子育て座談会~第一回スタッフ編~(前編)
舞台スタッフの仕事と子育てをどう両立していくのか
目次
子育てにかかるお金と「会社」をうまく使うこと
ライト子供を毎日小学校の前まで送り迎えするんですけど、よく一緒になる同じマンションのお父さんがいて、毎回行きも帰りも学童のお迎えもお父さんが来るんです。それでちょっと話すようになって、「全部お父さんが行くんですね」ってポロッと言ったら、「こうやって子供と一緒にいる時間なんてあとちょっとしかないのに、その時間を過ごせないのはもったいないじゃないですか」って普通に言われて衝撃受けちゃって。一般企業の方なんですよ。「僕の会社、普通に男も育休取りますし、今は小学校に入学して、ある程度リズムが整うまでとおもって朝会社に少し遅れていくっていう申請を2ヶ月分申請出して、通ってるんです」って。
なんか、「あ~、時代が進んでるな~」って、すごい実感しちゃって。頭では分かってるけど、再現してる人を目の前で見たなって感じました。
それと同時に、会社員の方って、子供のために仕事の時間を減らしても、制度を使って収入を減らさないようにしているからこういうことができているのかもっていうのもボディブローのように感じてしまって…。
私も照明会社で働いてるんですけど、会社員とは言っても、自分が働かないと会社にお金は入らないわけです。フリーの人はもちろん仕事しないとその分、自分にお金は入らない。
子育て、お金がかかるわーっていうのも実感してるんですよ。だから、働くのって、なんて難しいんだっていう。
ほんと終着点のないことを話しちゃうんですけど、でもそこは、この業界で子育てと仕事を両立していくときに直面してしまうことだろうな、とは若干思っていて。
別に、舞台業界だって大きい会社はあるわけで、そういうところは育休制度とか、いろいろ使ったら収入をほとんど減らさないまま育児に専念することができるのかもしれないけど、現状、周りを見渡すと、自分と同じようなフィールドで働いているのはやっぱりフリーだったりする人が多いので、収入を維持したまま子育ても頑張るって、すごいハードだなっていうのを思いました。
まみえやっぱりさ、会社を大きくしないといろんなことはできないんだよね。
老舗の劇団とかは今、完全週休2日になってて、日曜日は仕事しないでみんな定時に帰りますってことが、やれるのよ。やれるわけないじゃないってみんな思ってたけど、やれる。
で、それにはすごくたくさんの人と、組織が必要で。
フリーの人がなんでできないかって、やっぱり1人ぼっちだからできないのよね。
もうほんと、みんなでどうにか大きい会社にしたらいいさ!って、ずっと思ってる。
そうすると、別に自分が現場にいなくても…
ライトさんところは給料って歩合?会社だけど。
ライト私は会社のバックオフィス作業の全般を請け負っていることもあって現場には満足には出れてないものの月収になっています。
まみえそう、私だって、言ったらそんなに働いてないんだよ。他の若い子たちがせっせと現場に出て頑張ってるお金でどうにか養ってもらってる(笑)。
ライト私もそんな感じです(笑)。
まみえね、だけど、もう、それは開き直って、自分に価値があるって思うしかないから。所属してることに意味がある、って。現場行かないけど、もう、いるってことで良しとしてくれ!みたいに思うしかないから。
ライトそう…そこは5年後に会社に還元しようと思って今やってます。
まみえ業界のニーズがどんどん減ってるから、やってかないとダメなのかもよ。
若い子が入ってくるのが減ってきてるから、やらなきゃいけないと思う。
やめちゃった人もいくらだってスッと帰ってこれる業界だから、普通にやめた人もやりたくなったらまた戻ってくれば、すぐできるようになるし。
なんかみんな、他の仕事ができないからこの業界にいるみたいなところあるじゃない?
