『さかさまの世界』感想座談会 −「わからない」「わかりたい」の先にある発見
KAATキッズ・プログラム2026『さかさまの世界』こえのわ感想座談会
目次
企画について
『おさなごころを持つ4歳から150歳向けダンス作品
さかさまになった世界を救うカギは、こどもたちのイマジネーション!』
KAATキッズ・プログラム2026『さかさまの世界』を、プラットフォームデザインlabのメンバー3人がそれぞれ親子で観劇してきました。
開演前に行われる紙芝居、ブラックボックス、観客も衣裳や小道具を装着!などなど、『さかさまの世界』は意外なことの連続で始まりました。
次々に起こる「これは一体どういうこと?!」を親子で体感した感想を、こえのわメンバー3人で語り尽くしました!
参加者
予想外な導入について考えたい
原田 私は開演15分前の紙芝居から見たんですけど、紙芝居を見ると、この作品には何か物語があるのかなって感じるじゃないですか。でも実際は、どちらかというとストーリーを追うというより、「こう感じる」とか、「心を引き出す」とか、観客に働きかけるような作品だったので、そのギャップが最初は結構あって。だから不思議な観劇体験だったんです。あの作品世界の中で、紙芝居はどういう立ち位置なんだろうって思って。
中村 私は導入の「ひみつ小屋」(紙芝居のタイトル)が、劇場に入るっていう最大の難関を突破させるための工夫なんじゃないかなと思ったんです。劇場というものに子どもたちがすっと入るにはどうしたらいいか、すごく考えているのかなって。「ひみつ小屋」を観たもの同士で劇場に入っていく。ただ、私の娘は小学4年生ですが「ひみつ小屋」を観て、本編とのつながりについて色々と考えていたようです。
原田 うちの娘も、どう受け止めたらいいんだろうと考えながら見ていた気がします。私が見た回はKAATの子ども向けプログラムに慣れている子どもたちも多かったと思うのですが、それでもいつもとは少し違う作品体験になっていたように感じました。
私はその一因は紙芝居にあるのかなと思っていて。紙芝居があることで、大きい子たちは「これから物語が始まるのかな」と想像するし、小さい子たちも普段とは少し違う空気を感じていた。そのことが、作品との向き合い方に影響していたのかもしれないなと思いました。
松本 私が劇場に入って意外だったのが、ブラックボックスだったことですね。対象年齢が4歳から150歳って書いてあったから、そもそも子どもだけに向けた作品じゃないのかもしれないけれど、一般的な子ども向け作品って、美術から目に入って「楽しそう」って思えることが多いじゃないですか。でも今回はそれがなかった。
だから、静かに見る紙芝居から始まって、劇場に入ったら真っ黒な空間。あえて子ども向けにしない狙いがあったのかなと思いました。でも見ているうちに、「劇場で遊ぶ」ことを見せたかったんだなって気づいたんです。美術で見せるんじゃなくて、大人が舞台の上で音や光、あとはいろんな小道具とかとめちゃくちゃに遊んでいる姿を見せるために削ぎ落としたのかなって。
大人と子どもがさかさま?親子それぞれの反応について
中村 松本さんの「劇場で遊ぶ」っていうの、すごくわかります。上演自体もいろんな意味で「さかさま」を感じられて、何もないことも劇場なんだと気付かされました。
個人的に私はダンサーがかっこ良い振り付けで踊るわけではなく、動きも仕草も歌もどこか子どもっぽくて思わず大人の方がクスッと笑ってしまう。いい意味でカッコ悪さのようなものに胸を打たれてジーンとしてしまいました。
松本 面白いですね。私はこの作品を、7歳の長男と行ったんです。それで見終わったあとに「どうだった?」って聞いたら、「面白くなかった」って言われたんです。
「どうして?」って聞いたら、「僕はいつもふざけると怒られるのに、なんでふざけてる大人を見なきゃいけないの?見せびらかしてきた。」って言うんです。
中村 なるほど。でもその感想、最高ですね。
松本 本当に?私はそれを聞いた時、ちょっと泣きそうになっちゃった。私今までどんだけ息子を叱ってきたんだろうって思って。うちの子、本当にやんちゃで、急いでる時でも飲食店でも病院でも、どこでもふざけちゃうんです。だから私はすぐ「やめて!」「だめ!」って叱る。だから息子の感想は本当にもっともなことで、これまでの親子の関係とか、自分の接し方とかを思ってすごく反省しちゃいました。
中村 もしかしたら作り手の方が聞いたら、喜ぶ感想かも…。と思いました。
原田 私は二人の話を聞いて、子どもたちは大人みたいな気持ちで見ていたのかもと思った。うちの娘も「何やってるんだろう」っていう感じで、楽しんでいる大人たちをちょっと大人の視線で見ていた気がする。
逆に大人は子どもの気持ちになっていて。最後に体を動かした時なんか、私はいつもより自然に参加できたんです。ここではふざけてもいいし、参加しないほうがもったいない気がして。子どもと大人の境目をなくして近づけている作品だったのかもしれないなって。
松本 そうか。じゃあ私たちはまんまと「さかさまの世界」に入ってたんですね(笑)。
中村 そう、まんまと乗せられてましたね(笑)。

