親子の会話


松本  実は観劇後、息子との会話がとても印象的でした。うちの子は普段、つまらないと思うとすぐ「つまらない」と言うタイプなんです。

でも今回は最後まで黙って観ていました。ところが終演後、難しい顔をしていて。「どうだった?」と聞いたら、「僕がふざけるとお母さんは怒るのに、どうして今日はふざけている大人を見せたの?」と言われたんです。正直、かなりショックでした。

伊藤  (笑)

それはすごく面白いですね。舞台って自由な場所なんです。大人が子どもみたいになる。そして子どもが大人を見て考える。その立場の逆転も含めて、この作品なんだと思います。

松本  印象的だったのは、やはりダンサーが絵具まみれになるシーンでした。最後に床に絵の具がバサッと落ちる瞬間、「えっ!」「本当にやるの?(ドキドキ)」という空気で客席には大人も子どももどよめいて興奮してしまったんです。その後のダンサーのみなさんの表情もとても印象的でした。

伊藤  あれは出演者ダンサーの「夢」から生まれたシーンなんです。実は私も息子が小さい頃に一緒にボディペインティングをやったことがあります。大人になると「汚してはいけない」と思いますよね。でも本当は、ぐちゃぐちゃにしてみたい気持ちもある。そういう子ども心を、そのまま舞台に置いてみたかったんです。


子ども向け作品は誰のためのものか

松本  今回の作品を観て、自分が子ども向け作品に「分かりやすさ」を求めすぎていたことに気づきました。私はつい、「これはこういう意味だよ」と説明したくなってしまうんです。でも『さかさまの世界』には答えがなかった。そのことがすごく新鮮でした。

伊藤  私は日本の子ども向け作品は、少し説明しすぎることもあると思っています。もちろん分かりやすさも大切です。でも子どもたちの頭の中は、本当はもっと自由で豊かです。フランスではよく、「子どもが親を教育する」と言うんですよ。子どもは本当に鋭い。だから私は、子どもに何かを教える作品ではなく、一緒に考える作品を作りたいと思っています。

松本  観劇中は「わからない」と思う瞬間もありました。でも今振り返ると、その「わからなさ」があったからこそ、息子とたくさん話すことができました。答えがないから会話が続く。それはとても豊かな時間だったと思います。

伊藤  それを聞いて本当に嬉しいです。作品は劇場で終わるものではなくて、そのあとに生まれる会話や想像も含めて作品だと思っています。だから親子でいろんな話をしていただけたなら、それが一番嬉しいですね。


撮影:金子愛帆

最後に…

伊藤さんへのインタビューを通して印象的だったのは、舞台鑑賞中に親子の関係に生まれる「いつもとは少し違う時間」をつくり出してくれるということでした。

親になると、日常の中では子どもに何かを「教える」場面が増えていきます。

「早く起きようね」「宿題は終わった?」「ご飯を食べて、歯を磨いて」

子どもの成長を支えるために必要な声かけである一方で、親はいつの間にか「教える側」、子どもは「教えられる側」として過ごす場面が多くなっているのかもしれません。

けれど、劇場では少しだけその関係が変化します。親も子どもも、一人の観客として同じ作品に向き合い、ともに笑ったり、驚いたり、悲しんだり、ときには戸惑ったりする。だからこそ、観劇後には自然と会話が生まれます。

「あれは何だったんだろう?」「どうしてそう思ったの?」

たとえ同じ作品を観ていても、親子で受け取るものはそれぞれ違います。違いがあるからこそ、お互いの感じ方や考えを言葉にして伝え合う、新しい対話が始まっていくのではないでしょうか。

舞台芸術は、親子が「親」と「子」という役割を少しだけ離れ、一緒にひとつの体験を共有できる場でもあるかもしれません。

親子で舞台芸術を楽しむ魅力とは作品そのものだけでなく、観劇をきっかけに生まれるこうした対話の時間にもあるのではないでしょうか。『さかさまの世界』の時間は私たちにそんな気づきを与えてくれたように思います。


※2026年6月実施インタビュー

公演概要


KAATキッズ・プログラム2026『さかさまの世界』

おさなごころを持つ4歳から150歳向けダンス作品。さかさまになってしまった世界を救う鍵は、子どもたちのイマジネーション。フランスを拠点に活動する振付家・ダンサーの伊藤郁女が、「子どもの想像力は世界をひっくり返し、救うことができるのではないか」というテーマのもと創作した作品。子どもたちとのリサーチやワークショップを重ねながらクリエイションをした2023年の初演を経て、2026年に新たな形で上演された。物語性をあえて限定せず、「子どもの想像力」と「大人の幼心」が出会うことで、親子がそれぞれの視点で作品を受け取り、対話を生み出す舞台となっている。

振付・構成・演出:伊藤郁女
出演:川合ロン、Aokid、岡本優、浅川奏瑛
声の出演:伊藤博史、こどもたち(熊猫幼稚園、横濱中華幼保園)

KAAT神奈川芸術劇場 公演
会場:KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
日程:2026年5月2日(土)~5月5日(火・祝) 

川崎公演
会場:川崎市アートセンター アルテリオ小劇場
日時:2026年5月24日(日)14:00開演(13:30開場) 

次回公演情報

KAATキッズ・プログラム2026『子どものためのうつくしい国』