ライト(笑いながらうんうん頷く)
まみえ転職考えたでしょ?みんな。コロナで。
でも、他の仕事の応募条件見たら「あれ、スキル1個もないな?」って(笑)。
やっぱ、他にやれることが無いから、この業界にいるのだよ。
やめれたんならハッピーだよ。やめれて。本当、物事をやめるって大変じゃない。
その決断をしたこととさ、今どっか社会で何かやってるんだろうけど、それは素晴らしいなって思っちゃって。
やめなきゃいけないからやめてるわけでもないんなら、それはもう、選ばれしものがやめていけたんだなって。
やめれないもん、もう。ガムテ貼るしかないないのよ(笑)。
ライト本当それは思います。もう無理~。照明取られたら私、何が残るんだろうって。
まみえそうでしょー? だからさ、やるしかないのよ。悲しいかな。
でもね、私今日皆さん初めましてで、いっぱい同じ人いるじゃんって気持ちですごく嬉しい。とても嬉しいです。全然ジャンル違うけど、仲間がいっぱいいるんだって思うと、これが普通になってるだけで素晴らしいよねって。ありがとうございます。別に締めてるわけじゃないんだけど、今、感謝の気持ちが生えてきました(笑)。サボってた自分をいいかって思えて(笑)。
原田みんなまみえさんとこに入れてもらった方がいいかもしれない。
まみえいや、本当にね。利用してください。みんな入ってもらって。他の会社とかもみんな合併したいんだよね。
ライトうん、でも本当に、会社のメリットっていうのはやっぱりあるなと思います。
なんだかんだ育休手当がもらえたり、そういう社会保障の部分とか。いろいろなことを当たり前のように会社の人に相談できるようになって、フリーじゃできなかったなって思う部分はいっぱいあって。
会社の制度っていうのを、この業界にもうちょっと広げたらいいなと…
まみえそうね、自分が病気したときとかもさ、子育てにだけに限らず、保険も使えるし。
ライトそう、そう、そう。
みんなが上手に舞台の仕事をやっていくために、一つの選択肢であることは間違いないと思うんですよね。
会社ってひとことで言ったってまあいろいろな形や思いがあるので、一括りにはできないのはわかってるんですけど。会社だから大変だってこともたくさんありますし。
まみえ大変ですよね。ね、社長(笑)。
菊川そうですねぇ。社長って雇用保険の枠外ですからねぇ。
育休取れないんだって知ったときに、なんで会社やってんだろうって思いましたからね(笑)。
まみえ会社からは固定給でもらっているんだけど、フリーランスで長くやっていると手取りの少なさにびっくりしますね。
フリーで好きなように仕事をするか、会社に所属していることをうまく使うか、どちらもメリットデメリットがあるよね。
ライトそのあたりの情報が、若いうちに得られないこともちょっと残念だなって思って。
フリーランスの大変なところを、いざ子育てみたいなタイミングに実感しちゃうのは、業界にとって残念だなという気持ちがふんわりとあります。
まみえ若い子でフリーの子って、あんまりもういなくない?
松本そうなんですか?
菊川いないです。今みんなまず就職するんですよね。
まみえ最初っからフリーってもうめったにいないよね。
松本それって、セクションによりますか?
原田美術家はフリーの人多いんじゃないかな。自分で会社にしてるか、フリー。
まみえみんな大変なのになぁ…って思うよ。
原田私も誘われたことはあるんですけど、さっきの、手取りが減るなっていうのが…。
そのときは、会社に入って自分が何を享受できるのか、ってことが理解できてなかったから、ジャッジできなかった。
今は、団体職員になったことですごく享受してることがあるけれど、そういう、組織にいることで得られるものと、組織にいない方が保てること、それぞれのメリット・デメリットが、若いときにあんまり示されたことが無かったなと。
松本若いうちはいいんですよね。本当に。
原田うん。若さね。
松本最近、親族に不幸があったり、子供が立て続けに病気になって入院したりみたいなことで、結構、家族のことで自分の身動きが取れないってことになったんですね。
あ、これが家族を作るということか…としみじみ思ったんですけど、自分のことではなく、家族のことで自分が動けなくなるっていうのが、若いうちには分からないですね。
独身で、若くて、元気で、バリバリ働ける、自由に時間が使える、ってなったら、それはやっぱりフリーの方がきっとどんどん働けると思う。
でも、30代40代になって家族ができてってなってくると、全然環境が変わるんだなっていうのを感じたときに、私今パートで働いてるんですけど、その会社は年間で有休13日くれて、さらに夏季休暇もあって、忌引のときも有休にしてくれて、もうなんか、働いててよかったー!って。
子供が病気になれば看護休暇くれるし。こんなに違うんだ~…っていうのをひしひしと感じました。これがフリーで働いてる状況だったら、私はもう精神的にやられてたな、と思って。
まみえやられるよね。お金が無いって、やっぱりなんか、クるよね。
松本そうなんです、本当に…。
生きてる限りお金はかかってくるので、そこで自分がお金を捻出できないと、なんか「生きてちゃダメなのかな…」みたいな、極端に言うと、それぐらいまで落ち込んじゃうんですよね、本当に。
…そこが救済できるといいです。うん。
ライト菊川さんは、従業員の方が子供生まれたらー、とかも考えなきゃいけないわけよね。
菊川そうですね。まあ、十分考えた上で会社にはしたんで、いろいろ調べてます。
そこで知ったのは、育休手当って会社が出すわけじゃないんだ、とか。
ライトそう、その誤解ってわりとみんな持ってる気がする。育休手当を負担するのは会社だって。
菊川僕は本当に、調べるまでそう思ってましたね。だから、大企業しかできないじゃんって思ってたけど、あ、違うんだ。保険なんだねって。
保険のありがたみと言うか、強さっていうのは、知らない人多いんじゃないかな。
自分が、子供生まれてからもそうですけど、正直、想像力では補えないんですよね。
調べて自分で知らないといけなかったり、体験しないと分からなくて。他人のを見て想像してっていうのはもう、限度があるなと。こんなに大変なんだ、って思いました。
編集・構成 安齋里美
