痛(いた)、気持ちよくゆらぐ

子育てと仕事の「両立」という言葉への疑問

 子育てと舞台芸術の両立ということについて考える時、私自身この「両立」ってなんだ!?となり今現在も振り回されっぱなしです。


 そして作品や人の話を聞くのは好きですが、自分の話を人にするのは正直苦手です。
…と言いつつ自身の考える「両立」について見つめ直す意味でこうしてアウトプットしてみようと思います。

(2025年10月現在)

海外への子連れ出張

ここ数年で思い出深いのは、娘が小学一年生の時の(2023年)1ヶ月ほどのワンオペ子連れ海外出張でした。 後にも先にもきっとこれからはなかなか実現が難しいだろうなとも思いつつ、プロダクションの皆様の寛容さと、現地での受け入れの方々の柔軟な対応で成立した機会でもありました。

この時の滞在はドイツ・フランクフルトで開催される演劇祭にて2演目作品の上演(そのうち1本は新作)。出国前、小学一年生の子供託児に困っていたところ、いろんな方々からの協力があり現地で日本人のキッズシッターの方を紹介していただきました。

日本で行政のショートステイ※やシッターさんに頼む機会はこれまでもありましたが、海外で探すのは少しハードルが高かったので紹介してもらった時はとても安心しました。
(今思う本当に奇跡だなと… )



ドイツでは最初の一週間は再演の仕込み〜リハからの本番となり、連日劇場に来ていただくような形でシッティングをしていただきました。夜遅い時間もあり、滞在先のアパートに連れて帰っていただきながらの保育となりました。

次の新作の演目は日本でもリハーサルも行なっていましたが、向こうの劇場の稽古場に入っての集中稽古は早い時間に終わることもあり、子供と過ごす時間も確保することができました。リハーサルの間はシッターさんには近隣の公園やプール施設、博物館等様々な施設に子供を連れて行ってくれました。
(子供の学校の学習はドリルや、もらった宿題を現場に入る前の朝にやっていました)

ユーロが高く親子共々連日弁当生活

帰国前の出国時には空港まで見送りに来てくださり、シッターさんのお力がなければこの長期完走することができませんでした。今でも大変感謝しています。

子供もよく最後まで体調も崩さず乗り切ってくれたと…

私と子供のタイムラインは当然違う

海外ツアーを経て、子供の成長と共に自分と子供のタイムラインが明確にあるのだということに気づきました。これまではどうしても親として「管理してなくては」という気持ちが大きいと感じていたところ、子供の意志を尊重して「手放す」ということを意識したいなと考えはじめました。

今年から学童保育も離れて早い帰宅を迎える状況が続き、保育園〜小学1.2年生の頃から更に状況が変化しました。平日の放課後や休日も最近は友達同士での約束も増え、その分友人間のトラブルもないとは言えません。

それでも子供が学校や習い事、それ以外の場で過ごしている時間を心配しつつ、想いを馳せるような日々です。

家族同士のケアの変化

我が家の場合は、子供が産まれてからは家族どちらかが家を空ける、を定期的に繰り返しています。
そのため、どちらかがワンオペの状態で仕事を家事をこなさなくてはいけない場合がほとんどです。

最近は夫が舞台監督として本番をやりながら、私が3週間海外ツアーで家を空けるという状況は思いの外、相手に負担がかかる結果となりました。
その中で、互いの育児のやり方や生活的な見えないケアに気付きづらい面やすれ違いもあったように思います。
それについては家族の生活や時間を見つめ直しながら、パフォーマンスを落とさない方法を模索中です。

娘もしっかり親に対しても意見を言ってくれるようになり心強いです。

私にとってもこうして子育てや仕事について言葉にして記す、出力する作業そのものが自身のセルフケアになるような気もしています。

娘とエンタメを楽しむ!

