【終了しました】円盤に乗る派 新作公演「いまのところまだ存在しているわたしのたましいが……」

 

演劇プロジェクト〈円盤に乗る派〉は3月、吉祥寺シアターにて、

3年ぶりの新作公演を上演いたします。

開催概要

円盤に乗る派 2026年新作公演

『「いまのところまだ存在しているわたしのたましいが……」』

会期 2026年3月12日(木)~15日(日)

会場 吉祥寺シアター

絶望、分断、戦争の時代を前に、われわれの「たましい」と「業(ごう)」をめぐる物語が再生される……虚ろに

円盤に乗る派の新作『「いまのところまだ存在しているわたしのたましいが……」』では、リヒャルト・ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』を「たましい」と「業(ごう)」をめぐる近未来の物語として変奏する。世界観の背景にあるのは資本主義と排外主義、そしてその結実としての戦争だ。絶望の時代の空気を通奏低音のように響かせながら、その中でも誰かのたましいと繋がることの可能性を問いかける。

『トリスタンとイゾルデ』はケルト民話をルーツとしているが、現代の目にはその物語はいびつで、奇妙なものに映る。ワーグナーが芸術の根拠と見ていた「民衆」の存在などはもはや信じることもできない。しかしその奇異な物語は、独特なありかたで我々に印象を残す。それはあたかも現代のメディア環境に散逸した、目的も文脈も不明なデータの残骸(誰かの撮ったどこかの写真、目的もわからなくなった音源や画像、失敗によって生まれてしまった数秒の映像……)が持つ不気味な懐かしさに似ている。ここには正しさも善悪もなく、何かしらの感情を動員しようという意図も、承認を得たいという欲求も欠いている。物語は虚ろに語られてこそ現代において再生されるだろう。この時代では何が語られようとも、そこには絶望の影がある。決して埋まらない分断があり、不条理としか言えない戦争がある。他者に声は届かない。虚ろな物語はしかしこの環境の中で確かに再生され、孤高の存在論を示すだろう。

▶︎ 円盤に乗る派WEBサイト 公演ページ:https://noruha.net/tamashii/

戯曲・演出:カゲヤマ気象台*

出演:畠山峻*(PEOPLE太)、日和下駄*、深澤しほ、横田僚平、渡邊まな実

音楽:灰街令

映像・アートワーク:ミヤオウ

舞台美術:佐々木文美

照明:吉田一弥(DEZAR inc.)

音響:櫻内憧海(お布団)

衣装:永瀬泰生(隣屋)

舞台監督:中西隆雄

フライヤーデザイン:村尾雄太

記録写真:濱田晋

ウォッチャー:渋木すず*

演出助手:山本ジャスティン伊等(Dr. Holiday Laboratory)

制作:加藤七穂、円盤に乗る派

広報:中條玲

*=円盤に乗る派プロジェクトチーム

日時

3月12日(木)19:00

3月13日(金)14:00/♨︎

3月14日(土)14:00★/19:00

3月15日(日)14:00

受付開始:開演の45分前 開場:開演の30分前

★託児サービスあり(要事前申込)

♨︎乗る派クラブ開催

料金

全席自由(整理番号付き)・税込

一般:4,000円

U29:3,500円

18歳以下:無料(枚数限定・要事前申込)

アルテ友の会会員:3,500円

当日券:+500円(一般・U29のみ取り扱い)

※未就学児入場不可。

※U29・18歳以下チケットは、円盤に乗る派でのみ取り扱い。入場時に年齢を確認できるものをご提示ください。

※アルテ友の会会員チケットは、武蔵野文化生涯学習事業団でのみ取り扱い。(前売のみ)

※車いす利用の方、補助犬同伴の方はチケット購入前に円盤に乗る派までお問い合わせください。

チケット取り扱い

Tel:0422-54-2011 (9:00~22:00)

Web:https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/sameShowList?en=459

