演劇と子育てと暮らしがまざりあう場所
コラム

演劇と子育てと暮らしがまざりあう場所

目次

アフェリエイト広告

自己紹介とくロひげのこと

ご縁あって、このコラムを書かせていただきます。薬師寺博子と言います。普段は保育士の仕事をしています。出身は神奈川県横浜市。現在は千葉県館山市で夫と3人のこどもたちと暮らしています。

夫婦共に、実家は他県。共働きなので、夫婦でやりくりしていかなければならず、こどもの病気や怪我などで有給休暇をたくさん消費してきました。三女が3歳を過ぎてからは、急な発熱や、保育園から体調不良で呼び出されることもかなり減ったので、少しは余裕もでてきました。(今度は小学校高学年になった長女が学童に入れなくなり、そちらもそちらで悩みではあります。)

館山でのそんな生活のかたわら、くロひげという団体で演劇をしています。

くロひげは、主に横浜で活動をしています。

メインのメンバーは、わたしも入れて5人。全員が高校の同級生で、演劇部で出会った集まりです。

はじめは劇場での公演をメインでやっていましたが、いつしか劇場を飛び出して、民家での公演や、小学校旧校舎や歴史的建造物での滞在制作と発表、フリーペーパーやメールマガジンの発行など、様々な演劇の形を模索してきました。

現在は賃貸の一軒家を拠点にして、演劇活動をしています。

わたしは横浜を離れて15年になります。離れているのにくロひげで演劇を続けているし、こどもが生まれて生活が変わっても、つながりは持ち続けています。

このコラムでは、団体の拠点から離れて暮らしているわたしがどうやって活動に参加しているのか、子育てをしているメンバーが多い中、くロひげがどうやって活動を続けてきているのか、そんなことを書いています。(ちなみに、くロひげのこどもたちは全部で10人。3きょうだいが3組と、もうひとり。なんと、大人よりも多いんです。)

くロひげの活動スタイル

わたしはくロひげでは役者はやっていないので、公演のWeb広報や、終演後のアンケートの集計、メールマガジンの原稿など、現地にいなくてもできることをやっています。

ビデオ通話も昔よりずいぶん快適に使えるようになったので、稽古場につなげておしゃべりをしたり、クリエーションに参加したりして、拠点から離れていても、一緒に演劇を続けることができています。(年に数回はこどもたちを連れて帰省し、オフライン参加もしています。スケジュールやこどもの預け先の都合がつけば、公演のスタッフもしています。現場はやっぱり楽しいですね。)

館山のわが家では、オンライン参加の時は、ほぼこどもたちが一緒にいます。基本的に土日の参加なので預け先もなく、わたしだけ別室にこもるという訳にもいかず、リビングでパソコンを開いています。

そうすると、かまってもらいたいこどもたちが、話しかけてきたり、ビデオ通話に映り込もうとまわりをちょろちょろしたりします。こどもたちだけで遊んでいたり、テレビやゲームで静かな時もあるんですが、それも長くは続かない。

こどもたちの食事やトイレの対応、お昼寝に付き合うなど、生活のこともあり、ちょこちょこ落ち着かない状況での参加のスタイルがはじめは大変でした。今はそんなに手がかからないのと、オンライン参加に慣れてきたこともあり、そこまで大変さは感じていません。

一方、横浜の拠点でも、たくさんの苦労があったようです。

こどもたちが稽古中に容赦なくかかわってきて、「公園に行きたい!」「虫とりをしたい!」とその場の対応では満足できない要求をぶつけてきます。

お腹が空けば食事やおやつを用意して、眠たくなってぐずれば眠れるように環境を整え抱っこをする。夜の稽古にそなえて、お風呂タイムをとることもあります。まあ、とにかくせわしない。稽古が中断することもしばしば。一軒家を拠点にしていなければ、たぶん集まり自体が崩壊していたんじゃないでしょうか。

貸しスペースだと、飲食や、こどもの遊び、時間、たくさん気を遣わなければならないけれど、一軒家ではそれがほとんどない。稽古場に生活をそのまま持ってこられるのが、こども連れのわたしたちにとても合っているんだと思います。

館山では生活の中で稽古をするのがどこか大変で、一方横浜では稽古の中で生活をまわしてどうにかやっていて、オンライン参加、現地共に苦労が多くありました。そのたびにどうしようかと、いろいろ考えてやってきましたので、その一部と成果をご覧ください。

その1

稽古をする時間と、こどもたちと遊ぶ時間を分けて、こどもたちに負担がかからないようにするのはどうだろうか。→時間を決めたことで、メリハリはついたけれど、こどもたちはいつだって遊びたいらしい。いつでも話しかけに来ます。「この時間までは…」と待ってもらったり、一緒に遊びながら演劇のエッセンスを探ってみたり、とにかく全力でこどもたちに向き合う時間をとったりもしました。こどもたちが満足して上手くいった日もあれば、全然ダメで稽古がなかなか成り立たない日もありました。