私と娘の楽しみはとにかく映画や舞台を見に行くことです。映画はアニメだけでなく洋画や実写映画も楽しめるようになり、月に2回ほどは一緒に映画館に行く日々です。 舞台は内容にもよりますが、最近は2時間のお芝居や海外のダンスカンパニーの作品も楽しく観劇できるようになってきました。

子供の生活の中の一つの選択としてお芝居やエンタメを楽しむことを選んでくれるのは嬉しく思います。

子供がいくつになっても正解のない子育てと仕事の「両立」の日々に翻弄されていますが、その「ゆらぎ」も痛(いた)、気持ちよく楽しむ、なんだかんだそれもまた心地いいのかもしれません。


※ショートステイ・子育て短期支援事業について

こども家庭庁https://www.cfa.go.jp/policies/kosodateshien/jido-short

共にやっていくこと、うまい頼りかたを見つけること

子供はまもなく1歳になる。生まれたのは2024年の10月だった。記念にその日の朝刊をとってあるが、一面にはでかでかと「石破内閣発足」とある。この文章を書いている現在は「辞任」のニュースが世間を騒がせている。子育てに奔走している間にも世の中は動いているようである。

その直前の9月、私が代表を務める演劇プロジェクト《円盤に乗る派》は、東京芸術祭にラインナップされた公演『仮想的な失調』を上演していた。実はこの話をいただいたとき、すでに妻の妊娠は発覚していた。上演日程は臨月のはじめごろと重なっており、稽古中から本番まで、いつ私(演出家)がいなくなるかわからないという前提でプロダクションは動き出した。幸いにして再演であったし、もう一人の演出家である蜂巣ももさんもいたし、何より東京芸術祭のスタッフさんも含めた関係者のみなさんの理解のおかげで、あらゆるパターンを踏まえた「いつカゲヤマがいなくなっても公演は実現できる」体制を敷くことができた。大変だったと思いますが、本当に感謝しています。

実際のところは生まれたのは公演終了後で、大きなトラブルもなかったのでほっとしている。お産にも立ち会うことができた。いきむときに踏ん張れるように肩を貸したり、ボールを押し当てたりする役もやった。まもなく生まれるというとき、陣痛の波の合間、妻は私の様子を見て笑って「あなたは息を止めなくていいんだよ…」と言った。無意識のうちに一緒に息を止めていたのだ。私も必死だったんだと思う。

産後については、3ヶ月は何も仕事を入れずに子育てだけに集中する期間とし、そのあと3ヶ月は育児もしつつその合間にできるところから稼働を始め、さらに半年くらいかけて徐々に活動を再開していく、という1年間のスケジュールを組んだ(ちなみに妻は勤め人で、同様に1年間の育休をとっており、まもなく職場復帰の予定)。

そうして始まった育休だが、かなり反省点も多い。今思うとかなり自分は「気負ってしまっていた」ように思う。「育児のタスクをこなさなければ」「家事もしっかりやらなければ」「家は清潔さを保ち、常に整理されていなければ」「妻も産後の身体だから、それらをまず自分がやらなければ」というような気負いがあり、例えば妻が洗濯をしてくれたときなどに「洗濯をさせてしまった」という負い目から軽いパニックになりかけたりしていた。お産のとき一緒に息を止めてしまったように、おそらくここでも必死になっていたのだ。

そんなある時、妻に「息苦しい」「休まらない」と言われた。自分も家事をしたいし、育児にもできる限り参加したいので、その機会を取り上げないで欲しい、と。言われてショックでもあったが、もっともなことだと思う。それですぐに改善できたというわけではないのだが、そこから(何度か衝突を繰り返しつつも)徐々に自分の「気負い」や「負い目」もやわらいでいったような気はしている。

これは年々ますます自覚しているのだが、どうも自分は責任を他人と分担することが苦手のようだ。自分で全部を負ってしまうか、あるいは完全に手放してしまう。その合間のちょうどいいありかたが、どうもうまくできない。そしてこの特性は、育児と仕事や生活の両立において、非常に相性が悪い。

子供が生まれて約半年ほど経った2025年の3月に、『乗る派クラブ』というイベントを開催した。これも育児中の開催となることが決まっていたため、運営メンバーには前年夏の時点である程度の構想を共有し、みなさんに主導いただく形で運営をお任せした。しかし結果的には、想定以上の負担をメンバーに敷く形になってしまった。本来であれば私の方で巻き取ったり対応したりすべきところで、うまく稼働ができなかったのだ。イベント自体はよいものにはなったと思うが、精神的・体力的な意味で運営コストが高くなってしまったことは大いに反省がある。