託児サービス

3月14日(土)14:00の回は、託児サービスを実施いたします。

ご利用の方は以下フォームより詳細をご確認の上、事前にお申込みください。

お申込み:https://forms.gle/8eZ7Abvfki44emri6

申込締切:3月7日(土)23:59まで

理不尽を知っている母であること

私の仕事は俳優である。

普段は舞台の仕事の他に、ドラマやアニメの吹き替え、たまに映像の仕事もしている。

夫は会社勤め。

娘は今年5歳になり、保育園に通っている。

私の仕事は内容によって勤務時間が変化するので、

夜まで仕事が入っている日などは夫が早退きや在宅対応をしてくれて、

なんとかかんとか…やっていけている。

出産後は保育園の時間の関係であまり夜まで働けず、吹き替えの仕事がメインになっている。

でも、稽古時間を調整していただいたり、多くの方のご理解と協力もあり、

細々と舞台も続けられている状況だ。

母になってもうすぐ5年…

最近思うことを書いてみる。

うちの子は、思っていたよりずっと聞き分けがいい。

確かにイヤイヤ期はあったけれど、癇癪を起こすタイプではなかった。

朝の支度も、促せば動く。

私が忙しい日などは、静かに一人で遊んでいてくれる。

正直めちゃくちゃ助かっている。

でも、ときどき思う。

…あれ?空気読んでる?

母としての私は、あまり自慢できるモノではない。

妊娠中思い描いていた子育ては、全然実現できていない。

購入したモンテッソーリの本は、一度も開いていない。

育児とキャリアの両立は、予想以上に険しい道のりだった。

自分は満足かもしれないけど、子どもに無理をさせているのではないか?

私が、空気を読ませているのではないか…

うん、、、そうかもしれない。

怒らないように気をつけてはいるけれど、余裕がない日の私は、きっとわかりやすい。

「あ、今日は静かにしておこう」と判断するには十分だ。

私は結構…激情型だ。

喜ぶときも全力、怒るときも全力。

舞台ではそれが歓迎されることもある。

怒りや嫉妬や惨めさは、大きければ大きいほど武器になることがある。

でも家庭では逆。

増幅させてはいけない。

一度強く出た言葉は、取り消せない。

母親にリテイクはない。

だからこそ怖い。

我が子が黙ったまま上目遣いで私を見るとき、彼女の心の中はどうなっているんだろうとゾッとする。

私は理不尽を知っている。

この仕事を続けてきてビシビシと肌で感じていること、それは

・努力したからといって報われるとは限らない

・優等生は嫌われる

・やったもん勝ち

・全ては結果

・結局、運と人柄

まあでも、この業界に限らず、社会というものは全体こんな感じじゃないだろうか。

我が子がこれから出ていく世界も、きっと理不尽だろう。

空気を読めることは武器になる。

特に日本では。

でも、自分が疲れてしまう可能性も大いにある。

嫌なときにはっきり「NO」と言えること。

悔しい時にちゃんと悔しがれること。

怒っていい場面でちゃんと怒れること。

それらは生きてく上で絶対大切なことだと思う。

別に私は「社会は厳しいんだぞ」と脅したいわけじゃない。

…そもそも最初の理不尽が母親であってはならない。

ただ、我が子が理不尽を経験した時に

「それ、マジで理不尽だよね〜」と寄り添える母でありたい。

私の激情はなかなか消せない。

でも、そのベクトルだけは間違えないようにしたい。

ママはいま怒ってる。

でもあなたのことを嫌ってるわけじゃない。

それをちゃんと言葉で伝えることが、

理不尽を知っている母としての、

せめてもの誠実さだと思う…

これから理不尽な世界に出ていく我が子と、一緒に怒ったり泣いたりできる人間でありたい。

俳優×夫婦の育児の幕間

ポッドキャストを夫婦ではじめたきっかけ

中村 プラットフォームデザインlabの中村です。
私がお二人のポッドキャストを聴いていて、是非お話を聞きたいと思ってお声がけさせていただきました。改めまして、お二人の自己紹介をお願いします。

 榊菜津美です。「アマヤドリ」という劇団(現在は活動休止中)に所属しています。劇団などでの舞台出演以外にも広告を中心とした映像での活動もしています。よろしくお願いします。

秋本 秋本雄基です。 僕も「アナログスイッチ」という劇団に所属してます。妻と同じように、舞台と広告を中心に活動しています。ときどき家族みんなで広告に出たりもしています。

中村 ありがとうございます。早速なのです今回ポッドキャスト「育児の幕間」をやろうと思ったきっかけを伺えますか?

