親じゃないんだけどさ

私はこの先の人生で多分、自分の子供を育てるということがありません。

それは私がゲイというセクシャリティで、パートナーと妊娠・出産・育児が人生の中で登場しづらいことだからです。

でも、私はそれらを自分と関係のないことだと思うことはできませんでした。

例え異なる立場だったとしても、このことに関してできることを考えたい。共にあろうとすることを諦めたくないと思い、子育てをしている大切な友人・俳優である大島萌さんと共に劇を作ることにしました。

出産を経て、演劇から少し距離が離れた彼女のことが気がかりでした。

私の劇を見て「私もまだ演劇を好きでいて良いのだと思った」と言ってくれた彼女の心に応えることができたら、それはとても幸せなことだと思い演劇公演を企画しました。

そんな理由で『みどりの栞、挟んでおく』という劇を作ることになって、創作する中で萌さんの子供たちは劇中に登場する「晴人」という3の男の子の声を演じてくれることになりました。

ある時の稽古で双子のどちらかが「役ってなに?」と訊いてくれました。

宝宝のチームメンバーであるさくらさんが稽古中の私たちを指して「かかが翠さんで、長井さんが宝良さんなんだよ〜」と教えていて、

そうか、劇というのが何なのかこの子達は今から知るのかと私は改めてびっくりしました。

双子たちははてな?という感じでしたが、萌さんが毎日お家で稽古してくれたおかげで「晴人」をとっても上手に演じてくれました。声の細かなニュアンスまで完璧に演じていました。しかもほとんど一発撮りで!最初、全部のセリフを喋ってくれるだろうかと心配していたのに。

録音している光景は奇跡を目の当たりにしているようで、泣いてしまいました。

それと同時に私はなんて大変なことをお願いしているのだろうと途方に暮れてしまいました。

劇を好きだという気持ちに応えたい、なんていうのは偉そうだったんじゃないか。

本当にこの公演をやるのが、萌さんにとって・大島家の双子たちにとって幸いなのだろうか。疲弊させていないだろうか、企画当初に話し合った理想的な形で進行できているだろうか……そんなことを考えてたまらなくなってしまいました。

劇中の台詞のように、萌さんはいつも「ありがとう」と言ってくれるけれど、自分の何がありがたいのか、途中で私にはわからなくなりました。

そして泣きながら駅のホームで萌さんに電話して、正直に自分の気持ちを話しました。

翌日私が好きなちいかわのシールを萌さんが買ってきてくれて、気を確かにしなければと思い直しました。うんこを気張っているちいかわのシールでした。

子どもたちは稽古場でも劇場でも、本当に良く私たちと遊んでくれて、いつも元気で楽しそうにしていてくれました。

共にあろうとしてくれているのは子どもたちであったと思うし、大島家であり、座組の皆さんだったように私は思っています。

私は『みどりの栞、挟んでおく』をやって本当に良かったと今思えています。

全公演を無事に終演することができたというのはとても幸運なことで、その幸運を引き寄せたのも私たちです。

たくさんのお客さんに恵まれて、連日温かい拍手に包まれて毎日奇跡の中にいるのだと感じていました。

共にあろうと声をあげてみたこと、そしてそれ以上の大声で大島家の皆と座組の皆が「やろう!!」と応えてくれたこと。そのことをもっと褒めてあげたい。頑張った私たちを、もっと褒めてあげたいです。

私に至らなかったところはたくさんあるけれど、それも認めてこの公演を大成功例として掲げたいと思っています。

今後も育児に関する取り組みを積極的に行っていきますし、それに後続してくれる方が現れることを心から願っています。

撮影:小池舞

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俳優Kさんの一問一答インタビュー

対象者の紹介

俳優Kさん(女性)、子ども一人

ご自身が仕事で育児ができないとき、育児を誰に頼っていますか

配偶者・パートナー

配偶者・パートナーの仕事を教えてください

芸能事務所マネージャー

家族内におけるご自身が担っている『育児』の割合はどの程度ですか?

6割

家族内におけるご自身が担っている『家事』の割合はどの程度ですか?

