子育てのスキマで、趣味でアーティスト・イン・レジデンスを運営してます
神谷俊貴(元・舞台スタッフ/芸術準備室ハイセン発起人)
コラム

子育てのスキマで、趣味でアーティスト・イン・レジデンスを運営してます

神谷俊貴(元・舞台スタッフ/芸術準備室ハイセン発起人)

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自己紹介

はじめまして、滋賀県大津市にてアーティスト・プラットフォーム「芸術準備室ハイセン」を運営している神谷と申します。
本業は会社員で製造業しつつ、妻と3歳になる娘と暮らしています。
今回はこえのわさんからコラムの執筆依頼を頂き、「舞台芸術も育児もにわか勢すぎるんだが……」と内心ビビっています。サイト内の記事にも目を通し、みなさん真面目に悩み真面目に励んでいる姿に涙しつつ「ワシ特に悩みらしい悩みないんだがマジ何を書けばええねん……」とさらに頭を抱えています。
ええいままよ、と、とりあえず何も考えずに文章を書き始めている次第です。

さて、簡単に自分語りをします。
・京都に住んでいた大学生時代、大学の演劇部や小劇場活動に参加しすぎて就活せず単位も落として中退
・ひょんなことからSPACー静岡県舞台芸術センターという粋な県立劇団兼劇場に拾ってもらい、創作・技術部演出部班に所属して国内外様々なクリエーションに参加させてもらう。しかし腰が爆発(術後は良好です)
・退職してボンヤリしてたら交流のあった他の劇場やスタッフさんから仕事をいただき気づけばフリーランスっぽくなる(もちろんSPACとも期間契約した)
・滋賀県大津市に元保養所の建物を見つけ、改装すれば稽古場・作業場・アーティスト・イン・レジデンスとかできるんじゃね? と思い立ち、勢いで契約して移住してハイセンを始めてみる
・新型コロナウイルスの流行で仕事がなくなるのと、全国各地で仕事しているとハイセンの管理が滞るのと、収入やスケジュールが不安定なのもあり、決断して転職する。一般企業には残業代やボーナスという概念があることを知る
・しばらくして娘誕生。かわいいー! やったー!
……と、まあテキトーに生きています。

芸術準備室ハイセンの詳細についてはホームページなどを見ていただけたら嬉しいのですが、よそのアーティスト・イン・レジデンスのように地域貢献とか人材交流とかプログラム成果発表などの目的があるわけでなく、ただ制約を感じているアーティストがのびのび創作できればいいなということで施設と備品を貸し出しているようなものです。任意料金制(利用者が使用料金を決める)や審査や抽選なしの予約先着順にしているのもそういう理由で、自称滑り止めアーティスト・イン・レジデンスとして城崎国際アートセンターにも売り込んでいます。みなさん、ぜひ活用してください!!!(宣伝)

趣味でアーティスト・イン・レンジデンスやってます!

このように会社員しつつ育児もありの中で施設の運営管理をしてると周りから「大変ですよね~」と言われるのですが、これが不思議なくらいしんどいと思ったことがありません。
というかそもそもハイセンを始めるときに「無理になったらやめよ~♪」と自分の中に決めておいたのもあり気負うことなくやっています。そして趣味みたいなものだし自分がいかにしんどくならないかを考えて実行してきました。

まずハイセンのスタート時には妻と二人で建物に居住しつつ改装作業もしつつアーティストを受け入れてサポートもしていました。基本的に創作も生活も利用者が全部負担してハイセンは施設提供するくらいだよという感じですが、なんやかんやで深夜1時から始まる美術チェックの補助だの早朝の木材受取だの晩酌してたら照明のシュートに呼び出されたりだの野外公演で開演キューから終演までの進行丸投げされたりだの、プライベートの大半がクリエーションに深く関わることになっていました。
なんだかんだアーティストの創作過程に関われることは楽しいですが、これは物理的距離を置かないとなあ、ということで数駅離れた地域の一軒家を購入して引っ越し(しばらくして妻が妊娠と出産)、必要なときだけハイセンに出向くようになりました。

基本的にハイセンは無人営業です。利用者とは事前にメールで段取りし、キーボックスの中の鍵で入室してもらます。使った後は掃除片付け、書類記入と料金支払を済ませてもらい退出してもらいます。
僕がハイセンに行くのは初回利用者との挨拶、利用と利用の間の片付けチェックと受け入れ準備、アーティストと現場でしかできない相談やお手伝い、見学案内や取材、草刈りや建物のメンテ作業、焚き火くらいなのです。
じゃあそれらをいつやるのか? 仕事終わりか休日です。
会社は平日8時17時と決まって残業もあまりなく(あっても事前に計画予告される)、土日は確実に休みです。家事育児も妻と半々くらいで割り振っています。
しかし土日は妻の仕事シフトが多いため自分が子守当番、確実に娘をハイセンに連れて行くことになります。ですが支障を感じることはなく、娘はスタジオで走り回るか養生テープを転がすか、一緒にシーツやタオルを畳んでくれることもあります。二代目として文句なしです!(受け継ぐか知らんけど)

