ママさんコーラス演劇「うたうははごころ」です。
うたうははごころ 俳優 稲毛礼子
コラム

ママさんコーラス演劇「うたうははごころ」です。 

うたうははごころ 俳優 稲毛礼子

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こんにちは!ママさんコーラス演劇「うたうははごころ」です!(ポーズ)(いつもこんな風に始まります) 

うたうははごころは、母になった女優たちが子どもたちを引き連れて、楽しい大騒ぎをしているグループです。2017年代表の菊川朝子の呼びかけで始まり、いろんな場所で子どもと共に、ライブやイベントを行ってきました。私はうたうははごころで俳優の他、企画や制作などマネジメント面も担当しています、稲毛礼子と申します。 

  

うたうははごころとは?と聞かれたとき、いつも以下のような紹介文を書いています。 

『うたうははごころは、女優たちが出産し母となり、子育てや社会の壁に直面。「これを演劇に」と集まってできた演劇サークルです。育児中の愛や悲しみや願望や疲労をコーラスにした、オリジナルソング「愛の育児讃歌」を、女性たちの自意識がぶつかり合う「ママさんコーラスの発表会」としてお送りするママさんコーラス演劇。 稽古も本番も子どもたちと一緒。 子どもが泣く叫ぶ走る登るその全てがパフォーマンス!』 

  

私たち母になった俳優がぶつかる壁。そりゃあいろいろあるのですが、演劇の面でいえば、「創作活動の場を失うこと」であったと思います。 

出産前の、かつて自分の通った現場の人たちが「いつでも戻っておいで」と言ってくれてるのは知っている。私もそのつもりだった。娘が東日本大震災の年に生まれ、私が舞台に復帰したのは娘2歳の時のことでしたが、まあ無理だった。心が折れた、というより砕かれました。何度も「万事休す!」事態に陥り、今思い出しても口の中に血の味がよみがえるくらい、いつもジャリジャリした何かを噛んでいました。こんな状態では現場になんか戻れない。「子どもを連れてきたら?」と声をかけていただくこともあるけれど、無理無理無理無理!(実際はやむを得ず子どもをつれて現場に行くことありました。各現場のみなさんありがとうございました!) 

どんな過酷な現場だって、「根性みせろよ」と言われて乗り切ってきた世代の俳優なので、根性だせば「ママ女優」くらいなれるんだろうと思っていた。なれなかった。仕事も子育てもバリっとこなしちゃうあれはどこかの”スーパーウーマン”の所業で、私は”スーパーウーマン”じゃなかった。 

  

俳優としての参加だけでなく、ただ演劇をみること自体も難しくなってくる。子どもと一緒に見られるもの、子どもが飽きずに過ごせる、怖くない場所。車を2時間運転して演劇を観に行って、娘の「怖い」が出て会場に入れず、公園で滑り台を滑って帰ったこともあります。ああこれも無理か。 

いつしか「子ども向け」の演劇・アート・テレビ番組を自分の鑑賞体験にするようになる。 

児童館で子どもとおもちゃにまみれながら、職員さんががんばって演じてくださるペープサート(有名無名のキャラクター入り乱れる紙人形劇)を鑑賞して、「あれ、自分は何してるのかな」って思う。(職員さんいつもありがとうございます。) 

  

自分は演劇から遠く離れたところに来てしまった。 

  

もちろん、各劇場さん鑑賞団体さんが、託児サービスや、キッズシネマ、リラックスパフォーマンスなど、鑑賞者に向けて、ハードルを下げるインクルーシブな取り組みを行っているのは知っています。(全部使ってます!ありがとうございます!) 

でも私たちが叶えたいのは、創作現場がインクルーシブであること。子どもを連れて来られる稽古場。子どもがしゃべっても走ってもいい安心できる本番。そして私たちが面白い舞台。あのペープサートはもっと面白くできる。 

  

出産前の私は、ライフタイムの全てを演劇に捧げて生きていました。 

捧げるべきライフタイムを失ったとき、演劇も失なわれるのか。 

そんなわけなくない? 

演劇は「捧げるもの」ではなくて、「ライフ」そのものになった。 

  

子どものいる稽古場っていうのは、本当にすごい喧噪の中で行われるのですが、その喧噪ごとライフごと舞台に持ち込みたい。私たちのライフとお客さまのライフも持ち込んでもらって、その全部を「演劇」としてみせたい。 

うたうははごころとしての発表の場を求めて「子育て支援」だったり「地域活性」だったり、いろいろに言い換えてやってきたけれど、「演劇」として見てもらうには、やっぱり劇場で!やりたい!やらせてほしい! 

  

そんなことを願っていたら、本当に劇場でやらせてもらえることになりました。 

東京芸術劇場で行われる舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」にて、うたうははごころ公演「劇場版☆歌え!踊れ!育て!ははごころの庭~子供服は輪廻です~」を上演します。 

芸術祭さんと知恵を絞り、出演者も鑑賞者も、当事者だって第三者だってない交ぜにしちゃうカオスな場を制作中。こんなこと劇場でできるの?をたくさん詰め込んでいます。 

ぜひ多くの方に足を運んでいただいて、どうかこのカオスに加担してほしい。 

  

今は子どもが中2になり、手が離れ、、、ない!全然離れない!!聞いてた話と違う!!未だ子どもの世話を焼きバトルをしながら創作する日々です。早々に「手が離れて」なんて日はやってこないし、その間創作をどこかの”スーパーウーマン”にお任せしている場合ではない。そもそも”スーパーウーマン”とは幻想なんじゃないかと今は思っていて、みんな黙って歯をくいしばって、その時が過ぎるのを待っているだけなのだろう思う。 

黙ってられないし、黙ってない方が、誰かのためにもなるんじゃないかな? 

黙ってないで朗らかに、そちこちにいる仲間と手を携えて、歌い続けていけたらなあと思っています。 

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次回公演情報

舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」

うたうははごころ公演「劇場版☆歌え!踊れ!育て!ははごころの庭~子供服は輪廻です~」

2025年10月25日(土)〜10月26日(日)
東京芸術劇場 シアターウエスト