4割

仕事の理由から、子どもを持つことに迷いや不安はありましたか?迷いや不安があったとお答えの方はその内容を教えてください

持つ前は具体的に想像できていなかったです。考えが甘かった!

子どもを持つことで舞台芸術活動との関わり方、仕事量に変化はありましたか?変化がありましたらその内容を教えてください

俳優なので、妊娠発覚で10本ほどの仕事をお断りすることとなってしまいました。
すべてが舞台中心の生活だったのですが、すべてがなくなり、家業の仕事を増やしフルタイムで働く生活になりました。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、困難を感じた経験はありますか?もしありましたら具体的に教えてください

どうしても主人の負担が増えてしまいます。
主人のワンオペの時間が増えてしまうので、心身ともに疲れさせているなと感じます。

子育てと舞台芸術活動の両立が困難だと感じた時、どんな情報がほしかったですか?

24時間保育園、とにかく18時半以降見ていてくれる人の存在など。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、どんな環境が理想的だと思われますか

安心して子供を預けられ、それに余計な申しわけなさを持たずに済む環境。

舞台芸術活動をしている方で、これから子どもを持ちたいと考えている方に対して、何かメッセージはありますか

若いときに大先輩に、紙おむつとミルクは国がくれるから大丈夫!なんとかなるよ!産みなさい!と言われました。笑
俳優の場合は労働環境だけでなく、身体の形の変化なども大きいですし、妊娠中は物理的に仕事が出来なくなります。
仕事を断ることはつらいですし、何よりご迷惑をかけてしまう申し訳なさが大きいでしょう。
あのときのご迷惑を私は未だにご恩返しできていないです。
でも、周りに同じような人があらわれたときに、大丈夫ですよ、何も心配ないよと、私がしてもらったときのように声をかけてあげられるようにするしかないのかなと。
また、実際子供を持つと、キャスティングする側も安心して母親役をオファーする説得力にもなります。がんばりましょう!

協力ありがとうございました!

音響家パパの観察日記

初めまして、こんな家族です

 初めまして。私は育休明けに退職した元会社員、現在主婦のママです。我が家には一歳半の双子男子たち、お姉ちゃん気取りの犬、そして舞台音響家のパパがいます。
学生時代から演劇を続けているパパは、舞台の仕事ひとすじでここまでやってきましたが、今は育児とお仕事の両立にてんてこ舞い。そんなパパの様子を、ママから見てお伝えしていきたいと思います。

育休なんてない!

 育児参加したいけど、育児参加できない、というのがパパの最初の悩みだったと思います。
最近、同世代の友人たちの話を聞くと、父親も育児休業をとっている人が多くいます。
しかし、パパは舞台音響の会社を経営している身の上。
会社員ではないので、当たり前ながら「休むと無給になる」わけです。むしろ「家族のために稼いでいかなくちゃ!」と、産休中、予定日よりかなり前はしっかり仕事を入れていました。
ただ、せっかちな双子は二か月ほど早く出てきてしまったために、パパは年越しのイベントの合間、真夜中に里帰り先の病院から突然電話されることに。
「生まれます!」と看護師さんに言われても、翌日も現場のため駆けつけることができず、ずいぶん心配したようです。

 特に里帰り中、赤ちゃんたちの様子が気にかかるやら、そうそう簡単に会いに行けないやらで、ちょっとピリピリしてしまったパパ。
すぐ保育器に入ったため、長男の写真がバストアップしかなかったので、
「もしかして足がないのではないか」と、会いに来られるまでパパは心配していたみたい。

 育児についてのことを、ママとママの実家で勝手に決められてしまう、と感じていたパパ。
「子どものモノを相談なしで勝手に買わないでほしい!」
と、ママと喧嘩になることもありました。

 里帰り中も何度かヘルプに入ってくれたのですが、里帰りから戻ってきてからは、さらにがっつりお仕事を減らして子どもたちやママと向き合ってくれました。
その間収入がない、また、お仕事をお断りすることで次の仕事がなくなるかもしれない、とパパは大いに気をもんでいました。
一家四人と一匹の生活を独りで背負っているパパの、悩みは深かったみたい。
ママも産前産後、体調不良などが多かったのであまり寄り添えず……気持ちの面でも、パパの支えになるものがもっと必要だったなと感じています。

