『さかさまの世界』感想座談会 −「わからない」「わかりたい」の先にある発見
KAATキッズ・プログラム2026『さかさまの世界』こえのわ感想座談会
目次
アウトプットの大切さ。親子で感想を言い合おう
原田 いつもは子どもを見ながら舞台を見ることが多いんだけど、今回は娘が娘で独自に反応していたから、逆に私は舞台をちゃんと見ることができた気がして。絵の具でビチャビチャになりたいな、っていう気持ちも出てきたし。
中村 私も、自分の中のどこかである「子ども向け作品を見て自分の子どもが楽しんでいる」という成功体験を、いい意味で裏切られた感じがありました! それで思ったのが、日本って小さい時から家族や大人と舞台を見る回数自体が少ないのもあるかもなと。気づいたら娘も小学4年生で舞台に対して素直に反応するより、少しだけ「恥ずかしさ」が勝つ年頃になってきていて。それでも最後まで彼女なりにしっかりいろんな所を見ているように思いました。 「ライトで追いかけっこするところが面白かった」とか、「絵の具まみれが終わるかと思ったらまだ続いて面白かった」とか話しをしました。
原田 結果的には良かったんだね。
中村 そう。その話ができたこと自体が良かったなと思いました。
松本 確かに。なんだかわからないまま感想を言い合うのって面白いよね。手掛かりを思い返しながら、「これはこう?」「こうだったかも」みたいに会話が重なっていく感じ。
私は長男の感想を聞いてすごくショックを受けたけど、今思うと最後までちゃんと見ていたからこその感想なんだなって。見終わったあとに話し合えた時間はすごく貴重でした。
事前情報の出し方も戦略のひとつ?!
中村 こえのわでも少しずつ取り組んでいますが、最近は大人だけでなく子どもや親子で安心して観劇するためのチェックシートを作ったりしていますよね。
観劇安心シート。チラシに書かれている情報を補填する形で作品内容に触れる項目もあったりしますが、特に今回のような作品に関しては 内容について書きすぎなくてもいいのかな….と思いました。
松本 本当にそう。私は最初、この作品のチラシの情報量が少なくて行くかどうか迷ってしまったところがあるのですが、それもあえてなのかもしれない。子ども向けだからといって何もかも説明しなくてもいいんだなって思いました。
中村 そうですよね、こえのわで作品の紹介をする時に創り手の方の意図も伺いながらその都度観客へどのような発信をしていけるといいかな〜と今回の作品をみんなで観劇したことで発見がありました。
松本 話せば話すほど、最初に感じた「わかりにくさ」が面白く感じてきました。私たちは事前情報をたくさん知りたい立場だけど、そうじゃない届け方もあるんだなっていう発見でした。
原田 最近、親が見せたいものと、子どもが見たいもの・体験したいことは少し違うんじゃないかという話をしていたんです。でも実際には、子どもが作品と出会う入り口をつくるのは親であることも多い。だから、親に向けてどう情報を届けるかも大事なんだろうなと思いました。
子どもが「わからない」と向き合うことの必要性
原田 あと、娘が普段YouTubeを見ていると、「なんだろう」と思った瞬間に次へ行けてしまう。でも劇場では、「なんだろう」という気持ちと向き合う時間になる。
松本さんの息子さんにとっても、あの作品はそういう時間だったんじゃないかなと思いました。それは今の時代には、貴重な体験なのかも。
松本 なるほど。うちの子もYouTubeだったらすぐに変えちゃう。自分の好きなものしか見ないですね。
中村 今なかなかお金も使いづらいから、そういう贅沢な体験のさせ方とかがなかなできないですよね。例えば、五百円のチケット代と五百円のカラオケ歌い放題で友達と歌うのとどっちが楽しいかな、この子にとってとか、どうしてもそんな風に考えてしまう。
松本 うんうん確かに。自分が子ども向け作品を選ぶときに、つい我が子が好きそうな作品を選んじゃってる。やっぱりせっかく見に行くなら息子に楽しんでもらいたいし、お金払って準備して、それで、つまんないと感じられてしまったら結構ショックだから。でも今回みたいな経験は、息子にとっては稀有で、逆に良かったのかもしれない。
中村 あと、こうした体験をお互い話す場そのものが足りてないですよね。一緒に見た人同士で子どもも大人も感想を話して残す機会があると面白いのかも、今後も企画したいですね!
松本 是非やりたいです!今回この話し合いがなかったら、私はただの一人反省会で終わってたので(笑)。それが三人で話せことで、すごくプラスになりました。
原田 子どもがいると観劇後すぐ帰っちゃうもんね。昔は観劇後に飲みに行って感想を話したりしてたけど。
あ、あと、KAATの鑑賞サポート(※)も紹介したい。娘が今回初めての場所、初めての作品で多分ちょっと不安だったんだけど、鑑賞サポートの窓口で貸していただいたタコの人形をずっと頭に乗せて見てたの。終演後にダンサーの人たちから「タコ乗せてた子だよね」って声をかけてもらって、すごく嬉しそうで。なんだかタコに助けられていた気がしました。
松本 え!かわいい!
中村 不安な時に触れるおもちゃとかありますよね。そういうサポートっていいなと思います。
松本 うん。その心遣いや配慮が嬉しいですね。そういう取り組みがあれば、うちも次は是非利用してみたいです。
今日は話せて本当によかったです。ありがとうございました!
(※)KAATの鑑賞サポート
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