子育て座談会~俳優編①~(後編)
子育てを続けながら俳優を続けることについて
目次
8.真っ暗な穴に落ちないために ― 繋がりと居場所を持ち続ける
ライト 私、照明家としてずっと仕事してて、でも子供は欲しかったから、結婚した頃、10歳くらい歳が上のお姉さんたちに「子供欲しいけど、仕事どうしたらいいですか?」ってわりと相談してたんです。
頑張ってずっと続けてたよっていう人もいれば、あっさり小学校低学年まで6年くらい、ぶつっとやめてたっていう人もいて、そういう選択肢も全然アリだなって思っているのも、実は本音だったりするんですよね。
今、子育てと舞台を両立できるように支援したくて、このプラットフォームデザインlabをやってるんですけど、同じくらい、1回休憩してもいいじゃん、って空気も舞台業界に作りたいなって実は思っていて。
特に俳優さんって、稽古期間のこととかを考えたら物理的にやれないみたいなことが多いだろうし…1回やめきっちゃったらそのまま完全にやめていくしかない、みたいな状況がもしあるんだとしたら、それは悲しいなと。5年…もっとだな、10年くらい経っても、パッと再開できるような、そういう業界であって欲しいな、ってのも、ちょっと思ったりしてるんですよね。
カブトムシ やっぱり、何かしら関わってないと、忘れられちゃうんじゃないか、とか、ブランクがあったらキャリアが戻るだろうな、とかっていう不安がずっとあって。
子供生む前に実績を積んで、しばらく休んでも居場所があるっていう自信がある人だったらいいんですけど、自分にはそれが無いから、忘れられないように、ちょっとずつでも続けていかないとって。
ライト うん。うん。うん。
カブトムシ 私はパッと「休みます」とか言えないですね。
ライト いや、言えないです……本当に。
でも多分これって、普通の会社員として働いてる人も似たような悩みを抱えてるんじゃないかな。正社員やめて専業主婦になっちゃうと正社員に戻れないから、なんとか続けてる、みたいな人、保育園のお母さん友達にいました。
おもち 私、俳優やる前、長めに正社員をやってたんですけど、コールセンターに所属してて、すごい女性比率が高かったんですよ。なので、産休育休取って戻ってきて1回働いて、また産休育休みたいな人も多くて、会社員はそのほどほど具合が…時短とかで緩く働けるのがやっぱりいいよな~って、やめておきながら今になってすごくうらやましくて。
その当時、私はもうやるんだったら役員になるぐらいまでやりたいみたいな感じだったんで、育休から復帰してきてちょっと緩めに働いてる人たちを見て、こうはなりたくない!みたいに思ってたんですけど…めっちゃ失礼(笑)。
でも、それができるってすごく良いことなんだなって、自分が演劇を始めて思いました。
完全に離れてしまうとやっぱり、メンタル的に戻れなくなっちゃうんじゃないか、みたいな不安があって、どうなってしまうか分かんないな…と。やりたい限りはその不安とずっと同居していかないといけない、でも諦めたくないし…そういうことを毎日考えながら、やっているなと思ってます。
松本 あっこさんはどうですか?
あっこ もう正に皆さんと同じ感じですけど、私は介護と育児やってて、うまく回らなかったときとか嫌なことがあったときって、穴に落ちないようにっていつも考えるんですね。
その穴っていうのは、本当に真っ暗闇で、誰からも見られてないっていうか、もうとてつもなく死にたくなるんですよ。それを食い止めるために、やっぱり人と繋がってなきゃいけないっていうのは思っていて。
自分の仕事でもやってるように、居場所作りとか繋がり作りを、演劇を使ってやってるからこそ、私たちはやっぱり繋がってた方がいいなっていう。
だから仕事は無理やり続けといた方がいいんじゃないかなっていうのはすごく思ってます
その、休止したときに、怖いっていうか……。
ライト うん、うん。
あっこ 母親のトイレの世話をしながらご飯も作んなきゃいけないとか、息子のトイレのタイミングが一緒になったりするときとか、もうやっぱり死にたくなったりするんですよ。
子供と母親に当たってしまうとかになっちゃうと、まずいサイクルになっていくから、とにかく自分はハッピーでいなきゃいけない、それはやっぱり息子に見せておかなきゃっていうのもあるし。
そういった意味で、やっぱりいろんな人に頼っていかないと、自分でもできるけど敢えて人と繋がっていかないと、とても怖いなって思います。
松本 話せる場所があると、ちょっとは違ったりしますか?
あっこ そうですね。やっぱり、「私だけ!」ってなるのが一番怖いじゃないですか。なんで私なんだっていうのに落ちるとやばいんで。今日みたいに、皆さんも大変、小学校に上がっても大変、2人の育児で超大変とかっていうのを見るだけでやっぱり、あ、今日も頑張ろうって思いますよね。
(一同頷く)
松本 ありがとうございます。私もみなさんのお話が聞けて良かったです。
それではお時間になりましたので今日はこの辺で終わりにしたいと思います。みなさん、たくさんの貴重なお話を本当にありがとうございました。
この座談会は今後も定期的にやっていきますので、もし機会があったらまたぜひぜひご参加ください。ありがとうございました!!
編集・構成 安齋里美