朝っぱらのシンデレラ

 里帰りから戻って一か月後の生後六か月から、双子は保育園に通っています。保育園に入ってから、家で見る時間が減ってずいぶん楽になりました。
 保育園に入ってからおうちで苦労したこととしては、なんといっても離乳食!
初期、どろどろのお粥や野菜のころは、もぐもぐとひたすら一生懸命に食べていた双子ですが、つかみ食べするようになった中期ごろから、遊び食べが始まりました。
だんだん遊ぶようになっていったのでママはあまり驚かなかったのですが、忙しい現場が終わって一週間ぶりくらいにご飯を食べる双子を見たパパは驚愕。

「こんなにご飯を投げるのは何か発達がおかしいんじゃないか?」
心配して小児科でも聞いてみたものの、「そういう子もいる」と言われました。
そんなタイミングでママが抱っこのし過ぎで腰を痛めてしまい、一か月近くパパが毎朝、大量のご飯まみれの床を雑巾がけすることになりました。

「いつまで続くんだ……これじゃやっていけない……」
パパは毎朝うめいていました。
床を拭く自分を「シンデレラみたい」と言っていたので、ママは思わず笑ってしまいました。

敷物を敷くとか、大きめのエプロンをさせるとか、そんな対策もむなしく、毎日床はごはんまみれ。
特に米が嫌いな双子は、残ったご飯をぽいぽい投げるので、床はベッタベタ。
結局パパの提案で、クイックルワイパーを買い、ペーパータオルで落ちたものはマメに拾うことにして、何とかやっていっています。
一歳半の現在も、それなりに投げてはいるのですが、少し落ち着いては来たかな……?
大変ですが、試行錯誤をパパとママで一緒にできたことで、「一緒に育児に当たっている」という感覚は得られたなあと思っています。

忘れられたくない!

 一歳を過ぎてからのここ数か月、やっとパパが営業のための飲み会や深夜の打ち合わせに出てきても困らなくなりました。
0歳の後半では一晩に夜泣きが二人合わせて七、八回あったものの、現在では二、三回で済みます。
ずっと抱っこしていなくても寝るようにもなりました。喋るようになって、本人たちの意思がわかるようになったことも大きいですね。
保育園から帰ってきてパパがいないと、時々「ぱぱ~?」と別の部屋に探しに行くようになりました。
最近は、現場が終わって帰ってくると寝ていて会えないのをパパはさみしがっています。

お休みしていたこともあり、「今後の仕事の取り方も考えていかなくちゃ」とパパとは話しています。

私たちはなぜ選択を強いられねばならないのか

生きていく上でここが岐路だと思うことは意外と多くあります。

俳優業を始めて、今年で24年が経ちました。

今までがむしゃらに、自分の全人生をかけて俳優業に取り組んできましたが、そんな中で素敵な人と出会い、家族になり、39歳にして初めて子供が欲しいと思いました。仕事以外のことで何かを望むのはいつ振りなのか分からない程に仕事人間だった私の「妊娠を望む」という気持ちの変容は、自分でも意外なものでした。

そして現在絶賛妊活中です。

結婚して妊活を始めるにあたって、仕事関係の人からこんなことを言われました。

「女の人は子供を産むと変わるし、産休で仕事を休んでる間に芝居が下手になった人もいるから」

私はそれを聞いて腑が煮えくり返り、数ヶ月経った今も現在進行形で怒っています。

「そんなわけあるかい。何言ってんじゃボケ。お前は芝居が何たるかを全く分かってない」

次言われたらこう返してやろうと、たまに思い出しては一番怖い言い方を練習しています。

そして、なぜそんなことを言われなければならないのか、私はそれの何が嫌だったのかをずっと考えています。

子供を産む決断とセットで、他にも色々と理不尽だと思うことに直面しました。その度に、この決断は間違いではないのだからと思う反面、不安になるのも事実です。

妊活中のため一年先の仕事の予定は諦めねばいけない。2ヶ月先、3ヶ月先の状況も分からない。そんな中で未だ子宝に恵まれず、最近は生理がくると悲しい気持ちに襲われて、わんわんと泣く日もあります。