その2

こどもを預けて大人で集まる時間を作って、短時間でも濃い稽古ができないだろうか。

→平日だと都合をつけて稽古時間をとることができますが、土日祝日はそうもいかない。パートナーが仕事でいない、頼みの実家にお願いできないことも。それでも、本番は迫ってくるので、追い込みの時期はどうにかやりくりをして、大人だけの集中稽古の時間を取るようにしています。こどもといる稽古場とは流れがかわってくるので、これはこれで、おもしろい時間でもあります。

その3

こどもを寝かしつけてから、夜にミーティングをするのはどうだろうか。

→寝かしつけからの寝落ち多発。学生の頃よりわたしたちは夜に弱くなっていました。復活して「おまたせ…」と合流できることもあれば、もはや復活もできず、翌朝謝罪メッセージが入ることも。  逆に全然寝なくて、寝かしつけそのものをあきらめ、ミーティングの後ろでこどもが遊んでいるなんてこともあります。

その4

こどもが過ごせるスペースを整えて、部屋を分けて稽古ができるようにするのはどうか。

→1階でこどもが遊んでいるすきに、大人は2階で稽古開始。これはちょっと良い流れかもしれない?やはり一軒家はわたしたちのスタイルに合っているのでは。…と思っていたのに、何故かこどもたちはじわじわと遊びのスペースを広げ、大人たちに話しかけ、気が付けばみんな稽古スペースに…。

とはいえ近頃は、こどもたちだけで過ごせる時間も増えてきました。きょうだいじゃなくても一緒に遊んで、交じり合って過ごしていて、かれらはかれらで、一軒家で会うことを楽しみにしているようです。

稽古場にこどもと一緒にいるということ

こんな感じで、館山でも横浜でも、くロひげでは創作の場にこどもがいるのが当たり前になり、こどもがいても稽古ができるようにやりくりをしています。こどもがいるという状況もまるっと受け止めて、その中で演劇をすることを探っています。

そしてこの考えは、作品や公演にも影響しています。ここ何年かは0歳のこどもから大人までが同じ空間で演劇を観るための場を考えてつくっています。

こどもが来るからといって、こども向けの作品をつくっているわけではなく、大人の会話の場面も多く出てきますし、こどもだから分からないだろう、こどもだから最後まで観られないんじゃないか、とはじめから決めつけずに、わたしたちが演劇で表現したいことに合った形式・演出で作品は構成されています。もちろん、こどもたちが親しみやすいエッセンスや、五感を刺激する場面や素材も取り入れていますが、大人が演劇鑑賞をするように、こどもはこどもとして、演劇を観て、受け取ってくれたらいいなと思っています。

なんで演劇をつづけているのか

こんなに大変な思いをして、しかも横浜から遠く離れているのに、どうしてかわたしはくロひげで演劇を続けています。もちろんあきらめようと思ったことも、何度もあります。

それでも続けられたのは、なんでかなと考えると、メンバーが一緒にやろう!と声をかけ続けてくれていたり、どうしたら遠方でも参加できるかアイデアを出してくれたり、困りごとを聞いてくれていたことが大きいです。いろんな参加の仕方を試して、上手くいったことをつなぎ合わせて、どうにかやっている、という今です。

館山から横浜に行くには交通費もかかるし、こども3人連れての移動はとっても大変なんですが、活動は面白いし楽しい。仲間から刺激はもらえるし、新しい知識もアップデートできる。演劇もやっぱり楽しい。こどもたちもくロひげの公演を見るのを楽しみにしてくれています。

横浜にいるメンバーも、仕事の都合がつかずにしばらく活動に来られなかったり、子育てでばたばたしていて少しお休みをしていたり、それぞれに事情をかかえつつ、出たり戻ったりを繰り返してくロひげは続いてきました。

おわりに

館山でのわたしのこと、横浜でのくロひげのあれこれ、それをつないだ稽古の話、と書いてきました。

前章でも書きましたが、わたしが続けてこられたのは「みんなで」仕組みをつくって、場を整えてきたからだと思います。

わたしはこれをとてもありがたいことだな、と思っていて、歳をとってもこどもが大きくなっても続けていけたらな、とのんきに考えています。メンバーも「くロひげはこの先60年は続く」って言ってますし、元気に生きて、演劇をしていきたいものです。

トップ画像:photo by takahiro imai


これからの活動

■ベイビーシアターワークショップ「からだハーモニー」

2026年8月28日(金)

①10:00開場/10:30開演 

②14:00開場/14:30開演

ボッシュ ホール(都筑区民文化センター) リハーサル室

https://tsuzuki-wcc.jp/5945/

アフェリエイト広告