 これは、言い出したのが実は雄基さんで。

秋本 そうなんです。最初は俳優活動の一環としてポッドキャストを始めようとしていたんです。始めるにあたって何について話そうかなと考えていたときに、二人とも劇団に所属している俳優夫婦が交互に舞台に出演しながら子供を育てている今の状況を話したら面白いんじゃないかなと思ったのが最初のきっかけです。菜津美さんに相談したら「いいじゃん」と言ってくれて。そこからすぐ、本当にすぐだよね。

 そうだね、わりと二つ返事だったね。でもポッドキャストをやりたいとか、二人で何かしたいみたいなことを具体的に考えていたわけじゃないんです。ただ実は私も育児や家族について話したいことがいっぱいあるんだけど、それをなかなか話す機会がないなと感じていて。そういう話って、聞かれてもないのに喋ることじゃないし、自慢っぽくなるのは嫌じゃないですか。デリケートなことだから。本音で話す場所ってあんまりないなと思っていたので、ポッドキャストの相談を受けたときに、夫である雄基さんとだったら本音で話せるからすごくいいなと。すぐに「やろう!」という感じでした。

「育児の幕間~俳優夫婦の子育て~」

特集座談会① 後編

座談会登壇者プロフィール

半田桃子さん
プロデューサー/舞台制作。慶應義塾大学在学中に演劇サークル「創像工房 in front of.」にて松居大悟、目次立樹と出会い劇団「ゴジゲン」を旗揚げ。クリエイターとより風通しのよい環境での創作、さらに多岐にわたるジャンルの作品を幅広く世に送り出せるよう2020年に株式会社momocanを設立、代表取締役。

北澤芙未子さん
長野県出身。明治大学の演劇学専攻にて学び、舞台芸術制作者としての活動を開始。演劇ユニット「くちびるの会」の制作を担当しながら、大小さまざまな公演の制作業務を担う。子ども向け演劇の創作に関わりながら、舞台芸術公演の鑑賞機会格差解消というテーマに関心を寄せ、継続的に取り組んでいる。


露木友子さん(心理臨床オフィス inemuri)
公認心理師/臨床心理士
主に児童福祉領域で臨床経験を積み、2020年より、演劇現場のハラスメント対応に関わる。現在は、演劇に加え、映像制作現場でのメンタルへルスコーディネーター、オンセットセラピストとしても活動中。


小林愛子
プラットフォームデザインlabメンバー 照明家
学生時代に演劇活動から照明に出会い、早稲田大学卒業後、照明家としてのキャリアをスタートさせる。現在は自身も子育てしながら照明の仕事を続けるとともに、舞台業界に関わる人の子育てと舞台活動の両立を支援する活動に注力している。


前編はこちら
中編はこちら

後半:演劇をつくるためのチームビルディングとは

言っても安全な場を担保し続けること

河野 座組のなかに子育てが身近にない方もいると思いますが、そこでうまれるギャップはどうしていますか?