「こんなに頑張っているのに、こんなに色んなことを犠牲にしているのに、なんで?」

という気持ちが溢れ出てくるのです。

次第にその考えは、「女だから大変なんだ」「女である私の方が苦しい」という思いに変わっていき、私の未熟さから、愛する夫にその矛先を向けてしまうこともあります。好きな人と家族になれたから、子供が欲しいと思えたのに、まったくもって本末転倒です。

女である私には男の気持ちは分かりません。私が思うように男性も、子供を作る決断をした時に何か犠牲を払っていると感じることがあるのかもしれません。私はそのことを夫に聞いてみたことがあります。

「私は女であることにこんなに不都合を感じているのだけど、男であるあなたはどう?」

夫は大変優しい人ですが、話をしているうちに、どっちが大変か自慢になってきてしまい、私は失敗したなと思いました。

それぞれの立場で、それぞれの不都合を共有し合うことは大切なことですが、もっと大事なことは、分かって欲しいと不満をぶつけ合うのではなく、お互いにサポートできることを探していくことです。他者である2人が家族になる意味はそこにあり、立場の違うもの同士だからこそ、助け合うことができるし、その方が長く続くと思うのです。

私は私のできることをやろう。

そして、あなたが困ったときは助けよう。

私の困ったときは助けてもらおう。

そんな当たり前のことを忘れないようにしなければと、日々自分に言い聞かせています。

親になる前からこんなふうに人としての成長を強いられるのだから、妊活はなかなか良いものです。いや、こうやって良いものだと思えるところを無理矢理にでも見つけないとやってられないものです。それこそが人間修行だ。そして次から妊活中の人の役は出来る!と思えるのは、俳優という仕事の好きなところです。

でももうちょっと早く、出来てるか出来てないか分かればいいのに。できれば受精当日の夜か次の日くらいには分かりませんかね、神様。

話を戻します。俳優を長く続けていると、俳優仲間の色々な岐路を目の当たりにすることがあります。

子供ができてその幸せに満たされて俳優を辞めた人もいる。本当は復帰したいけど子供や妊活のために復帰を諦めている人もいる。そしてそれに憤りを感じている。同じく俳優であるパートナーを支えるために俳優を辞めた人もいる。また、家族を養っていかねばならないので俳優を辞めた人もいる。

俳優を辞めたり、休んだり、妊活を諦め、俳優を続けたりしている人たちは、男女問わず、それぞれにたくさんの岐路に立ち、毎回多くの選択をしてきた、もしくはせざるを得なかったのだと思います。

私はそんな人たちを見てきて、素晴らしいなと思うこともあれば、勿体無いと勝手に思うこともあります。そしてその度に、その選択以外を選ぶ機会がある世の中になればいいのにと強く思うのです。

現在妊活中の私も前述した通り、選択を強いられています。自分の決断に責任を持てるのは自分だけなので、非常に疲弊します。そんな中で、俳優業を諦めずに済む方法も模索中です。

その一つとして、『ファミリーサポート』という行政の取り組みがあることを知りました。ファミリーサポート、通称ファミサポは、自治体で運営している有償のボランティアで、自治体によってシステムはそれぞれ違いますが、大まかに言うと、子育てに奮闘している方をサポートしたい人が、自治体で行っている無料の研修を何日か受けて、協力会員として登録し、同じ自治体内に住む親御さんの子育てのお手伝いをするというものです。ファミサポは有償ですが最低賃金よりも安い金額を利用者の方から頂くのみで、あくまでもボランティアなので、スケジュールなどは当日であってもキャンセルすることができます。利用する方からしたら不便に感じることもあるかもしれませんが、全く足りていない協力会員の数を増やすためには致し方ないところだと思います。私はこういったサービスを提供する側として、今は、将来自分が子供を持った時に、周りにどのように支援してもらい、子育てと仕事をどのように両立していくかをシミュレーションしている最中です。