団体の代表として、あるいは公演の企画者として、そして生活を共にする家族の一員として自分にこれから求められることは、0か100かではなくて「共にやっていく」ことだと思うし、「共にやっていく」なりの責任をとっていくことだと思う。それは、適切に人に頼ること、うまい頼り方を見つけていくことでもあるし、無理に自分で負いすぎないことでもある。これは当たり前のことかもしれないし、これまでもずっと課題ではあったのだが、自分にとってはとても難しいことだ。

実現には具体的なテクニックがいる。失敗だって何度も繰り返すだろうと思う。ひとまず、忙しくなりすぎないようにすること、時間的な余裕を常に確保すること、から始めていこうと思う。その意味でも、来年3月に予定している新作公演はひとつの大きな挑戦である。

サムネイル写真撮影:妻

わがやのスケジュールお見せします!①

対象者の紹介

今回教えてくれたのは…俳優Nさん(配偶者:俳優/非常勤職員、お子さん:長男11歳)

直近の本番は子役の子もいたので、だいたい18時までに本番が終わり、稽古も20時までで終わりました。だから息子が寝る前に帰れました!スケジュールを起こしてみて、客観的にどう過ごしているのか、どこを手伝ってもらったら楽になる?など、考えていきたい事柄だと改めて思いました!

私たちはなぜ選択を強いられねばならないのか

生きていく上でここが岐路だと思うことは意外と多くあります。

俳優業を始めて、今年で24年が経ちました。

今までがむしゃらに、自分の全人生をかけて俳優業に取り組んできましたが、そんな中で素敵な人と出会い、家族になり、39歳にして初めて子供が欲しいと思いました。仕事以外のことで何かを望むのはいつ振りなのか分からない程に仕事人間だった私の「妊娠を望む」という気持ちの変容は、自分でも意外なものでした。

そして現在絶賛妊活中です。

結婚して妊活を始めるにあたって、仕事関係の人からこんなことを言われました。

「女の人は子供を産むと変わるし、産休で仕事を休んでる間に芝居が下手になった人もいるから」

私はそれを聞いて腑が煮えくり返り、数ヶ月経った今も現在進行形で怒っています。

「そんなわけあるかい。何言ってんじゃボケ。お前は芝居が何たるかを全く分かってない」

次言われたらこう返してやろうと、たまに思い出しては一番怖い言い方を練習しています。

そして、なぜそんなことを言われなければならないのか、私はそれの何が嫌だったのかをずっと考えています。

子供を産む決断とセットで、他にも色々と理不尽だと思うことに直面しました。その度に、この決断は間違いではないのだからと思う反面、不安になるのも事実です。

妊活中のため一年先の仕事の予定は諦めねばいけない。2ヶ月先、3ヶ月先の状況も分からない。そんな中で未だ子宝に恵まれず、最近は生理がくると悲しい気持ちに襲われて、わんわんと泣く日もあります。

「こんなに頑張っているのに、こんなに色んなことを犠牲にしているのに、なんで?」

という気持ちが溢れ出てくるのです。

次第にその考えは、「女だから大変なんだ」「女である私の方が苦しい」という思いに変わっていき、私の未熟さから、愛する夫にその矛先を向けてしまうこともあります。好きな人と家族になれたから、子供が欲しいと思えたのに、まったくもって本末転倒です。

女である私には男の気持ちは分かりません。私が思うように男性も、子供を作る決断をした時に何か犠牲を払っていると感じることがあるのかもしれません。私はそのことを夫に聞いてみたことがあります。

「私は女であることにこんなに不都合を感じているのだけど、男であるあなたはどう?」

夫は大変優しい人ですが、話をしているうちに、どっちが大変か自慢になってきてしまい、私は失敗したなと思いました。

それぞれの立場で、それぞれの不都合を共有し合うことは大切なことですが、もっと大事なことは、分かって欲しいと不満をぶつけ合うのではなく、お互いにサポートできることを探していくことです。他者である2人が家族になる意味はそこにあり、立場の違うもの同士だからこそ、助け合うことができるし、その方が長く続くと思うのです。