半田 子どもがいないメンバーは、稽古後にみんなが飲み会に参加してくれなくなったと寂しがっていて(笑)。そういった稽古終わりの時間が楽しくてやってきた10代・20代を経て、40歳近くになって変わってきている。稽古時間のことや、何曜日を休みにするかということは、主宰とも相談をしています。今では自分から「みんなきっと土日のどっちかは休みたいと思うから、この週は土曜休みにしようか」と言ってくれるようになりました。今は子どもがいるメンバーの方が多いので、子どものいる家庭に対して配慮する形になっています。とくに主宰という立場もあって、劇団を継続させるために絶対に考えないといけないことなので。

露木 劇団の歴史が長くなってくると、マジョリティとマイノリティの逆転が起こることもありますよね。

小林 子育て世代が現場のなかでマジョリティになったときに、声が大きくなっちゃうのが怖いんです。今だって、子育てしながら仕事をしていることをどれくらい配慮してもらっていいのか全然わからない。こんなにわがままを言っていいのかなという気持ちもある。今まではマイノリティだったから声が小さかったけど、もし子育て世代の方が多くなったときに、子育てをしていない人たちに嫌な思いを感じさせる可能性があるのかな……ということは気をつけたいんです。

露木 子育てをしていない人もしている人も、一人ひとりの声が尊重されると良いですよね。例えば、子育て中の人にもいろいろな思いがある。子どもとできるだけ一緒にいたい人も、子どもと離れたい人もいる。その人個人の状況を知らないとわからないことは多いですよね。子育て中だったら、稽古で通しを見て、ギリギリで保育園に迎えにいって、買い物をして、電動自転車を必死で漕いで、帰ってからも一度も座ることなく食事を作って食べさせてお風呂に入れて保湿ケアをして歯磨きをして寝かしつけて、やっと座る様子までとか、お互いの状況をタイムラプスで見せ合ったらいい……というのは冗談だけど。

半田 私も子育てと並走している創作現場をこれまで経験してきませんでした。現場の見本がない。自分自身が子育て世代になってきて、新しい課題として考えなきゃいけないなと直面しています。

河野 劇団が子育て世代になって活動が難しくなることや、育児や介護で舞台の仕事から離れたという話は地域問わず耳にします。でも、それぞれがどのように取り組まれているかをお互いに聞ける機会はなかなかないんでしょうね。知れば参考や安心に繋がることもあるはずなので、『こえのわ』でいろんな立場の方の話が聞けることはとても心強いんじゃないかと思います。

小林 誰かの声を聞いてセルフケアのようになったらいいなと思っています。

北澤 現場でも、自分のことを話してくれることはすごく助かります。「17時には帰ります」とか「この日は友人の結婚式なのでお休みしたいです」とか、できるだけその声を実現できるように調整したいと思います。

半田 実は辛い思いをしているかもしれないから、言っていただけるとできることが増えます。やっぱりストレスがあるとどうしても現場の空気がピリピリしてしまうし、それは周りにも伝わっちゃう。でもなぜピリピリしているかの原因がわかれば対処できるし、お互いに精神的にも楽ですよね。

北澤 「今日私はピリピリしています」とかも言い合えると良いかもしれないですよね。

半田 そうじゃないと「自分がなにか嫌がられることをしちゃったのかな」と思ってしまうこともありますしね。

露木 たとえばプロデューサーや主宰者、演出家など、その場でパワーを持つ役職の人たちが、「言うほどでもないかなと思うことでも、伝えて欲しい。聞く準備(心構え)がある」ことを言葉でも態度でも伝えておけると良いですよね。すべての希望を叶えることはできないことは前提として。そして、決して「わがままな奴だ」「めんどくさい奴だ」と「次からは現場に呼ばない」という判断はしない、ということも併せて伝えたい内容です。

半田 座組に参加するまえにアンケートをとります?

小林 いいかもしれない!みんなの前で話すのは勇気がいるから。

特集座談会① 中編

座談会登壇者プロフィール

半田桃子さん
プロデューサー/舞台制作。慶應義塾大学在学中に演劇サークル「創像工房 in front of.」にて松居大悟、目次立樹と出会い劇団「ゴジゲン」を旗揚げ。クリエイターとより風通しのよい環境での創作、さらに多岐にわたるジャンルの作品を幅広く世に送り出せるよう2020年に株式会社momocanを設立、代表取締役。

北澤芙未子さん
長野県出身。明治大学の演劇学専攻にて学び、舞台芸術制作者としての活動を開始。演劇ユニット「くちびるの会」の制作を担当しながら、大小さまざまな公演の制作業務を担う。子ども向け演劇の創作に関わりながら、舞台芸術公演の鑑賞機会格差解消というテーマに関心を寄せ、継続的に取り組んでいる。


