痛(いた)・気持ちよくゆらぐ
舞台美術家 中村友美
コラム

痛(いた)、気持ちよくゆらぐ

舞台美術家 中村友美

目次

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子育てと仕事の「両立」という言葉への疑問

 子育てと舞台芸術の両立ということについて考える時、私自身この「両立」ってなんだ!?となり今現在も振り回されっぱなしです。


 そして作品や人の話を聞くのは好きですが、自分の話を人にするのは正直苦手です。
…と言いつつ自身の考える「両立」について見つめ直す意味でこうしてアウトプットしてみようと思います。

(2025年10月現在)

海外への子連れ出張

ここ数年で思い出深いのは、娘が小学一年生の時の(2023年)1ヶ月ほどのワンオペ子連れ海外出張でした。 後にも先にもきっとこれからはなかなか実現が難しいだろうなとも思いつつ、プロダクションの皆様の寛容さと、現地での受け入れの方々の柔軟な対応で成立した機会でもありました。

この時の滞在はドイツ・フランクフルトで開催される演劇祭にて2演目作品の上演(そのうち1本は新作)。出国前、小学一年生の子供託児に困っていたところ、いろんな方々からの協力があり現地で日本人のキッズシッターの方を紹介していただきました。

日本で行政のショートステイ※やシッターさんに頼む機会はこれまでもありましたが、海外で探すのは少しハードルが高かったので紹介してもらった時はとても安心しました。
(今思う本当に奇跡だなと… )



ドイツでは最初の一週間は再演の仕込み〜リハからの本番となり、連日劇場に来ていただくような形でシッティングをしていただきました。夜遅い時間もあり、滞在先のアパートに連れて帰っていただきながらの保育となりました。

次の新作の演目は日本でもリハーサルも行なっていましたが、向こうの劇場の稽古場に入っての集中稽古は早い時間に終わることもあり、子供と過ごす時間も確保することができました。リハーサルの間はシッターさんには近隣の公園やプール施設、博物館等様々な施設に子供を連れて行ってくれました。
(子供の学校の学習はドリルや、もらった宿題を現場に入る前の朝にやっていました)

ユーロが高く親子共々連日弁当生活

帰国前の出国時には空港まで見送りに来てくださり、シッターさんのお力がなければこの長期完走することができませんでした。今でも大変感謝しています。

子供もよく最後まで体調も崩さず乗り切ってくれたと…

私と子供のタイムラインは当然違う

海外ツアーを経て、子供の成長と共に自分と子供のタイムラインが明確にあるのだということに気づきました。これまではどうしても親として「管理してなくては」という気持ちが大きいと感じていたところ、子供の意志を尊重して「手放す」ということを意識したいなと考えはじめました。

今年から学童保育も離れて早い帰宅を迎える状況が続き、保育園〜小学1.2年生の頃から更に状況が変化しました。平日の放課後や休日も最近は友達同士での約束も増え、その分友人間のトラブルもないとは言えません。

それでも子供が学校や習い事、それ以外の場で過ごしている時間を心配しつつ、想いを馳せるような日々です。

家族同士のケアの変化

我が家の場合は、子供が産まれてからは家族どちらかが家を空ける、を定期的に繰り返しています。
そのため、どちらかがワンオペの状態で仕事を家事をこなさなくてはいけない場合がほとんどです。

最近は夫が舞台監督として本番をやりながら、私が3週間海外ツアーで家を空けるという状況は思いの外、相手に負担がかかる結果となりました。
その中で、互いの育児のやり方や生活的な見えないケアに気付きづらい面やすれ違いもあったように思います。
それについては家族の生活や時間を見つめ直しながら、パフォーマンスを落とさない方法を模索中です。

娘もしっかり親に対しても意見を言ってくれるようになり心強いです。

私にとってもこうして子育てや仕事について言葉にして記す、出力する作業そのものが自身のセルフケアになるような気もしています。

娘とエンタメを楽しむ!

私と娘の楽しみはとにかく映画や舞台を見に行くことです。映画はアニメだけでなく洋画や実写映画も楽しめるようになり、月に2回ほどは一緒に映画館に行く日々です。 舞台は内容にもよりますが、最近は2時間のお芝居や海外のダンスカンパニーの作品も楽しく観劇できるようになってきました。

子供の生活の中の一つの選択としてお芝居やエンタメを楽しむことを選んでくれるのは嬉しく思います。

子供がいくつになっても正解のない子育てと仕事の「両立」の日々に翻弄されていますが、その「ゆらぎ」も痛(いた)、気持ちよく楽しむ、なんだかんだそれもまた心地いいのかもしれません。


※ショートステイ・子育て短期支援事業について

こども家庭庁https://www.cfa.go.jp/policies/kosodateshien/jido-short

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次回公演情報

【美術】贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』2025年国内ツアー

東京公演
11月7日(金)〜11月16日(日)@東京芸術劇場シアターイースト他、久留米、札幌公演