ファミサポの研修の中で児童相談所の職員の方のお話を聞く機会がありました。その方は「子供を虐待してしまう人は責任感が強い方が多く、自分でなんとかしなくてはならない。人に頼ってはいけないと思っていて、自分が限界なのにも関わらず、支援を受けることを拒否し、虐待という結果を産んでしまうことがある」と仰っていました。なんて悲しいことでしょうか。社会の中で生きていく以上、誰もが誰かの力を借りています。それは恥ずかしいことでもなんでもなく、自分もまた誰かの役に立てば良くて、そうやって社会が形成されているのです。

私は自分の将来のためにファミサポのボランティアを始め、子育てに関する情報収集をしてきましたが、今後はそれらの情報を、必要だと思われる仲間にシェアしていきたいと思っています。そして、まずは自分のいる業界からシステムを変えていきたいです。誰しもが、子供を持つという素晴らしい選択の中に、不必要な不安を持たずに済むように。何かを諦めなくても子育てができるように。それは不可能なことではないはずです。

今、子育てをしているあなたが、もしも社会から取り残されたような寂しい思いをしたり、辛さを感じたり、自分が不甲斐ない、周りに申し訳ないなどと思っているとしたら、あなたは一切悪くありません。共働きの核家族という現代の家族観に追いついていない社会のシステムが悪いのです。

みんなの意識が変わり、アイディアを出し合えば、必ず社会は変わります。私は変えていきたい。例え自分は子供を持てなかったとしても。

『プラットフォームデザイン lab 』さんは、「舞台芸術と子育てを両方する上で、本当に必要な支援は何か」というテーマで活動なさっている団体でまさに私が求めていたものです。今後も活動をチェックしつつ、この輪が広がっていくことを心から願っています。

みんなが自分の人生において納得のいく選択ができますように。

まずは自分の人生から試してみたいと思います。

わがやのスケジュールお見せします!②

対象者の紹介

今回教えてくれたのは…俳優Aさん(配偶者:会社員、お子さん:長男6歳、長女2歳)

まだまだ上手くいかないことも多いし、子どもの成長と共に新たな課題も出てくるから大変です。こちらも日々成長です!

【終了しました】うたうははごころ 劇場版☆歌え!踊れ!育て!ははごころの庭~子供服は輪廻です~

ママさんコーラス演劇「うたうははごころ」です。 

こんにちは!ママさんコーラス演劇「うたうははごころ」です!(ポーズ)(いつもこんな風に始まります) 

うたうははごころは、母になった女優たちが子どもたちを引き連れて、楽しい大騒ぎをしているグループです。2017年代表の菊川朝子の呼びかけで始まり、いろんな場所で子どもと共に、ライブやイベントを行ってきました。私はうたうははごころで俳優の他、企画や制作などマネジメント面も担当しています、稲毛礼子と申します。 

  

うたうははごころとは?と聞かれたとき、いつも以下のような紹介文を書いています。 

『うたうははごころは、女優たちが出産し母となり、子育てや社会の壁に直面。「これを演劇に」と集まってできた演劇サークルです。育児中の愛や悲しみや願望や疲労をコーラスにした、オリジナルソング「愛の育児讃歌」を、女性たちの自意識がぶつかり合う「ママさんコーラスの発表会」としてお送りするママさんコーラス演劇。 稽古も本番も子どもたちと一緒。 子どもが泣く叫ぶ走る登るその全てがパフォーマンス!』 

  

私たち母になった俳優がぶつかる壁。そりゃあいろいろあるのですが、演劇の面でいえば、「創作活動の場を失うこと」であったと思います。 

出産前の、かつて自分の通った現場の人たちが「いつでも戻っておいで」と言ってくれてるのは知っている。私もそのつもりだった。娘が東日本大震災の年に生まれ、私が舞台に復帰したのは娘2歳の時のことでしたが、まあ無理だった。心が折れた、というより砕かれました。何度も「万事休す!」事態に陥り、今思い出しても口の中に血の味がよみがえるくらい、いつもジャリジャリした何かを噛んでいました。こんな状態では現場になんか戻れない。「子どもを連れてきたら?」と声をかけていただくこともあるけれど、無理無理無理無理!(実際はやむを得ず子どもをつれて現場に行くことありました。各現場のみなさんありがとうございました!) 