私は私のできることをやろう。

そして、あなたが困ったときは助けよう。

私の困ったときは助けてもらおう。

そんな当たり前のことを忘れないようにしなければと、日々自分に言い聞かせています。

親になる前からこんなふうに人としての成長を強いられるのだから、妊活はなかなか良いものです。いや、こうやって良いものだと思えるところを無理矢理にでも見つけないとやってられないものです。それこそが人間修行だ。そして次から妊活中の人の役は出来る!と思えるのは、俳優という仕事の好きなところです。

でももうちょっと早く、出来てるか出来てないか分かればいいのに。できれば受精当日の夜か次の日くらいには分かりませんかね、神様。

話を戻します。俳優を長く続けていると、俳優仲間の色々な岐路を目の当たりにすることがあります。

子供ができてその幸せに満たされて俳優を辞めた人もいる。本当は復帰したいけど子供や妊活のために復帰を諦めている人もいる。そしてそれに憤りを感じている。同じく俳優であるパートナーを支えるために俳優を辞めた人もいる。また、家族を養っていかねばならないので俳優を辞めた人もいる。

俳優を辞めたり、休んだり、妊活を諦め、俳優を続けたりしている人たちは、男女問わず、それぞれにたくさんの岐路に立ち、毎回多くの選択をしてきた、もしくはせざるを得なかったのだと思います。

私はそんな人たちを見てきて、素晴らしいなと思うこともあれば、勿体無いと勝手に思うこともあります。そしてその度に、その選択以外を選ぶ機会がある世の中になればいいのにと強く思うのです。

現在妊活中の私も前述した通り、選択を強いられています。自分の決断に責任を持てるのは自分だけなので、非常に疲弊します。そんな中で、俳優業を諦めずに済む方法も模索中です。

その一つとして、『ファミリーサポート』という行政の取り組みがあることを知りました。ファミリーサポート、通称ファミサポは、自治体で運営している有償のボランティアで、自治体によってシステムはそれぞれ違いますが、大まかに言うと、子育てに奮闘している方をサポートしたい人が、自治体で行っている無料の研修を何日か受けて、協力会員として登録し、同じ自治体内に住む親御さんの子育てのお手伝いをするというものです。ファミサポは有償ですが最低賃金よりも安い金額を利用者の方から頂くのみで、あくまでもボランティアなので、スケジュールなどは当日であってもキャンセルすることができます。利用する方からしたら不便に感じることもあるかもしれませんが、全く足りていない協力会員の数を増やすためには致し方ないところだと思います。私はこういったサービスを提供する側として、今は、将来自分が子供を持った時に、周りにどのように支援してもらい、子育てと仕事をどのように両立していくかをシミュレーションしている最中です。

ファミサポの研修の中で児童相談所の職員の方のお話を聞く機会がありました。その方は「子供を虐待してしまう人は責任感が強い方が多く、自分でなんとかしなくてはならない。人に頼ってはいけないと思っていて、自分が限界なのにも関わらず、支援を受けることを拒否し、虐待という結果を産んでしまうことがある」と仰っていました。なんて悲しいことでしょうか。社会の中で生きていく以上、誰もが誰かの力を借りています。それは恥ずかしいことでもなんでもなく、自分もまた誰かの役に立てば良くて、そうやって社会が形成されているのです。

私は自分の将来のためにファミサポのボランティアを始め、子育てに関する情報収集をしてきましたが、今後はそれらの情報を、必要だと思われる仲間にシェアしていきたいと思っています。そして、まずは自分のいる業界からシステムを変えていきたいです。誰しもが、子供を持つという素晴らしい選択の中に、不必要な不安を持たずに済むように。何かを諦めなくても子育てができるように。それは不可能なことではないはずです。

