文学座こどもげき《みんなのアトリエ》:参加レポート
プラットフォームデザインlab 原田愛
目次
絵を描いていた場所が、劇場に変わる
続いて、「おおかみときつねとの物語」を観劇しました。
客入れの時間から、子どもたちはウズラやワシの絵を描いたり、舞台で使われるパーカッションの楽器に触らせてもらったり。ここでも、ただ開演を待つのではなく、少しずつ作品の世界に参加していきます。
客席は、前方の桟敷が子ども席、後方のひな壇が椅子席になっていました。
物語は「アラビアンナイト」の一節をもとにしたもの。二人の俳優の掛け合いに、子どもも大人もどんどん引き込まれていきます。
そして個人的にワクワクしたのは、空間そのものの変化でした。
つい先ほどまで子どもたちが絵を描き、楽器に触れていたアトリエが、照明が変わり、俳優が立つことで、あっという間に「劇場」になる。
普段から稽古や上演に使われている文学座アトリエという濃密な空間だからこそ、その変化を間近で感じられたように思います。
「アトリエ」が「作品の世界」になる仕組みを体験する
最後に、「舞台の照明と音響を体験してみよう!」というワークショップを、途中まで見学させていただきました。
こちらは小学校高学年以上推奨のプログラム。
まずは照明や音響によって、いつもの「アトリエ」が「作品の世界」へと変わっていく様子を、実際に見たり、聞いたりします。
舞台空間で照明を浴びてみたり、スピーカーから出る音を聞いてみたり。普段は客席から作品として受け取っている光や音を、一つひとつ取り出して体験していきます。


その後、参加者は「照明」と「音響」の希望するグループに分かれ、「おおかみときつねとの物語」の台本をもとに、プランナーと一緒に照明プラン、音響プランを考えるワークショップへと進んでいきます。
私たちは見学だったため、その手前で失礼しましたが、前半だけでもとても興味深い内容でした。
「夏休みの自由研究にも活用できます!」とのことでしたが、それだけでなく、子どもたちが「演劇の現場には、こんな仕事があるんだ」と知る入口にもなっているように思います。
俳優として舞台に立つことだけが、演劇への参加ではありません。
絵を描く。声を出す。音をつくる。光を考える。
この日体験したプログラムには、子どもたちがそれぞれの興味や得意なことから演劇に近づいていける、いくつもの入口が用意されていました。
演劇をつくる場所が、子どもたちにひらかれる
もうひとつ、一日を通して印象に残ったのが、「文学座アトリエ」という場所のあり方でした。
普段、俳優たちが稽古をし、作品をつくり、ときには上演も行う場所が、この日は子どもたちや親たちにひらかれていました。
私たちは演目の間は外で待機しましたが、ミスト付きの扇風機やキッチンワゴンが用意され、暑い時期でも親子で過ごしやすいよう工夫されており、プログラムの内容だけでなく、子どもと一緒に安心して参加するための準備が、空間の隅々まで行き届いていると感じました。
演劇を「観る」だけではなく、絵を描いたり、声を出したり、音や光に触れたり、つくる人たちと出会ったりする。
そして、普段は演劇をつくっている場所そのものに入って、一日を過ごしてみる。
「みんなのアトリエ」という名前の通り、演劇をつくる場所が、この日は本当にいろいろな人のための「アトリエ」になっていたように思います。