露木友子さん(心理臨床オフィス inemuri)
公認心理師/臨床心理士
主に児童福祉領域で臨床経験を積み、2020年より、演劇現場のハラスメント対応に関わる。現在は、演劇に加え、映像制作現場でのメンタルへルスコーディネーター、オンセットセラピストとしても活動中。


小林愛子
プラットフォームデザインlabメンバー 照明家
学生時代に演劇活動から照明に出会い、早稲田大学卒業後、照明家としてのキャリアをスタートさせる。現在は自身も子育てしながら照明の仕事を続けるとともに、舞台業界に関わる人の子育てと舞台活動の両立を支援する活動に注力している。


前編はこちら

中編:子育てと演劇を両立するためのジレンマ

“あわいの時間”に決まること

半田 稽古も朝からにした方がいいですか? 13~20時くらいの現場が多いと思うのですが、10時~17時とか?

北澤 現場ごとにどんなスケジュールが良いかは違いますけれど、ただ、これまで経験した現場で思ったことは、創作の現場にいる人って、話すことが好きで、稽古が終わったあとにも重要な話をたくさんするんですよね。

半田 わかります(笑)

北澤 絶対に稽古後なんですよね!今日の稽古を経てされる話とか、稽古時間後にぽろっと出る本音とか、大切な内容だったりすることもしばしばあって。でも、私は17時には帰らなきゃいけないので、そういう場にいられないんです。稽古を10時〜17時にしても、やっぱり稽古の後には絶対に話があがる。その場にいられないことが、すごく悔しい気持ちになることもあります。

河野 そういえば、育児ではないんですが、似たようなことが喫煙所でも起きていますよね。リラックスしながら作品についていろいろお話してしまうから、プロデューサーから演出家に「それはタバコを吸っている人だけの特権になってしまうから演出家は喫煙所で大事な話はしないでください」と言った現場がありました。

北澤 すごい……!

小林 たしかに20代前半のとき、タバコを吸わないのに喫煙所に行っていました。休憩後に何をするかが喫煙所で決まっちゃうから。

河野 それは子育て関係なく、稽古にいないと起こりえますよね。

北澤 たしかに。大事なことを聞きたいと思ったらずっと稽古場にいないといけない。

河野 美術のハラスメント講習で「飲み会の場でオファーの話が出ても、素面で昼間に話したことだけを仕事にするために契約書を交わしてください」と話されていたことを思い出しました。

露木 芸術領域はどうしてもパーソナルな部分を使って仕事をしているところもあると思うので、これが正解だと言い切れないところがあるのですが。仕事であれば「契約した時間内に、業務に関わることは行えるとよい」と考えます。これはイメージですが、私たちの持つ風土的なものとして「あわいの時間」のような名前のない時間に豊かなものが出てくる、というのはあるように思います。その中でインスピレーション的に重要なことが決まっていく。その時間はとても大切な時間ではありますが、稽古が終わった後だと帰りにくい雰囲気を感じる人も出てきますよね。「あわいの時間」は魅力的ですが、それありきにはせず契約した時間内にどうにかできないか、みんなで考えていけたらと思います。業務上の不利益も、疎外感もないほうがよい。帰りたい人も同じチームの一員ですから。

小林 企業の残業と同じように、みんながまだ会社にいるから残業しなきゃいけない雰囲気に飲み込まれるというのもあるのかも。

半田 それで残業代がもらえたらいいんですけどね。私は早く帰りたいので帰っちゃいます(笑)。でも稽古は、仕事をしてる人がいれば、制作は残らないといけない。劇場だと決まった時間があるから「終演したら1時間以内に帰ってください」と言えるんですけどね。

