大人も子どもも「正解」よりも、その人らしさを。
-PANCETTA LABの考える表現の場-
特集

大人も子どもも「正解」よりも、その人らしさを。

-PANCETTA LABの考える表現の場-

目次

企画説明

「うまくやらなければ…」「失敗してはいけない…」—子どもも大人も、知らず知らずのうちにそんな思いや不安を抱えながら過ごしているのかもしれません。

PANCETTAが実施するKIDS LAB、TEENS LABは、そうした「正解」や「決まり事」のようなものから少し離れて、一人ひとりの感じ方や、その人らしさを大切にしながら創作を行う場です。

今回はPANCETTAの一宮周平さんに、子どもたちとの創作への思いについてお話を聞きました!


聞き手・記事:中村友美(こえのわ)


※2026年6月オンラインインタビュー

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中村: どうぞよろしくお願いします。今回『ヘンゼルとグレーテル』を作品に選んだ理由を教えてください。


一宮:実はこの作品は、以前アーティストのtupera tuperaと一緒に創作したことがある題材なんです。今回は改めて子どもたちと取り組むことで、また違った発見が生まれるのではないかと思っています。

また、『ヘンゼルとグレーテル』のように多くの人が知っている物語を扱うことで、誰もが持っているイメージとの違いやその作品の新しい一面が見えてくるのも面白さのひとつです。お客さんにとっても、物語やシーンを想像しながら見てもらいやすいという点があります。

ただ、僕自身は「この作品を通して何か大切なメッセージを伝えたい」とか、「こう受け取ってほしい」といった思いが強くあるわけではないんです。正直なところ、テーマは何だっていいと思っていて(笑)。作品を通して、それぞれのお客さんが自由に感じたり、発見したりしてくれたらいいなと思っています。


「何も用意しない」から始まる創作

中村:  PANCETTA LABを始められたきっかけについて教えてください。

一宮:  子どもたちと何か一緒につくりたい、という思いは結構前からありました。2018年頃からずっと考えていたことなんです。子どもたちの「劇体験」について考えたときに、実は苦痛に感じていた子も多いんじゃないかと思っていて。学校などで劇をやった経験があっても、「劇が好き」「楽しかった」と感じている人って少ない気がするんです。

「やらされるもの」になっていることが多いというか。僕自身、劇で何をやったとかが記憶にも残っていなかったり。PANCETTAで作品をつくる上で大事にしていることを、子どもたちとも共有できたらいいなと思っています。

個人的には、世の中にとっての劇体験の多くは、ルール、決まり事を正しく守ることを大事にしているような気がしています。本来、演劇はそれぞれが感じたことから生まれてくるもののはずですし、自分以外の何者かになれる、とても面白い時間だと思っています。でも、教える過程の中で、いつの間にかテクニックやルールを覚えて、「こう表現するとこう見える」というような、実際には存在しない“正解”を身につけることが目的になってしまうことがある。

僕自身、そのあり方にはずっと違和感がありました。誰がやっても同じような表現になるのなら、それはあまり面白いことではないんじゃないか、と。もし自分が子どもだったら、もっと刺激的な体験をしたかっただろうなと思うんです。だからこそ、子どもたちと一緒に何かをつくる場があったらいいな、とずっと考えていました。

中村:  確かに「決まり事」「上手にやること」が求められる場面は多いですよね。PANCETTA LAB今年で3年目になりますよね。

一宮: はい、最初は 2024年の夏に、劇場を二週間借りて実施しました。一週間は子どもたちと創作し、最終日に発表。もう一週間は同じ題材を使って、大人の俳優や音楽家と作品をつくりました。

子どもたちとの一週間では、こちらで台本を用意したり、「これを上手にできるようになろう」ということは一切しません。まずは集まった子どもたちとコミュニケーションを取って、一緒に「遊ぶ」ところから始めます。

普段言葉で伝えていることを身体で伝えてみたり、さまざまな遊びをしたり。その中で生まれてきた面白い瞬間を少しずつ構成して、物語のような形にしていくんです。

形として発表会はありますが、「ここでこうして」と細かく指示することはありません。舞台上でも、普段通りの姿でいる子が多いですね。人と違うことをやりたい子はそうするし、客席の親を見つけて手を振っている子もいる。だから親もまた「ああ、こういう姿を見たかったな」と思える瞬間があるのかもしれません。


