「はたらく劇場探検隊」を通して考えたことー劇場は子どもにも、働く親にも、開かれる場所になれるかー
「はたらく劇場探検隊」プロデューサー/一般社団法人ドリフターズ・インターナショナル代表理事 金森 香
子どもたちの姿に向き合い、一緒に探求する仕組みを
今年は、舞台作品の創作に演出部として参加することで、多くの職能の連携を感じてもらうというプログラムも実施した。当事業の共同プロデューサー長峰麻貴氏(職業:舞台美術家・大学教員)のアイデアで、小道具の操作だったり、養生シートを波にしたり山にしたり風にしたり、一つの素材が表情や役割を変えることや、自分の手捌き一つで効果が大きく変わることも実感してもらえるようにと、道具や装置が用意されていった。体験から学びや気づきを立ち上げていくための舞台である。




多様な子どもの姿に向き合う
それから、全体通して座学的な時間を減らすようにも努めた。特にバックステージツアーでは、大人が知っていることを子どもに教えるという形式ではなく、一緒に探検しよう!という目線で、これはなんだろう?この人はなんの仕事だろう?と宝探し的な要素も入れて、自らの発見体験になるよう、クエストしながら進められるようにした。この辺りは前述の佐藤氏の発案だ。

佐藤恵氏も私も、現在小学生の子どもを育てている境遇にある同志であるが、子どもの発達は定型もあれば不定型もあり、間には無数の個性やグラデーションがある、ということを身をもって実感している日々である。また、学校教育の管理から外れる子どもたちが各地で居場所を失っていることはここで説明するまでもない大きな社会課題であるが、劇場の扉は彼らにも開かれていてほしいと切に願う。というか、その扉を開くのは私たちの仕事だ、とも思っている。
私たちの仕事と働き方について考える
ちなみに、私は幼少期に親が劇団員だったので、舞台裏の大人たちのリアルな姿と舞台上のファンタジーの飛距離みたいなものに魅了されて育ち、それが一生の支えとなっているタイプの人間である。その時の心の震えを、どうすればプログラムの中で再現できるだろうか。それを考えたことは、この企画の出発点の一つだった。色々やってみた結果、劇場で働く人たちは、それぞれ自分の仕事のマニアックな“推しポイント”を持っているのだ、という発見もあった。みんな好きでこの仕事をしているんだものね、そりゃそうだ。もしかして舞台人の数だけ職業体験のプログラムは生まれるんじゃないかとも思う。それは素敵なことだ。

同時に、自分たちが魅了された世界は前の時代の風景であり、現在そして未来に繋がっていく景色は変わっていくべきだという話もでた。憧れの記憶は色褪せない。けれど、働き方や指導方法、子育てとの両立など、見直すべきことは少なくない。でもきっと、そこから新しい可能性を感じられるはずだとも思う。
そして最後に。これを書きながら、打ち合わせの日にすっかり興奮して落ち着きなく走り回っている子どもを、好きなだけ劇場で走らせてくださった茅野市民館での出来事を思い出す。それは、誰しもに開かれてゆくこれからの劇場のあるべき姿のようだった。やっぱり劇場に働く人が、劇場が、私はこれまでも、これからも、大好きだ。そしてこのバトンを繋いで行きたいと思う。子どもたちに向き合いながら、照射される私たちの働き方を見つめ直しながら。
参考リンク:「はたらく劇場探検隊」イベントレポート(Drifters International のnoteへhttps://note.com/qwsdrifters)