特集座談会① 前編

座談会登壇者プロフィール

半田桃子さん
プロデューサー/舞台制作。慶應義塾大学在学中に演劇サークル「創像工房 in front of.」にて松居大悟、目次立樹と出会い劇団「ゴジゲン」を旗揚げ。クリエイターとより風通しのよい環境での創作、さらに多岐にわたるジャンルの作品を幅広く世に送り出せるよう2020年に株式会社momocanを設立、代表取締役。

北澤芙未子さん
長野県出身。明治大学の演劇学専攻にて学び、舞台芸術制作者としての活動を開始。演劇ユニット「くちびるの会」の制作を担当しながら、大小さまざまな公演の制作業務を担う。子ども向け演劇の創作に関わりながら、舞台芸術公演の鑑賞機会格差解消というテーマに関心を寄せ、継続的に取り組んでいる。


露木友子さん(心理臨床オフィス inemuri)
公認心理師/臨床心理士
主に児童福祉領域で臨床経験を積み、2020年より、演劇現場のハラスメント対応に関わる。現在は、演劇に加え、映像制作現場でのメンタルへルスコーディネーター、オンセットセラピストとしても活動中。


小林愛子
プラットフォームデザインlabメンバー 照明家
学生時代に演劇活動から照明に出会い、早稲田大学卒業後、照明家としてのキャリアをスタートさせる。現在は自身も子育てしながら照明の仕事を続けるとともに、舞台業界に関わる人の子育てと舞台活動の両立を支援する活動に注力している。



前編:仕事をするにはお金がかかる!

小林 プラットフォームデザインlabの小林です。おそらく旧姓時代を知ってくださっているので吉村とかよむという呼び名になじみがあると思うんですが、今はプライベートも仕事上でも小林を名乗っています。呼びにくいかもしれませんがすみません。これも結婚に伴うあるあるですよね。

北澤 仕事で名前を変えた!?

小林 せっかく結婚したので変えてみたくなっちゃったんですよね。結婚して苗字が変わっても旧姓を通り名として使うっていうのがわりと多いとは思うんですが、まあ変えてみたら本名と自分が名乗る苗字が一緒って当たり前だけどそれはそれでよいかなあと。

北澤 それまでのキャリアもあるのに思い切りましたね!

小林 ずっと名乗っていた屋号があるので、まあそれでよいかなと思いまして。今私会社に所属してるんですけど、その会社に入るときに「ずっと使っている屋号をそのまま使いたいんですけど、それでもいいですか?」と相談しました。それでも受け入れてもらえたのはとてもラッキーでした。
あとは、出産によってそれなりの期間仕事から離れていたらどうなっていたんだろうな……とかは考えます。吉村愛子=小林愛子って認識されないかもな。
わたしたちより上の世代で出産をして切れ間なく仕事を続けていた人はなかなかいないですよね。同じ世代からはすこしずつ増えていますが……。

北澤 制作もほぼいないように思います。

半田 いないですよね。中には秒で戻ってきた人もいますが。

北澤 私たちよりも上の世代の方でそういう方は、ほとんど聞かないように思いますよね、プランナーの方とか。

小林 そうなんです。今の私のちょっと上の世代を見渡してみるとやっぱりプランナーって男性か子どものいない女性が多いなって思っていて。知っている限りでってことなんですけど。
それはやはり出産でキャリアが途切れるというか、一度辞めて、復帰をしたときに、いったんお仕事のつながりが切れちゃっているからなかなかプランの仕事が入ってこない。照明の仕事ということでいえばプラン以外にも仕事はあるから復帰している人はたくさんいると思うんですけどね。

河野 どんな仕事でも女性が直面する壁ですね……

北澤 戻ってこられる人は、なにかサポート体制がある場合が多いですよね、親御さんが近くにいて一緒に育児をしてくださる、とか。

小林 そう。そうやって個人でなんとかしてきたんです。でも若い世代にも子どもがいる人が増えてきて、座組としての問題になっている。今の30~40代が、子どもを産んでかつ仕事を辞めないというモデルケースを模索している、まさに最初の時期なんじゃないか。今日来てくださっている露木さんのハラスメント防止講習を受けたときに「これは座組をみんなで良くするための対話を重ねる講習なんだ」と感じて、きっとマタニティ・育児問題もリンクするなと思い、制作のおふたりと露木さんをお呼びしてお話を伺いたいと思いこの座談会を企画しました。

