子育て座談会~俳優編①~(前編)
子育てを続けながら俳優を続けることについて
座談会

子育て座談会~俳優編①~(前編)

子育てを続けながら俳優を続けることについて

目次

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4.それぞれの立場/スケジュールとクリエーション

松本 前に座談会やったときに女性の俳優さんが、「母親になった途端オファーが減った。『お母さんだから大変だよね』って勝手に遠慮されちゃって声がかからなくなった」って言っていたんですね。一方、これは前にカブトムシさんが言っていたんですが、逆に男性の俳優さんに子供ができた場合は、「子ども産まれたんでしょ、じゃあ頑張って仕事しなきゃね」って感じでオファーが増える現象があるという。

あっこ あ~、本当だね。

松本 「お母さんになったから仕事じゃなくて育児やろうね」と周りから言われているようで、俳優としてすごく辛かった、だから私は「私今も仕事やってるよ!オファーしてね!」って声を大にして言っているんです、ってその女性の俳優さんは言っていたんですね。

仕事やりたいっていう気持ちは本当に尊重されるべきだなって、今の話聞いてて思いました、すごく。

カブトムシさんは、夫婦で俳優ってところで大変だなってことはあります?

カブトムシ 子供が生まれる前は良い理解者・相談者だけど、今はなんか、向こうが芝居でイキイキしてるとイラっとしちゃう(笑)。いいな~、みたいな(笑)。
ま、それはうちだけなのかもしれないけど。頑張ってくれてるのはありがたいし。

でもやっぱり、相手が旅公演とかついちゃうと、完全にその期間私は自由がないというか、何が来ても断るしかない、ってなるのが嫌だなと思って。ぶっちゃけると子供生まれた男性に旅公演振らないで欲しい。東京公演だけの方が頑張れるなとか。

あと、やっぱり稽古がね、午後1時から夜7時までとかが多いから、子供を朝送ってもらえるのはありがたいけど、夜迎えに行ってから自分ひとりっていうのは、けっこうしんどかったりするかな。稽古、10時4時とかだったら最高ですよね。

松本 稽古時間、夜間が多いのはね、変わらないですよね。なかなか。何の都合なのか…。

ライト おもちさんのときって、稽古、夕方4時に終わってましたっけ。

おもち そうですね。

ライト 11時から16時とかでやってましたよね。子育てしている人シフト。
でも、そのせいでやりづらい人もいるのかな? 子供いない人で。

おもち なんか、そういう空気はほんのり感じてました。これ、めっちゃ助かるけど、他の人はどうなんだろう? って。みんな言わなかったけど…「朝早い~…」みたいな。

ライト 子育てしてる人のことばっかりを考えても、きっと何かに歪みが出ちゃうんだろうね。劇団の主催やってる友達は、子育てしてる人に演劇参加してほしいけど、自分は演出家としての頭が働くのが午後1時以降じゃないと無理だから、11時から稽古はしない、ごめん、って言われたことあります(笑)。でもそれはお互いさまで、無理なものは無理、っていうのは互いに認めていかないとおかしくなっちゃうと思うんですよ。
そこで、じゃあ子育てしてる人だけで演劇やればいいじゃんってことにもならないと思うので。なんかこう、うまく相談したらいいんだと思うんですよね。午前中からやる日もあったり、夜がいい人はそのままで…でも、そうやって稽古スケジュールで調整すると、演出助手が死んじゃうんですけど。

松本 確かに、稽古って、台本のことしかやらないけど、それよりも前に、クリエーションのことについて話す機会があるといいですよね。プロジェクトが立ち上がると、制作がスケジュール組んで、そこから考えてみたいなパターンが多いと思うんですけど、いいクリエーションをするにはどういうスケジュールを立てられるかってことを、全員が話し合える時間があるといい。結論出ないかもしれないし、全員が気持ちよくできる条件って無いかもしれないけど、それでも、自分の意見が反映されること・検討されることって、たぶんすごく大事ですね。………………難しいのかな。

ライト 難しい。…いや、いや、でもそれが本当は、今の演劇事情に欠けているけど、実は大事なことだったりもする。
役者さんってそういうのを話す機会って、無いんですか? 最初に。稽古時間について。

あっこ 制作と演出家と…まあ密には話すんですけど、演出家は稽古初日開けたらほとんどそういう相談ってしないじゃないですか。そうすると、委託された制作さんに話すんですけど、「大丈夫かな? 私スケジュール合ってるかな?」って、なんか怖くなったっていうか、ふわっとしたときはありましたね。相談してた人がいなくなるっていうか、誰に話したらいいんだろう、みたいな。自分でやらなきゃっていうところなんですけど。

ライト こんなに毎回一緒に仕事してるけど、役者さんのことって知らないこと多いなって思っちゃう。稽古日程とかって、どんくらい相談しながらやってるのか知らなかったなって、今急に気がつきました。
スタッフは割と、全ての通しが直前で夜にしかやらないみたいな、「あ、平日夜しか稽古しないですか?」って団体とかあって、マジっすか…どうしようかな…ってのが後から分かって、でも役者さんの都合だから、ある程度は吞むしかないなって思いながらずっとやってるんですけど、役者さんも時間の希望が通ってないとしたら、誰の希望だ? って気持ちです。

カブトムシ 全然子供ができる前ですけど、スケジュールの相談とかって、したことがなかったです。この期間空けといて、全部受け身というか、来るスケジュールで稽古するみたいな感じだったから、自分の希望とか言うタイミングって、知らないな…っていう。

松本 出せた方がありがたいわけですよね?

カブトムシ 今はもう、そう。うん。

ライト てか、出せないとやれないですよね。ある程度は。この日だけは夜までなんとかします、みたいなのをピンポイントで決めていかないと、この期間全部空けといて~は、もう不可能じゃないですか?

松本 カブトムシさんは来年公演に出るわけですけど、スケジュールはどうなんですか?

カブトムシ まだその話し合いは出てないけど、企画者がコミュニケーションをしっかり取ってくれる方だし、子育てしてる人も何人かいるので、相談はしやすい環境ですね。窓口はウェルカムな感じで。それは少し安心かな。

松本 座組によるんですね。環境というか。

カブトムシ うん、でも、稽古場に子供連れてくるのは絶対NGだと思うし。もう旦那さんに全部預けられる状況を作ろうかなと思って。

松本 あっこさんが公演してたときは、保育園から呼び出しとか、そういうのはありました?

あっこ えっと、保育園で何か感染症が出た時点で、もう私は保育園に行かせなかったです。
だから、呼び出しは1回も無かったですね。もう今日は連れて行きます、って感じで、稽古場に連れてっちゃってました。

おもち 子供がずっと元気でいる保証も無いですもんね。私が出演してたときも、公演中に共演者のお子さんの体調が崩れちゃって、病児保育だ…ってなってましたね。
そういうことも込みでやっぱり考えなきゃいけないよねって。本番当日の朝めっちゃ早くから病児保育にずっと電話してて、繋がってくれ繋がってくれと陰でずっと願いながら見てましたけど。

あっこ ちっちゃいときの方がね、大変ですよね。
私、子供が生後2か月くらいのとき、岐阜に企画があって行ったんですよ。家族で車で行って、ずっと旦那が子供を見ながら、私が3日間ワークショップやって帰ってくるっていうのだったんですけど、その後全員コロナになるっていう(笑)。

ライト たいへん…!

あっこ 大変いい経験でした(笑)。

おもち よくぞご無事で…。

あっこ そのときはね、市民参加者の中に保育士の方がいて、楽屋別に取ってもらって、もうがっつり見てもらいましたね。

構成・編集 安齋里美

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