今、子育てをしているあなたが、もしも社会から取り残されたような寂しい思いをしたり、辛さを感じたり、自分が不甲斐ない、周りに申し訳ないなどと思っているとしたら、あなたは一切悪くありません。共働きの核家族という現代の家族観に追いついていない社会のシステムが悪いのです。

みんなの意識が変わり、アイディアを出し合えば、必ず社会は変わります。私は変えていきたい。例え自分は子供を持てなかったとしても。

『プラットフォームデザイン lab 』さんは、「舞台芸術と子育てを両方する上で、本当に必要な支援は何か」というテーマで活動なさっている団体でまさに私が求めていたものです。今後も活動をチェックしつつ、この輪が広がっていくことを心から願っています。

みんなが自分の人生において納得のいく選択ができますように。

まずは自分の人生から試してみたいと思います。

舞台美術家Tさんの一問一答インタビュー

対象者の紹介

舞台美術家Tさん(女性)、子供一人

ご自身が仕事で育児ができないとき、育児を誰に頼っていますか

配偶者・パートナー、シッター、 子供の同級生のご家族。宿泊を相談したり休日お互いに過ごしていただいてます。

配偶者・パートナーの仕事を教えてください

舞台監督・大学非常勤講師

家族内におけるご自身が担っている『育児』の割合はどの程度ですか?

基本二人で分担にはなっておらずどちらかに9割の負担がかかる状況でそれが、入れ替わりをするような状況です。私が0に近い状況もあります。

家族内におけるご自身が担っている『家事』の割合はどの程度ですか?

割合では出せませんが、食事の準備の割合は私の方が多いです。あとは6,と同じ状況です。

仕事の理由から、子どもを持つことに迷いや不安はありましたか?迷いや不安があったとお答えの方はその内容を教えてください

持つことに不安はありませんでしたが、持ってからの社会的な目線の方が私は気になりました。

妊娠がわかると、とある大きめのプロダクションから仕事を取り下げられることがありました。
20代の妊娠・出産だったこともあり、その点で非常に萎縮してしまいました。

子どもを持つことで舞台芸術活動との関わり方、仕事量に変化はありましたか?変化がありましたらその内容を教えてください

仕事量は少なくなりました。ただ、その分どの仕事を限られた「時間」の中で「選び」関わっていくかを判断することができるようになりました。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、困難を感じた経験はありますか?もしありましたら具体的に教えてください

身内やパートナーにお願いすることが難しい場合、子供をシッターさん等に預け入れる前後の時間や準備が通常より3倍くらい大変。劇場入りの際の食事の準備(休日・夏休みの場合3食、これを稽古期間や劇場入りの間毎日続ける)にかなりの体力とエネルギーを要する。私の睡眠時間も減る。食事のケアは手を抜くことも可能だが、子供の健康を考える上でそうもいかない。それが原因で体調を崩す可能性もある。あとはシッターさんは学習サポートは基本的にしてくれません。小学校に上がると宿題や学習サポートというものが入ってくるので、そのケアの時間を余裕を持って計画するのが難しい。塾や宅配弁当を取るという考え方もありますが、それは家庭内の経済的な余裕がある場合に実現できますが今の私の場合そうではありません。アウトソーシングできるかそうでないかで環境が変わるようことも多い気がします。

子育てと舞台芸術活動の両立が困難だと感じた時、どんな情報がほしかったですか?

家庭のサポートや家族のサポートが難しい場合の、アウトソーシングできる場や金銭的なサポート情報や窓口。食事のケアについての情報。メンタル、フィジカル共に自身のセルフケアの方法。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、どんな環境が理想的だと思われますか

依頼の際に参加条件(時間、クリエーションの進行、報酬)を協議できる環境。その上で行う適切な時間帯のプロダクションミーティング。稽古場の時間軸以外の創作の準備期間に余裕を持たせる仕組みとプロセスを、カンパニーや座組で模索できるようにする。

舞台芸術活動をしている方で、これから子どもを持ちたいと考えている方に対して、何かメッセージはありますか

この質問が一番難しく、昨年までだったらメッセージを送れるような言葉を発信できなかったと思います。ただ今子供向けの演目、育児や介護、ケアをモチーフにする創作現場や演劇演目に関わる機会をいただくことが増えました。

そうしたことに視点を落とすことで、自身を中心とした創作や仕事の満足度からそれを他者やどんな観客に届けたい、提供できるのかという創作に対するモチベーションがあがりました。子供を持つことで感じたのは、家庭や生活という視点から自分にとっての社会性や、他者と関わることの能動性にもダイレクトに繋がる可能性をより実感できるようになっているとも思います。

協力ありがとうございました!