親もまた、どこかで「安心」を求めている

中村:  「何も用意しない」というのは、とても可能性に満ちていてワクワクします。でも一方で、親の方が不安になることもあるのかなと感じます。

一宮:  そうですね。大人もどこかで安心したいんだと思います。何が起きるか分からないより、「これを覚えて、こうすれば大丈夫」という方が安心できますよね。だから間違えないように繰り返しトレーニングをする。でも、表現って本来、その人にしか生まれないものを楽しむものだと思うんです。正解がないから不安になる。でも、その不安の先にある自由さを大事にしたい。不安なままでいいと思うんです。

KIDS LABでは、保護者の方には基本的に活動中は見守らず、送り迎えだけお願いしています。子どもたちも親がいると気になってしまうので。後から「今日は何をしたの?」と聞いても、親御さんにはよく分からないことも多いみたいです。「明日の発表会、それで大丈夫なの?」と言われた子もいました(笑)。でも、最終的にはみなさん驚かれますし、子どもたちが生き生きしている姿を見てくださっています。

中村:  家に帰ってから親子で話す時間も含めて、とても豊かな体験ですね。


ティーンズ世代にも「正解のない場」を

中村: 今回これまでの KIDS LABに加えて、TEENS LABを新設したのですよね。ティーン世代はまさに子どもと大人の間にいる時期ですよね。自立もしてきて自分自身で確かめたい気持ちも強くなってくる。私の娘も現在プレティーンに差し掛かっており、そうした時期にこうした場があることはとても大きな意味があるように感じます。

一宮:  以前高校演劇の審査員をした時に高校生から「どうしたら最優秀賞が取れますか?」と聞かれたことがあって。でも、「そんなの分からないよ」と思ってしまって….みんな、ある一定の正解を目指しているように見えるんです。それは本当に楽しいのかな、と。だからTEENS LABでも、基本的な考え方はKIDS LABと同じです。正解のない場に触れてもらいたい。

中村:  ティーン世代は、まさに子どもと大人の狭間にいる時期ですよね。自分自身で確かめたい気持ちも強くなってくる。私の娘も現在プレティーンに差し掛かっており、そうした時期にこうした場があることはとても大きな意味があるように感じます。


ここに来ても大丈夫なんだ」と感じてもらえる場



中村: 演劇経験がない子でも楽しめますか?どんな子に来てほしいですか。

一宮: 演劇経験がある子は、最初は戸惑うこともあります。普段の「上手にできる」がここでは評価されないので。でも、だんだん本来の自分が出てくるんです。あとは、最初は周りの目をすごく気にしていた子も、少しずつ自分のやりたいことや欲求を出してくる。

その様子を見ていると、普段はかなり頑張って自分を抑えているんだなと感じることがあります。
「人前に出るのが苦手」「劇には興味があるけれど、目立つのは苦手」という子も全然大丈夫です。この場では何かを発表したり、上手に表現したりすることを求めていません。

学校の国語の授業のように、抑揚をつけて読むことが期待されるような場でもない。特別なスキルは何も必要なくて、ただその場にいて、人と関わってみるだけでもいいんです。

今年は、さまざまな特性や背景のある子どもたちにも「ここに来ていい場所なんだ」と感じてもらえるような発信を、もう少し積極的にしていきたいと思っています。特別な枠を設けたいということではなく、そうしたメッセージはこちらから意識して伝えないとなかなか届かないこともあると感じています。

社会全体として、「最低限これくらいできないと参加できない」と思われている場面はまだ多い気がするんです。だからこそ、「自分には関係ない場所」と感じることなく、いろんな子どもたちに抵抗なく参加してもらえるようにしたい。一歩ずつ取り組んでいきたいですね。



中村: 素敵なお話が聞けて私も嬉しいです。本日はありがとうございました!

最後に…

「正解」がないことは、子どもだけなく大人にとっても不安でもあります。

けれど、誰かに評価されるためではなく、自分自身の感じ方を大切にする時間は子どもたちにとっても、大人にとっても貴重な体験なのかもしれません。

決められた答えを探すのではなく「自分はどう感じるのか」を見つめ、子どもたちが自分らしくいられること。

それに関わる大人もそれを信じてあげること。

PANCETTAの「KIDS LAB」「TEENS LAB」、そんな「その人らしい表現」が体験できる場所なのかもしれません。

PANCETTA LABの詳細はこちら!!

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