あの頃、最高の演出家だったあかちゃんと。ー演劇と子育てが混ざり合った先にー

トップ画Photo:haruhiro sako

娘が3ヶ月のこと

「演劇と子育て」というテーマでコラムを書かせていただくことになった。このテーマで真っ先に思い浮かんだのは、うちの娘がまだ生まれて3ヶ月だった頃の、創作の最中の稽古場だ。

ちょぽちょぽ・・・と、ただ目の前で水がボウルからから別のボウルへと注がれる・・・。たったそれだけのありふれた光景に、当時まだ床に寝そべって寝返りさえできない娘は、首をぐるんと動かして、興奮の様子で手足をばたつかせて水の動きを目で追っていた・・・。

「おぉーこれこそベイビーシアターだ!!」と、私は興奮したことを今でも鮮明に覚えている。

自分が子どもを持つことになる前、もっと言うと「俳優であるが故に子どもを持つことを諦めていた」頃から、私は「ベイビーシアター」の活動を始めた。ベイビーシアターとは、欧州で30年ほど前に始まった、0歳〜未就学児を対象とした舞台芸術の一分野である。背景には子どもの権利条約の制定があり、子どもの文化権へ関心が集まり、最も小さな観客への舞台芸術づくりの機運が高まったことがある。日本でも20年ほど前に、親子が集う広場としての性格も併せ持つ舞台芸術への関心や需要があり、ベイビーシアターの源流となるような動きが生まれた。

私は、10年ほど前、現代演劇の俳優として活動していた頃から持ち続けていた関心やテーマを、誰と深めて行けばいいか探していた。その果てに「あかちゃん」という存在に出会い、勇気を出してベイビーシアターを始めてみて、そうしてあっという間に魅了されてしまった。あかちゃんに。演劇の観客として劇場に来て、全身全霊でその場に没入し、虚構の世界の全てを自分のものにしてしまうあかちゃんの眼差しと、惜しげもなく放たれる眩いばかりの生命力に。

そうして、どうしてもあかちゃんと共に生きてみたくなって、幸運にも願いが叶って私のところに来てくれた娘が3ヶ月の頃。冒頭の水との思い出である。

ただの水道水の流れに対するあかちゃんの反応を稽古場で一緒に見ていた俳優たちが「すっごく見てるね・・・」「おもしろい」と、一様に驚きの声をあげたことを覚えている。赤ちゃんが水に反応するというのは、ベイビーシアター公演の経験で知っていたけど、我が子の反応の良さは親である私も驚いた。それからの3年間ほどは、ほとんどすべての稽古場に娘がおり、彼女の反応を見ながらベイビーシアター作品を創作した。

稽古場にあかちゃんがいるということはベイビーシアターにおいて「恵み」そのものだった。

あかちゃんの反応全てが勉強になった。

例えば・・・たまに何の前触れもなく俳優の演技に泣くことがあれば、「今のはなぜ泣いたのか」「何が不快だったのか」と俳優たちと謎解きが始まる。

また別の時には、新しい小道具のアイディアを試してみたり・・・大人から見ればただの梱包材(プチプチロール)なのだが、それが動くことへの反応がこちらの予想を遥かに超えておもしろいのだと気づくことがあれば、あかちゃんと一緒に寝転がってみて味わった。

このように、創作現場があかちゃんにとって潤うこともあれば、逆に子育て中のアーティストにとっていいこともあった。同じ創作現場の俳優の中で3人のお子さんを持つ俳優、つまり先輩ママがいて、抱っこの仕方を教えてもらったのだ。それも産院や子育て支援センターで教わる、いわゆる普通の抱っこの仕方ではない。あかちゃんの呼吸を感じて、その呼吸にあわせて抱っこするという仕方だ。これはなかなかパフォーミングアーツの現場ならではないだろうか。先輩ママ俳優の指導の元、私も、他の俳優たちもみなで私の娘の呼吸を感じながら抱っこした。今思い出しても良い時間だった。

