特集座談会
制作者の声から考える子育てと演劇
座談会特集

特集座談会① 後編

制作者の声から考える子育てと演劇

目次

企画説明

こえのわのお届けする特集座談会
今、話すべき内容について、今、話してほしい人にお越しいただき行う座談会。

今回は現役制作者のお二人に加え、公認心理師/臨床心理士の露木さんもお招きし、
実際制作現場では子育て中の参加者にどのようなケアをできるのか、必要なのか、
現在の状況を話していただくと共に、これからの課題について考えます。

アフェリエイト広告

座談会登壇者プロフィール

半田桃子さん
プロデューサー/舞台制作。慶應義塾大学在学中に演劇サークル「創像工房 in front of.」にて松居大悟、目次立樹と出会い劇団「ゴジゲン」を旗揚げ。クリエイターとより風通しのよい環境での創作、さらに多岐にわたるジャンルの作品を幅広く世に送り出せるよう2020年に株式会社momocanを設立、代表取締役。

北澤芙未子さん
長野県出身。明治大学の演劇学専攻にて学び、舞台芸術制作者としての活動を開始。演劇ユニット「くちびるの会」の制作を担当しながら、大小さまざまな公演の制作業務を担う。子ども向け演劇の創作に関わりながら、舞台芸術公演の鑑賞機会格差解消というテーマに関心を寄せ、継続的に取り組んでいる。


露木友子さん(心理臨床オフィス inemuri)
公認心理師/臨床心理士
主に児童福祉領域で臨床経験を積み、2020年より、演劇現場のハラスメント対応に関わる。現在は、演劇に加え、映像制作現場でのメンタルへルスコーディネーター、オンセットセラピストとしても活動中。


小林愛子
プラットフォームデザインlabメンバー 照明家
学生時代に演劇活動から照明に出会い、早稲田大学卒業後、照明家としてのキャリアをスタートさせる。現在は自身も子育てしながら照明の仕事を続けるとともに、舞台業界に関わる人の子育てと舞台活動の両立を支援する活動に注力している。


前編はこちら
中編はこちら

後半:演劇をつくるためのチームビルディングとは

言っても安全な場を担保し続けること

河野 座組のなかに子育てが身近にない方もいると思いますが、そこでうまれるギャップはどうしていますか?

半田 子どもがいないメンバーは、稽古後にみんなが飲み会に参加してくれなくなったと寂しがっていて(笑)。そういった稽古終わりの時間が楽しくてやってきた10代・20代を経て、40歳近くになって変わってきている。稽古時間のことや、何曜日を休みにするかということは、主宰とも相談をしています。今では自分から「みんなきっと土日のどっちかは休みたいと思うから、この週は土曜休みにしようか」と言ってくれるようになりました。今は子どもがいるメンバーの方が多いので、子どものいる家庭に対して配慮する形になっています。とくに主宰という立場もあって、劇団を継続させるために絶対に考えないといけないことなので。

露木 劇団の歴史が長くなってくると、マジョリティとマイノリティの逆転が起こることもありますよね。

小林 子育て世代が現場のなかでマジョリティになったときに、声が大きくなっちゃうのが怖いんです。今だって、子育てしながら仕事をしていることをどれくらい配慮してもらっていいのか全然わからない。こんなにわがままを言っていいのかなという気持ちもある。今まではマイノリティだったから声が小さかったけど、もし子育て世代の方が多くなったときに、子育てをしていない人たちに嫌な思いを感じさせる可能性があるのかな……ということは気をつけたいんです。

露木 子育てをしていない人もしている人も、一人ひとりの声が尊重されると良いですよね。例えば、子育て中の人にもいろいろな思いがある。子どもとできるだけ一緒にいたい人も、子どもと離れたい人もいる。その人個人の状況を知らないとわからないことは多いですよね。子育て中だったら、稽古で通しを見て、ギリギリで保育園に迎えにいって、買い物をして、電動自転車を必死で漕いで、帰ってからも一度も座ることなく食事を作って食べさせてお風呂に入れて保湿ケアをして歯磨きをして寝かしつけて、やっと座る様子までとか、お互いの状況をタイムラプスで見せ合ったらいい……というのは冗談だけど。

半田 私も子育てと並走している創作現場をこれまで経験してきませんでした。現場の見本がない。自分自身が子育て世代になってきて、新しい課題として考えなきゃいけないなと直面しています。

河野 劇団が子育て世代になって活動が難しくなることや、育児や介護で舞台の仕事から離れたという話は地域問わず耳にします。でも、それぞれがどのように取り組まれているかをお互いに聞ける機会はなかなかないんでしょうね。知れば参考や安心に繋がることもあるはずなので、『こえのわ』でいろんな立場の方の話が聞けることはとても心強いんじゃないかと思います。

小林 誰かの声を聞いてセルフケアのようになったらいいなと思っています。

北澤 現場でも、自分のことを話してくれることはすごく助かります。「17時には帰ります」とか「この日は友人の結婚式なのでお休みしたいです」とか、できるだけその声を実現できるように調整したいと思います。

半田 実は辛い思いをしているかもしれないから、言っていただけるとできることが増えます。やっぱりストレスがあるとどうしても現場の空気がピリピリしてしまうし、それは周りにも伝わっちゃう。でもなぜピリピリしているかの原因がわかれば対処できるし、お互いに精神的にも楽ですよね。

北澤 「今日私はピリピリしています」とかも言い合えると良いかもしれないですよね。

半田 そうじゃないと「自分がなにか嫌がられることをしちゃったのかな」と思ってしまうこともありますしね。

露木 たとえばプロデューサーや主宰者、演出家など、その場でパワーを持つ役職の人たちが、「言うほどでもないかなと思うことでも、伝えて欲しい。聞く準備(心構え)がある」ことを言葉でも態度でも伝えておけると良いですよね。すべての希望を叶えることはできないことは前提として。そして、決して「わがままな奴だ」「めんどくさい奴だ」と「次からは現場に呼ばない」という判断はしない、ということも併せて伝えたい内容です。

半田 座組に参加するまえにアンケートをとります?

小林 いいかもしれない!みんなの前で話すのは勇気がいるから。

アフェリエイト広告