子育て座談会~第一回スタッフ編~(前編)

子供を持ちながら仕事を続けるための悩み

原田 子育てと仕事を両立している方に繋がりがない状況で、子育てをされている先輩としてまみえさんにすごく助けられた経験があります。

今小学生のお子さんをお持ちのまみえさんが、子供を産んでからも仕事をしなきゃいけない、となったときに苦労されたことと、今そういう状況の方が困ってることって、だんだん変わってきてるんじゃないかと…また業界も少しずつ理解が進んできていることを体感されてきたのではないかと思うので、まみえさん自身の経験とあわせて、そのあたりも伺えたらいいなと思います。

まみえ そうですね、まず、心構えのことで言うと、私は不妊治療の年数がすごく長くて、5年くらいかな…もうあれやこれややって、3回流産したりとかいろいろある中で、まず演出部を、舞台監督をやりながら子供を持つことは正直無理だろうなって思いながら仕事をしたりしていて、その時期の方が考える時間が長かったというか…。

何て言うか、前もって何年も先の仕事を受けるじゃない?この職業。

それで、子供についてどのタイミングで言ったらいいかとか、やっぱり考えるんですよ。この先2年は仕事受けません、とかっていうのをやるか、やらないか…みたいなことをずっとモヤモヤやりながら考えて。

で、実際、早めに断って、やっぱり流産しちゃったんで仕事できます、みたいな逆のパターンもあったりとかで。

なので後半はもう、何も言わずにいて。で、妊娠が発覚してからも、ちょうど稽古中か仕込み直前ぐらいだったのかな、本番も1か月あるからつかなきゃいけないし、旅も行かなきゃいけないしだったんだけど、言わずにやりました。やっちゃいました(笑)。

ま、それで上手く行けば行くし、みたいな気持ちでやっていたなと。

あまり考えずにやってきたってさっきは言ったけども、悩む期間っていうのは事前にすごくあって、もちろん、妊娠中と出産後は、あ、もう絶対仕事できないなっていう、真っ白、みたいな気持ちではいました。絶対、現場にベタ付きでいなかったら成り立たないなとは思ってはいたので。

ただ、子供が理由で仕事ができないっていうのと、ケガや病気が理由でというのは同じで、

どちらかというとこの不安はフリーランスであることから来るのかなと思って。

自分が動かなかったら収入はゼロっていう不安はすごく押し寄せてきましたね。

そんなときに今の会社に入れてもらって、細々とだけど舞台の仕事を続けることができてます。

原田 同じような話題をプラットフォームのメンバーでも話したことがあって、子供を産むとか子供がいるっていうことに理解があるようで本当の意味ではそうでない人とだと、危ないから!子供を大事にしてね!って言って、こう…離職せざるを得ないような雰囲気になってしまうことがあるけれども、でも例えば、ケガしたときは照明だったら脚立の作業はできないけどオペレーションはできるよ、とか、違うことに振り分けてもらっている人がいるはずなのに、出産や子育てだと何か自分たちも遠慮してしまっていることがあるよね、という話もあったんですね。

まみえ 遠慮か…。遠慮ね。そうだね。そうだなぁ…私の周りには確かに同世代で同じ状況の人はあまりいなくて、唯一いたのが、美術家の中根聡子さんだった。うちより3つ上のお子さんがいて。彼女のやり方をいっぱい真似させてもらいました。シッターさんを使って現場に出るとか、現場に子供を連れて行くときにこういう準備をしたらいいとか、そういうことはいっぱい教わったというか、真似をしてやったりしてましたね。

子育て座談会~第一回スタッフ編~(後編)

双子の話題/保護者会と小1の壁

菊川あ、今帰ってきましたね。(奥様とお子さんが後ろを通過)

原田どちらからのお帰り?

