小1の壁のこと
照明家 小林愛子
今となりで小学校1年生の女の子が宿題をやっている。
もうすぐ2年生になるんだなと少し感慨に浸る。
小1の壁はとても高かった。
でも1年経って、わが家の壁の正体が少し見えてきたのでそのことを書こうと思う。
小1の壁といったけど、そもそも舞台の仕事と子育ての両立はいつだって大変だった。
子どもが生まれる前も後も、私は照明の仕事をしていて、出産後もなんとか仕事を続けてきた。
我が家では娘が1歳のときから保育園に預け、私も仕事をしていた。
舞台の仕事は「17時にきっちり終わる」というわけにはいかない。
照明の仕事はざっくり言えば、演目に合わせてデザインをする作業と、本番の操作に分かれる。
子どもが生まれてからは本番の操作は人に任せ、私はデザインだけを担当する体制に変えた。
それでも、劇場入りすれば初日が開くまでは22時までは劇場にいなければならない。
娘は1歳で、コロナ禍の真っただ中の2020年8月に保育園へ入園した。
認可の私立保育園で、延長保育を利用すれば最大20時15分までのお迎えが可能。結局その時間まで預けたことはなかったけれど、延長可能というのはこちらの気持ちを楽にしてくれた。 もちろんそれだけでは22時までは働けないけれど、毎日のことではないから、夫とやりくりしたり、友人にお願いしたりしながら、なんとか乗り切ってきた。
今振り返れば、 1歳の娘は、こちらの都合に合わせるしかなかった。
何もわからないまま保育園に通うことになり、毎日を楽しみ、いつしか保育園に通うことは当たり前になった。
保育園に行きたくないと泣くこともあったけれど、あの頃の娘はまだ軽く、抱き上げて連れて行くことができた。
地方公演のときには、娘を保育園ごと休ませて連れて行って問題なかった。
実家の近くで仕事があるときには、娘を祖父母に預けて私は安心して仕事をした。
また、どうしても保育園に行きたくないという日には、親側の都合がつけば「じゃあ今日は休んじゃおっか」と柔軟に対応することも可能だった。
もちろん当時も、保育園に預けながら働くのは大変だったけれど、
保育園は、「親が就労するために子どもを預かってもらう場所」であり、
親の都合を子どもに合わせてもらいながらなんとか乗り越えてきたのだ。
かたや小学校。
小学校への入学と同時に、学童クラブも決まった。
延長利用をすれば19時まで預けられる。
時間こそ保育園より短くなったけれど、基本的に18時までは学童にいてくれる。
入学する前「小1の壁」とよく聞くけれど、具体的にどうなるのかいまいちわかっていなかった。
けれど、小学校に入ってしばらく経つと、なんとなくわかってきた。
保育園は「親が子どもを預ける場所」だった。
小学校は「子どもが通うべき場所」で、親はそのサポートをする。
概念がまったく違うのだ。
保育園の登園時間は親の都合に合わせられた。(7:30〜9:00の間に登園すればOK。この辺りは園による)
小学校は8:00〜8:15の間に登校する。しかも「自分で」行くことが前提だ。
娘の小学校には登校班とかは特になく、必要に応じて親が付き添うスタイル。
私は、しばらくの間、毎日一緒に登校していた。
「一人で行ってみる?」と声をかけても、「まだ無理」「7歳になったら」「2年生になったら」
付き添って学校まで送って時計を見ればもう8時15分。
ぐずったりトラブルがあれば8時半近くになり、そうなれば、劇場の9時入りには間に合わない。
帰宅時間というところでも
保育園時代は、クラスの友達の家庭はみな共働きでお迎えは大体18時15分のギリギリ。
早めに迎えに行く家庭は少なかった。
でも小学校は違う。
学童に行かない子もいるし、学童に行ってる子でも17時にみんなで学童から帰る子も、延長の子もいる。娘の通う学童は17時以降が延長で、延長であればお迎えが必要という決まりになっている。
(17時〜18時が無料の延長、18時〜19時が有料の延長)
仕事が終わってから迎えに行くから、だいたい延長でお迎え。
けれど、本当はお迎え一辺倒ではなくて17時にみんなで帰るという帰り方もさせたいし、延長だとしても1秒でも早く迎えに行ってあげたい。
娘も本当は延長はいやで、みんなと帰りたい。
親の都合で学校を休ませることも難しい。
これにより、18時や19時という時間にお迎えに行けないから現場に同行させる。地方公演に連れていく。私の実家に預かってもらう。という回避技は使えなくなった。
朝、強く言って一人で学校に行かせることも、
帰り、学童に延長で残らせて19時近くにお迎えに行くことも
別にできなくはない。
本当にのっぴきならないことならば学校を休ませることだって不可能ではない。
でもできれば、無理やり何かをさせたくないし、諦めさせたくない。
なにより保育園の頃より、娘は自分の気持ちがはっきりしてきている。
「こうしたい」「こうしてほしい」「これは嫌だ」
気持ちをわかってほしいという想いが強くなってきた。
意固地になられてしまったら、無理に何かをさせるのは難しい。
ちなみに夫はどうしているかといえば、ちゃんと一緒に頑張ってくれている。
でも、「どうしてもお母さんじゃないとダメ」と泣かれることもある。
それはやっぱり、平日の夜は基本的に私が面倒を見ていて、娘と一緒にいる時間が圧倒的に長いからだと思う。
正直、母は仕事にならない。

