仕事に誠実でいるほど、家族に不誠実になる
舞台音響家 佐藤こうじ
舞台音響の仕事を20年続けてきて、41歳で結婚しました。
妻の連れ子である小学一年生と年長の女の子の父になりました。
独身で、ほぼ休みなく働き続けてきた自分にとって、家族を持つというのは正直、奇跡に近い出来事でした。
この仕事をしていて良かったと思う瞬間もあります。
関わっていたカンパニーの作品は子どもでも楽しめるもので、劇場に連れていくことができました。
自分がギターで出演する日には、「パパー」と声をかけられることもありました。
舞台の裏側や楽屋も見せることができて、「おんきょう」という仕事を子どもなりに理解してくれているようです。
自分の仕事を、目の前で体験として見せてあげられる。
それは、この仕事を続けてきて良かったと思える瞬間です。
ただ、それ以上に強く感じていることがあります。
この仕事は、家族と相性が悪い。
なぜ帰りが遅いのか。
なぜ休みがないのか。
いくら説明しても、なかなか伝わりません。
人が楽しんでいる時間に働き、
人が働いている時間にも働いている。
じゃあ、いつ休むのか。
休もうと思えば休める。
でも、その分どこかで無理をすることになる。
気づけば、常に仕事をしていないと不安になる体になっていました。
作品のクオリティを上げたいと思えば思うほど、
時間はすべてそちらに流れていきます。
でもそれは、家族にとっては価値にはならない。
カンパニーに不義理をしないように仕事をすると、
家族に不義理になる。
でも、その仕事で家族は生活している。
この矛盾を、ずっと抱えています。
仕事を減らせばいいのでは、と思ったことは何度もあります。
実際に試したこともあります。
でも、空いた隙間にはまた仕事が入ってくる。
気づけば一年が埋まっている。
本音を言えば、家にいたいです。
妻と話して、料理をして、映画を見て、
お酒を飲みながらくだらない話をしたい。
それでも、今の仕事をやめる選択は現実的ではありません。
20年続けてきた仕事であり、
この先も家族を支えていくための手段でもあるからです。
うまくまとめられる話ではないのですが、
独身の頃には知らなかった苦悩を知れたこと自体は、
悪いことではないと思っています。
家族に迷惑をかけながら、
それでもこの仕事を続けていく。
その先に何があるのかは、まだ分かりません。
香港へ向かう飛行機の中で、これを書いています。
結局、こうしてまた仕事の中にいます。