このように、ベイビーシアターではあかちゃんが創作現場にいることが作品にとって良い風に働くという点は、小さなお子さんを子育て中のアーティストにとって良い環境だと思う。

一方で、現実的な問題もある。稽古場に自分の子どもがいると、やれ授乳だ、やれお昼寝だ・・・と、なかなか親である俳優は集中できない。娘が3ヶ月頃の先の現場では、もう一人私の娘と同じ月齢のあかちゃんを持つ俳優がいて、彼女もまたよく稽古場にあかちゃんを連れてきてくれた。

2人もあかちゃんがいたので、これは誰かあかちゃんのことを気に掛けてくれる人手が必要だ、しかも創作には関わっていない人・・・誰か来てくれないか?と、身近な知り合いの何人かに助っ人を頼んだ。予算が限られている中でなかなかプロのシッターを呼ぶことは難しい。芸術に理解があり、且つあかちゃんをケアしてくれて、あわよくば稽古でやっていることと無関係にその場にいるのではなく、あかちゃんと稽古場を繋いでほしい(せっかくベイビーシアターの創作をしているのだから)・・・。なんと欲張りなオーダーであろうか。だがしかし、この時からの「助っ人探し」が後に私の劇団・BEBERICAのベイビーシアターの最も大切な要素と言っても過言ではない、専門スタッフ「観劇サポーター」へと繋がっていく。

舞台監督Hさんの一問一答インタビュー

対象者の紹介

舞台監督さん(男性)、子どもは一人

ご自身が仕事で育児ができないとき、育児を誰に頼っていますか

配偶者・パートナー, シッター

配偶者・パートナーの仕事を教えてください

ペットシッター(個人事業)

家族内におけるご自身が担っている『育児』の割合はどの程度ですか?

朝の用意全般、夜いる日は、夜の世話全般、隔週の日曜日の世話(だいたい2回に一回になるように手分け。)

家族内におけるご自身が担っている『家事』の割合はどの程度ですか?

4割

仕事の理由から、子どもを持つことに迷いや不安はありましたか?迷いや不安があったとお答えの方はその内容を教えてください

不安はあったけど、迷いはない。
不安定な収入と、不規則な時間拘束が不安だった。

子どもを持つことで舞台芸術活動との関わり方、仕事量に変化はありましたか?変化がありましたらその内容を教えてください

朝早くから夜遅くまでは無理になった、世間の休日は、稽古など全てへの、参加は無理。なので朝の現場入りは緩いです。舞台監督としてはだめだと思うが、演出部の存在や、許してくれる(しかたなく?)カンパニーのおかげ。でもクビにもいっぱいなってる。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、困難を感じた経験はありますか?もしありましたら具体的に教えてください

子供に色々あった時期、場当たりを抜けました。初日は空いたけど、ふつうに大事な時を、すっ飛ばしてるので、困難というかなんというか。でもしょーがないなと思って過ごしてる。

子育てと舞台芸術活動の両立が困難だと感じた時、どんな情報がほしかったですか?

予約とかなく、頼むって言って病気の子供を5時間くらい預けれるとこの情報。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、どんな環境が理想的だと思われますか

どれだけ事前準備してもパートナーと2人だと無理な時があるので、両親、姉夫婦と同じ家か、地域にいるとか。昔の村社会みたいに、なんかあったら、だれかがなんとかしてくれるみたいな状態がつくれないと厳しい。5〜6人の誰かが子供をみてる環境が理想。

舞台芸術活動をしている方で、これから子どもを持ちたいと考えている方に対して、何かメッセージはありますか

子どもがいるの最高なので、パートナーと時間の割合とか話して、両親とか義両親とかに頼って。カンパニーと話して、続けることを模索してください。細くても続けるのが大切だと思います。

ご協力ありがとうございました!