現場からの声 ―5日間のWSを終えて、“カイハツ”されたもの-
パショナリーアパショナーリア 町田マリー×高野ゆらこインタビュー
―WSの参加を終えてー
「子どもを産んでから演劇が全然できなかったのですが、今日は久しぶりに演劇をやっていると感じることができました。赤ちゃんや子どもを連れてきていいよ、と言ってもらえることはあっても、実際に行ってみて本当に安心できる環境であることは案外少なくて…。そんな中で今回は本当にそう思えて、温かい気持ちで過ごすことができました。まさに“カイハツ”って言葉がピッタリのプロジェクト。5日を共にしたみんなとまた一緒に何かを作れたら嬉しいですし、今後もコミュニケーションを取っていきたいと思いました」(日和佐美香さん)
「僕は自分でもワークショップを主催することがあるのですが、例えばシアターゲームをしてから本読みに入る時にフェーズが変わってしまったり、エチュードに入ると、妙な緊張で凝り固まったりと、現場の流れがシームレスにいかないもどかしさを感じることが多々ありました。でも、この5日間で、子どものいる創作の現場ではその壁がなくなる、ということを実感したんです。ここまでがゲームでここから先が台本という風に区切らなくてもいいし、その境目で生まれるものもあると感じました。体が自由に動かず介護を受けている人も、言葉の話せない赤ちゃんや子どもも、いつも何かを発信している。そんなことを改めて感じる時間でもありました」(石崎竜史さん)
「出産してから色んなことが閉鎖的になってしまい、演劇の現場からも離れて子ども中心の生活になっていました。そんな日々が長くなれば長くなるほどに、心も演劇から離れて劇場や稽古場に行くのが億劫になってしまって…。でも、今回のWSでは演劇の場を深めることを経験でき、とても楽しかったです。アトリエがまた素敵な場所で、ここでできたこともありがたかったです。これまでやったことのなかった、体を自由に動かすことのできない人を演じることで、人がそばに来てくれることの嬉しさや、ちょっとのやりとりの大事さなど多くの気づきや理解を得ることもできました。コミュニケーションを深めること、広げることにも繋がる体験でした」(和田瑠子さん)
「僕自身は子どもを育てているわけではないのですが、赤ちゃんや子どものいる演劇の空間や現場をとても豊かなものだと思っています。そのことを実感したのがまさにパショパショの演劇。舞台上に転がっている小道具のおもちゃを前列の子どもが実際に掴んでも、俳優がそれを無視するわけでもなく、しかし演劇や物語は進んでいって、大人からも思わず笑い声が上がる。その様子に感動をしました。演劇って、観る方もどこか緊張するけれど、子どもがいてくれることで大人に自由さが与えられているような…。そんな体験が新鮮でしたし、今日のWSからもその魅力が伝わってきました。こうした取り組みや機会がもっと広まってほしいと思います」(音楽/絢屋順矢さん)
「俳優二人と4ヶ月の子どもと家族みんなで参加できる。そんな機会自体がなかなかないので、とにかくみんなで飛び込んでみよう!と思って参加をしました。子どもと一緒に演劇の現場に行くのが初めてで最初は不安もあったのですが、いざ参加したら、むしろ自分が子どもの存在に助けてもらっているような…(笑)。そんな実感もありました。子どもがいなかったら、ここまで発言しやすいクリエーションはできていないかもしれないし、子どもを介した豊かなコミュニケーションもきっと生まれていない。そういう意味でもとても貴重な体験でした」(丙次さん)
「私は表現の現場から子どもが追い出されることに対して強い抵抗があり、出産後もあらゆる作戦を立て、国内外の現場に子連れで参加をしていました。それでも孤独感を感じたり、葛藤を覚えることはどうしても起きてしまう。ここ最近はそのことに疲れを覚え始めていた時期だったのですが、5日間のWSを通して、改めて今後の創作の場の在り方を考えることができました。一緒に参加した子どもがシアターゲームをすごく楽しんでいる様子を見て、私自身も初めて心からシアターゲームを楽しめました。子連れで活動する上では様々な悩みや迷いがあるけれど、あの子にとってはみんなでジャンプしただけで楽しかったんだ。そんな気持ちにもなり、自分の葛藤を変に解決せずに、今後も葛藤しながら考えていこうと思いました」(稲継美保さん)
「生後4ヶ月の子を連れての遠出は初めてだったので、まずアトリエへの行き帰りが大きな難関でした。ベビーカーを押しながらの人混みや階段は、思った以上に移動しづらくてひと苦労。WS中は、子どもが泣いたら抱っこしながら演技やゲームをするという親子そろって初めての経験でした。けれど、子どもがそばにいることで不思議と力が湧き、これまでにない表現が生まれたように感じました。おむつ替えや授乳の際には「いってらっしゃいー」と声をかけてもらえ、離席することへの申し訳なさを感じることもなく、参加者やスタッフの方が子どもを見てくださる時間もあり、とても心強かったです。子育て中でも家族で演劇の場に飛び込めたことが嬉しく、終わってみると達成感でいっぱい。家族の絆もぐっと強まったように感じました。」(島田桃依さん)
「演劇のWSやエチュードは、音楽を付ける前に見学させてもらう体験は多かったのですが、実際に音楽で参加させてもらったり、演技に関するゲームにも混ぜてもらったり、あらゆることが新鮮な体験でした。それより何より、こんなに楽しいお仕事を今までしたことがないってくらい、ずっと胸が躍っていました。どんな創作にも細胞分裂の初期衝動みたいなものが必要で、それらは覚束ない作業の連続なのかもしれない…。けれどKAATさんというお釈迦様の手のひらの上で、孫悟空になり切ってみる気概で挑んだところはありました。発見も堂々巡りもすべてアート、だって僕らは螺旋を内包する生物なんだって、ずっとそんなことを考えて自由な気持ちにでいられましたよ。」(音楽/青木慶則さん)

―KAAT「カイハツ」プロジェクトよりー
「5日間のWSでこんなドラマを見られるとは思っていなかったので、驚きました。『育児』や『介護』といった多くの人にとって身に迫る問題が描かれていて、様々なことを想像させてもらえる作品でした。『カイハツ』は必ずしも成果発表を伴うプロジェクトではないのですが、それでも上演に近づくビジョンが見える5日間であったことがひしひしと伝わってきました」
(KAAT神奈川芸術劇場芸術監督 長塚圭史さん)
「子どもが同じ空間にいることや赤ちゃんを見ながら進めること。通常の稽古ではなかなか使わない回路を使ってのWS、思いもよらぬことを思い出す素敵な創作の時間であり、ショーイングでした。『カイハツ』での体験を今後活用してもらえる可能性にも触れられました。今後も子どもがいる俳優のために劇場ができることを考えていきたいと改めて思いましたし、私自身も“新しい旅”をさせてもらったような気持ちです」
(KAAT神奈川芸術劇場プロデューサー 笛木園子さん)

