特集座談会① 後編
制作者の声から考える子育てと演劇
目次
子育てをする演劇人の居場所をつくれれば
半田 下北沢に託児所があるといいですよね。こんなに劇場がたくさんあるなかで、劇団がそれぞれ託児を用意するのは段取りと予算がかなりかかる。託児サービスを依頼する費用が1日5万円とすると、2回の託児で10万円になる。もしひとつの場所があれば……
北澤 ライブハウスの人も使える!
小林 それは最初からずっと作りたいんです。現実的にはクリアしなければいけない課題が多すぎるんですが、誰でも自由に使えて託児もできるスペースが下北沢にあれば最高ですね。託児所じゃなくても、観劇中に友達に子どもを預けて2時間すごしてもらえる場所が劇場の近くにあればいい。公共劇場だとキッズスペースがあるところもあるけど、下北沢というか東京にはそういう場所がない。
半田 大人同士のための場所もあるといいですよね。最近、演劇にかぎらず、居場所作りに興味を持っているんです。というのもこのあいだ実家に帰った時に、居場所作りに対して市からお金が出ていて、高齢者や孤独を感じている人たちのために公民館に集まってお話をしながら、お祭りの準備をしたり、パエリアを作って食べたりしましょうという試みがありました。これは大事だなと。たとえば、演劇人が集まって「子育てのこと」「演劇の経済のこと」のようにテーマを決めておしゃべりする場があればいいな。
露木 先日、オランダ発祥の『リペアカフェ』の映画を観ました。人々は思い出のある古びた服、壊れた家電などを持ち込み、地域のボランティアがそれらを無償で修理します。ただおしゃべりをしたり、コーヒーを飲みたい人も集まる。オランダでは、サーキュラーエコノミーの実践として、居場所支援として政府から助成金が出て運営されていると聞きました。
小林 ドイツなんかで舞台の小道具やお客さんが持ってきたものをリペアして、「これはどうして壊れたのか」といったエピソードを添えて売るみたいな話を聞いたことがあります。日本でも、演劇にかかわる人と、子育ての物々交換とかもできたらいいですよね。地域の支援センターや子育て広場のような場所にはものすごく救われたし楽しかったけど、演劇の人と喋るのとはやっぱり違う。共通の言葉や背景をもった人と話すのは、ものすごく楽しい!
チームが働きやすくなるために
露木 私の印象に残ったのは、自分の置かれている状況を伝えること、要望を伝えることについて、「わがままなのでは」という不安があることについてです。スタッフにしろ、俳優にしろ、そうした不安があるのかなと推測しています。私たちみんなが安心して自分のことを話せるような、対話的な空間が演劇現場に生まれることが大切なように思いました。どうしたらそうできるのか、考えていきたいです。
せっかく呼んでいただいたので、ひとつだけ心理職っぽい話をさせてください。
「好意的性差別」についてです。一見、敵意はなく、女性を歓迎しているような好意的な口調ではあるものの、ステレオタイプ的に女性を見ており、女性の能力を抑制したり、暴力を暗に支持していたりするものを指します。
入社面接であれば、「同じ条件なら男性より女性を選びます」「うちの男性たちは、新人が女性であれば、男性に対してよりも時間を作る必要があることを理解しています」などが例です。
今回のテーマに当てはめると、「ママたちは家事も育児もやらなくてはいけなくて大変だから、一人前の働きができないことはみんな理解しているよ。子育てしていない人たちは、ママたちの分も働く必要があることを理解してくれています」のようなことでしょうか。
好意的性差別は、一見、差別とは思われにくいものです。しかし、明らかな敵意のある性差別よりも、女性の自信喪失や自尊心の低下を導くと言われています。子育てをしながら働く女性への理解は、以前よりは進んでいるのではないかと思います。ただ、偏見・差別はもちろんのこと、一人ひとりのこころの奥底にあるささくれのようなものと向き合っていかないと、思いもよらず傷つけ合ってしまうこともあるのではないかと考えます。
北澤 本人はよかれと思ってそうしている場合もありそうですね。
小林 でも言われた方は「ありがとうって思わなきゃいけない」とつらくなるのもわかります。たぶん、子育てが身近にない人たちにとって、子どもがいる状況がよくわからないというのが大きな問題だという気がします。私も子育てしてなかったときはまったくわからなかった。だから、仲良くお話しよう、と思っています。年齢も立場も関係なく、理解をちゃんと深めたい。
北澤 ぜひ、『こえのわ』で月に一度くらい、誰でも話に来られる場などをお願いできたら嬉しいですね!物々交換とか、おさがり会とか、オンラインでの会など。勝手に期待を寄せて……
小林 いいですね、やろうかな。
半田 どこかの劇場と企画を立ててできないかな。そういう場所でやると、演劇人の集まりとして開かれた場にもなるし……あとはやっぱり、劇場の近くに託児所を作りたいですね。
小林 いつか作りたいですね……夢です!