菊川今日保育園で。保育園が近くに変わって、今慣らし保育中です。
(もう1人のお子さんと奥様が再度後ろを通過)

原田1人ずつ運ばれてる(笑)。

まみえ大変だあ。

ライトもう歩くの?

菊川歩きますね。何かにつかまってトトトッと歩いて、またつかまって、コケて、みたいな感じです。

松本いちばん大変な時期ですよね。目が離せない、危険がいっぱいで。

菊川そうですね。うちは双子なわけですけど、お子さんがおひとりの方、兄弟がいる方と比べて、双子っていうのはどれぐらい何が違って、何が大変とか楽とかっていうのが分からないですね。

まみえ双子の育児はコミュニティがありますよね。病院の中でもあったりしません?
やっぱりノウハウがあるんだろうなって。

菊川ありますね。親になってみると、意外に周りに双子が多くて。
改めて見回してみると、多いなと。双子って、なんかすごい希少なものだと思ってたんですけど、結構普通にいるんだな、みたいな。

松本私、前に子供の予防接種しに行ったとき、三つ子のお母さんとお父さんがいて。お母さんが3枚分予診票を書いてるのを見て、「あ、そうなるよね~…!」って。

菊川なんか、もう、卒倒してしまいます…。

松本ね~。大人が何人いても足りないと思う…。

中村私の子供の同級生に、保育園から一緒の双子の同級生がいるんですけど、あるとき、「保護者会が大変で…ちょっと手伝って?」って言われたんですね。「双子でクラスが離れちゃうと、両方行かなきゃいけないから、ごめんちょっと2組の方聞いといて」みたいな。
学校ごとの方針によるみたいですけど、たまたまうちの小学校は、双子の場合はクラスは離す、ってことみたいで、「そろそろ2組の係決め始まった」「ちょっとそこから行くね」とかって保護者会中にめちゃめちゃLINEしてたり。後でメモ渡してあげたりとか、やってました。

ライトそれ、中村さんみたいな人いなかったらどうするんですかね?

菊川学校側の対応としてはどうするのかって話ですよね。

中村そこのご家庭はなるべく夫婦で出るようにして、それぞれに顔を出していたけれど、この間はそれが難しくて。

原田まだ低学年だと、お父さんとお母さん両方出てるってことは、その間子供どうしてんのってことになるね。おばあちゃんち行くとか、そういうこと?

中村その間は終わるまで学童にいれるので、終わったら迎えに行くみたい。

原田未来の菊川さんはそうなるってことね。

ライト保護者会でいうと、学童の保護者会が、平日の夜7時からですってお知らせが来て、子供はできるだけ連れてこないでくださいって言われて。うち、夫は夜11時くらいまで帰ってこないので、基本的に平日の夜はワンオペなんです。

松本え、できない。

ライト結局、その日は夫が夜在宅勤務に切り替えて、事なきは得たんですけど、え、小学校ちょっとやばい、怖い、と。思ってもない壁がめちゃくちゃ出てくる。いろいろ、小1の壁にぶち当たってるので、そういうのは先に知ってるといいですよね。心構えがね。

菊川そうですよね。

まみえやっぱり、小さい赤ちゃん時代がいちばん楽。言ったら、仕事場に荷物のように持っていけるじゃない。
で、ちょっとスペース借りて、そこ転がしとけば稽古見てても大丈夫とか。隣の部屋で作業しながら声だけ聞くとか、そういうのもできるから。赤ちゃん時代は体にくっつけとけばどうにかなるなって感じで。
で、保育園は預けられる時間が長いじゃない。夜8時とかまで行ってるから、その辺でもういちばん仕事してて、で、小学校1年生になって、授業の終わりがえらい短くなって、急に動ける時間がめちゃくちゃ短くなって、土日も休みになっちゃうから、小1の壁はもう本当にそうだなって思う。

ライトもう…小1の壁がつらすぎて…。

まみえ小さいうちに働いとくといいですよ。もう持ってって。しょってって(笑)。