特集座談会
制作者の声から考える子育てと演劇
座談会特集

特集座談会① 中編

制作者の声から考える子育てと演劇

目次

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子どものお迎えと、現場に寄り添うことのジレンマ

小林 私は、今はもう「何があっても17時に帰る人」だと思われている気がします。最初の頃は暗黙的に「30分ぐらい後ろに押しても大丈夫でしょう」という感じがありましたけれど、違うんです、17時9分の電車に乗らないと延長保育になっちゃう!みたいな感じで、本当に限界の時間を伝えてるんです。 遅れると、子どもがものすごく怒るんですよね。

北澤 お金もかかるけど、それより精神的な負担が大きいですよね。うちの子は「絶対に17時半に来い」というタイプなのでプレッシャーがあって……。365日のうち1日でも遅れたらダメなんですよ、きっと。「この日だけは飲み会に行ってもいいでしょ?」と思う自分と、「1日も欠かさず迎えに行かないと」と思う自分がいます。

小林 出産前は、「私立保育園なら20時15分まで預けられるから、19時過ぎまでは仕事できる!」と思っていたけど、まあ無理ですね。21時には寝かせたいと思ったら、夜ごはんとお風呂と翌日の準備と寝かしつけを1時間ではできないですし。

北澤 わかります、わかります。

小林 子どもか仕事かの優先順位を自分で決めるのが、最初はしんどかった。出産するまで10年以上は現場がなにより優先だったのに、子どもに熱が出たら即帰るという生活になったので、自分の気持ちがついてこない時期がありました。今は子どもが優先だというマインドになっているけど、それでも「子どもや家族を犠牲にすれば、現場は幸せになる」というときには、この綱引きに引き割かれそうになります。

北澤 これは子育てだけじゃなくて、介護とか、自分の病気でもありえますよね。仕事が好きだからがむしゃらにやりたい気持ちと、そうはさせてくれない障壁が人生にはある。1日中、作品のことを考えているんだな、という人に出会うと、羨ましいな、と思います。見えていないだけでその人にも何か障壁があるかもしれないのですが、没頭している姿を見ると羨ましく思ってしまいますね。

小林 もし帰宅を30分押すことができたら全体がすごくハッピーなことは理解しているので「いいですよ」と言いたい。でも30分押したら娘はすごく泣く。どっちを選んだこともありますが、どっちも辛い。

露木 「30分押したら娘はすごく泣く」というのは、養育をしている方からすると、身を引き裂かれるような辛さがあるのだと思います。
私は、小規模保育園で心理職として働いてたことがあるんですよね。
ある日、いつもは早いお迎えの子が、最後から2番目のお迎えになったことがありました。おっとりした子でしたが、その日は夕方になると、友達の作っているブロックを壊すは、ケンカはするは、落ち着けない様子で。そこで、クールダウンのために抱っこしてベランダに出たら、急にしょんぼりして小さな声で「今日、ママ遅いね」とつぶやいたんです。
多くの子どもは、泣いたとしても、荒れたとしても、養育者が迎えにくるのを理解している。それは、日々、みなさんがちゃんと子どもを迎えに行ったという積み重ねによるものです。自信を持って欲しいし。まあ、子どもには悪いですが、一日くらい遅れても……と思ってしまいますね(笑)

小林 そう言っていただけると、泣けちゃいます(笑)

子育てについて現場にどれくらい共有するべき?

小林 座組がスタートする時に、自分含めそれぞれの状況をどれくらい共有するのがいいのかわからないんですよ。

河野 それはなぜなんでしょう? たとえば持病があると、とっさの時に対応できるように制作や舞台監督に事前に伝えておくことがあると思うんです。でも子育てはそうならないのは、どこまでが仕事かの線引きがしづらいとか……?

小林 まず、対話をする場がきっと少ない。

北澤 対話は大事ですよね。ただ、どれぐらい自分のプライベートを明かすかは悩ましいです。それは公演の規模によるかも。

小林 プライベートなことを言った方がいいなと思うときもあるけど、言わずに自分で解決した方がいいなと思うこともある。どうしたらいいのか全然わからない。……お子さんのいる役者さんとはどうしているんですか?

半田 うちは劇団員のほとんどに子どもがいて、マネジメントもしているメンバーには制約が出てくることが多いです。オーディションであれば、子どもがいることで不利になることはあまりないですが、見送ることはあります。日程が直近にしか出ないことも多いので「明後日にオーディションがあるんですが」となったら、子どもの面倒の調整がつかなくて行けないことはあります。

小林 稽古時間の設定はどうですか?「毎回17時までに帰りたいんです」と言う俳優さんはいない?

半田 それは言えないかな……たとえばマネージャーの立場だったとして、商業の舞台に出られるチャンスがあったときに「子どもがいるのいるので17時には絶対帰ります」と言うとたぶん採用してもらえない。

北澤 平日夜と土日に公演があることが当たり前ですもんね。舞台芸術業界に限らず、サービス業などはどうしても保育園の時間では完結しないですよね。

半田 ただ、劇団公演だと調整ができるので「土日はどっちか休みにしたいか」とか「稽古は17時に終わる日があったほうがいいか」とかは聞くようにしています。やっぱり、家族に負担がいっていないかは気をつかいますね。作品のことだけじゃなく、そばにいる人たちのことも考えないと劇団が継続できないから。去年は公演で託児サービスをやって、ご家族が子どもを連れて観に来れるようにしました。お互いにママ友だったりもするので、一緒に観に来てもらうこともできる。そういう環境作りは大事だなと思っています。

露木 素晴らしい取り組みだと思います。

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