どんな過酷な現場だって、「根性みせろよ」と言われて乗り切ってきた世代の俳優なので、根性だせば「ママ女優」くらいなれるんだろうと思っていた。なれなかった。仕事も子育てもバリっとこなしちゃうあれはどこかの”スーパーウーマン”の所業で、私は”スーパーウーマン”じゃなかった。 

  

俳優としての参加だけでなく、ただ演劇をみること自体も難しくなってくる。子どもと一緒に見られるもの、子どもが飽きずに過ごせる、怖くない場所。車を2時間運転して演劇を観に行って、娘の「怖い」が出て会場に入れず、公園で滑り台を滑って帰ったこともあります。ああこれも無理か。 

いつしか「子ども向け」の演劇・アート・テレビ番組を自分の鑑賞体験にするようになる。 

児童館で子どもとおもちゃにまみれながら、職員さんががんばって演じてくださるペープサート(有名無名のキャラクター入り乱れる紙人形劇)を鑑賞して、「あれ、自分は何してるのかな」って思う。(職員さんいつもありがとうございます。) 

  

自分は演劇から遠く離れたところに来てしまった。 

  

もちろん、各劇場さん鑑賞団体さんが、託児サービスや、キッズシネマ、リラックスパフォーマンスなど、鑑賞者に向けて、ハードルを下げるインクルーシブな取り組みを行っているのは知っています。(全部使ってます!ありがとうございます!) 

でも私たちが叶えたいのは、創作現場がインクルーシブであること。子どもを連れて来られる稽古場。子どもがしゃべっても走ってもいい安心できる本番。そして私たちが面白い舞台。あのペープサートはもっと面白くできる。 

  

出産前の私は、ライフタイムの全てを演劇に捧げて生きていました。 

捧げるべきライフタイムを失ったとき、演劇も失なわれるのか。 

そんなわけなくない? 

演劇は「捧げるもの」ではなくて、「ライフ」そのものになった。 

  

子どものいる稽古場っていうのは、本当にすごい喧噪の中で行われるのですが、その喧噪ごとライフごと舞台に持ち込みたい。私たちのライフとお客さまのライフも持ち込んでもらって、その全部を「演劇」としてみせたい。 

うたうははごころとしての発表の場を求めて「子育て支援」だったり「地域活性」だったり、いろいろに言い換えてやってきたけれど、「演劇」として見てもらうには、やっぱり劇場で!やりたい!やらせてほしい! 

  

そんなことを願っていたら、本当に劇場でやらせてもらえることになりました。 

東京芸術劇場で行われる舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」にて、うたうははごころ公演「劇場版☆歌え!踊れ!育て!ははごころの庭~子供服は輪廻です~」を上演します。 

芸術祭さんと知恵を絞り、出演者も鑑賞者も、当事者だって第三者だってない交ぜにしちゃうカオスな場を制作中。こんなこと劇場でできるの?をたくさん詰め込んでいます。 

ぜひ多くの方に足を運んでいただいて、どうかこのカオスに加担してほしい。 

  

今は子どもが中2になり、手が離れ、、、ない!全然離れない!!聞いてた話と違う!!未だ子どもの世話を焼きバトルをしながら創作する日々です。早々に「手が離れて」なんて日はやってこないし、その間創作をどこかの”スーパーウーマン”にお任せしている場合ではない。そもそも”スーパーウーマン”とは幻想なんじゃないかと今は思っていて、みんな黙って歯をくいしばって、その時が過ぎるのを待っているだけなのだろう思う。 

黙ってられないし、黙ってない方が、誰かのためにもなるんじゃないかな? 

黙ってないで朗らかに、そちこちにいる仲間と手を携えて、歌い続けていけたらなあと思っています。 

舞台美術家Tさんの一問一答インタビュー

対象者の紹介

舞台美術家Tさん(女性)、子供一人

ご自身が仕事で育児ができないとき、育児を誰に頼っていますか

配偶者・パートナー、シッター、 子供の同級生のご家族。宿泊を相談したり休日お互いに過ごしていただいてます。

配偶者・パートナーの仕事を教えてください

舞台監督・大学非常勤講師

家族内におけるご自身が担っている『育児』の割合はどの程度ですか?