月一くらいでは1日完全にフリーになりますので、そのときに大掛かりな作業をします。もちろん自分以外にも手伝ってくれる運営メンバーがいますので彼らにも頼りまくっています。

ちなみにハイセン利用者には子連れで来る方がたまにいらっしゃいますが特にNGはなく、クリエーションもけっこうなんとかなっています(他の施設はダメな場合が多いらしい)。

育児のスキマ時間でできることをしています

自分はいつか育児をしたいと思っていましたし、妻も同じ意思を確認して結婚しました。
拘束時間の長い舞台業をしている方には「育児が始まれば仕事に影響が……」と不安になる方も多いと思いますが、自分は逆に「こんな仕事してたら育児に影響が出る!!!」と思っていました。
もちろん育児しながらスケジュール調整して俳優・スタッフをされている方もいますし、劇場楽屋で子どもの相手を座組メンバーで代わる代わるしていたこともよくある光景でした。要は育児の外部委託をどうにかできれば可能な話です。
しかしながら、諸先輩は仕事ばかりで育児に関わらなさすぎて離婚したりだの、子どもに存在を忘れられるだの、恐ろしいエピソードもチラホラと。
親子のコミュニケーション時間ってのはできる限り削りたくないと焦りました。与えたオモチャはすぐに飽きられますが、一緒になにかしたことは覚えていなくても残っているようです。

舞台芸術の環境から離れてしまう怖さってのはあると思います。
しかし僕の場合、目的と手段を整理していくと、別に面白い作品と出会えるのなら自分が作り手である必要はないと思うようになりました。現場で働くスタッフでなくても、もっと土台となるような活動でアーティストを支援できるのだと。というか二十代のうちにあれだけ濃密な時間を過ごせたのならもう十分幸せだと思いますし、これから最前線で頑張る若手や再チャレンジを考える社会人アーティストを支えていきたいです。
それと相反して育児は簡単にやめられない。やめたら子ども死にます。であればやはり生活の中心軸はこちらになります。もちろん育児にすべて捧げるという意味ではなく、むしろ子どもを生かすためにはまず自分自身しっかり生きねばと強く思います。
とりあえず数年から十数年はこっちに集中しとこう、くらいの感覚です。
コロナは悪いこともいっぱいありましたが、自分にとってはある意味リセットするチャンスにもなりました。これは諦めでなくポジティブな方向転換です。

人生のボーナスタイムを考える

余談なんですが、先日NHKの番組を見ていたら人間の生物学的寿命は本来38歳だとする説が出てきました。
「自分あと4年で死ぬの!?」とかなり衝撃を受けました。しかし歴史上人間の平均寿命が40歳以下であり、ここ最近がむしろ異常なほど長生きしているという事実は否定できません。
そりゃ昔は自身が大人になればさっさと出産育児も済ませておくわけだなあと。寿命から逆算すれば全然子育て以外の余裕がないわけで。

現在は安定した社会や抗老化の充実で育児以外の時間がいっぱいできました。逆にそこから生まれる選択肢の多さがまた多くの悩みを生み、資本主義が加速して同時に多くのことをノルマのように達成させようとする余裕の無さを感じます。豊かで自由な先進国が、逆に男女共々未婚や晩婚化など少子化を招くというのも皮肉な話です。それはそれで人類の緩やかな末路かもしれません。
……なんだか暗い話になってしまいましたが、長寿ってのはめちゃくちゃいいことですよ! さらに言うと健康寿命(元気に動ける期間)ってのも伸びてますので、人生は可能性だらけです。100歳でも現役バリバリが当たり前になるかもしれません(年金なくなりそうだけど)。
大事なのは他者と比較するような幸福度合いでは達成感と持続性が薄いので、いかに自分の内心で充実具合を高められるかということだと思います。
若いときに舞台袖でカーテンコールの拍手喝采を浴びた瞬間も、穏やかな天気の中で娘の小さな手を繋いで散歩する日常も、思い返せば素晴らしい人生だったなと振り返ることができます。育児が終われば今度は何をしようかともワクワクできます。また舞台スタッフに挑戦するか、自主企画を立ち上げるか、ハイセンの事業拡大をするか、本をいっぱい読むか、羊飼いになるか……。

さてさて、いい加減そろそろこの文章もまとめねばなりません。えーどうしよう。
舞台芸術と育児は両立するのかという大きなテーマがありますが、僕は両立しないと答えます。
これは舞台芸術以外どの仕事もそうだと思いますが、特に創作現場は流動的でスケジュールの見通しが立たないことが多いです。お金は頑張ればある程度増えますが、1日の時間は増えません。それでも子どもの都合は予測不可能、どっちもパーフェクトには行きません。両立はしないけど、それでも自身のベストを尽くして納得することはできる。
むしろ僕は舞台監督的思考が染み付いているので、目標さえ絞って設定できれば後はいかに制約をクリアして達成するかが楽しむポイントだと思います。クリア後にはボーナスタイムだってあります。

そしてまだまだ創作活動を続けたい人も、一度離れたけどまた再開したい人も、もしお金や場所についてお悩みでしたら一度芸術準備室ハイセンに来てみてください。琵琶湖でも眺めながらリラックスして、できることから手を動かせるはずです。
もう希望しかないので、人生エンジョイしましょう!

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