基本二人で分担にはなっておらずどちらかに9割の負担がかかる状況でそれが、入れ替わりをするような状況です。私が0に近い状況もあります。

家族内におけるご自身が担っている『家事』の割合はどの程度ですか?

割合では出せませんが、食事の準備の割合は私の方が多いです。あとは6,と同じ状況です。

仕事の理由から、子どもを持つことに迷いや不安はありましたか?迷いや不安があったとお答えの方はその内容を教えてください

持つことに不安はありませんでしたが、持ってからの社会的な目線の方が私は気になりました。

妊娠がわかると、とある大きめのプロダクションから仕事を取り下げられることがありました。
20代の妊娠・出産だったこともあり、その点で非常に萎縮してしまいました。

子どもを持つことで舞台芸術活動との関わり方、仕事量に変化はありましたか?変化がありましたらその内容を教えてください

仕事量は少なくなりました。ただ、その分どの仕事を限られた「時間」の中で「選び」関わっていくかを判断することができるようになりました。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、困難を感じた経験はありますか?もしありましたら具体的に教えてください

身内やパートナーにお願いすることが難しい場合、子供をシッターさん等に預け入れる前後の時間や準備が通常より3倍くらい大変。劇場入りの際の食事の準備(休日・夏休みの場合3食、これを稽古期間や劇場入りの間毎日続ける)にかなりの体力とエネルギーを要する。私の睡眠時間も減る。食事のケアは手を抜くことも可能だが、子供の健康を考える上でそうもいかない。それが原因で体調を崩す可能性もある。あとはシッターさんは学習サポートは基本的にしてくれません。小学校に上がると宿題や学習サポートというものが入ってくるので、そのケアの時間を余裕を持って計画するのが難しい。塾や宅配弁当を取るという考え方もありますが、それは家庭内の経済的な余裕がある場合に実現できますが今の私の場合そうではありません。アウトソーシングできるかそうでないかで環境が変わるようことも多い気がします。

子育てと舞台芸術活動の両立が困難だと感じた時、どんな情報がほしかったですか?

家庭のサポートや家族のサポートが難しい場合の、アウトソーシングできる場や金銭的なサポート情報や窓口。食事のケアについての情報。メンタル、フィジカル共に自身のセルフケアの方法。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、どんな環境が理想的だと思われますか

依頼の際に参加条件(時間、クリエーションの進行、報酬)を協議できる環境。その上で行う適切な時間帯のプロダクションミーティング。稽古場の時間軸以外の創作の準備期間に余裕を持たせる仕組みとプロセスを、カンパニーや座組で模索できるようにする。

舞台芸術活動をしている方で、これから子どもを持ちたいと考えている方に対して、何かメッセージはありますか

この質問が一番難しく、昨年までだったらメッセージを送れるような言葉を発信できなかったと思います。ただ今子供向けの演目、育児や介護、ケアをモチーフにする創作現場や演劇演目に関わる機会をいただくことが増えました。

そうしたことに視点を落とすことで、自身を中心とした創作や仕事の満足度からそれを他者やどんな観客に届けたい、提供できるのかという創作に対するモチベーションがあがりました。子供を持つことで感じたのは、家庭や生活という視点から自分にとっての社会性や、他者と関わることの能動性にもダイレクトに繋がる可能性をより実感できるようになっているとも思います。

協力ありがとうございました!

わがやのスケジュールお見せします!③

対象者の紹介

今回教えてくれたのは…照明家Bさん(配偶者:会社員、お子さん:長女7歳)

こうやって時間で書き起こしてみると、娘の帰宅時間までに帰る日は稽古場にいる時間が少ないなあと感じるし、現場に出ている日は家事に使える時間が少ないなあと改めて思います。24時間のうち、自分のパフォーマンスが落ちるので寝る時間は削れない!(寝ちゃうし!)ので・・・いろいろな事を効率的に行い今を乗り切っていくしかないんでしょうね。