「はたらく劇場探検隊」を通して考えたことー劇場は子どもにも、働く親にも、開かれる場所になれるかー

舞台裏から劇場の魅力を感じてほしい

舞台裏の面白さから劇場に関心を持ってもらおうと、小学生向けの職業体験ワークショップを今年度からスタートした。企画運営は子育て当事者や教育に関心のある舞台人による異職種混合チーム。「こっちから観る舞台は最高だから裏に来てみて!」「親たちの仕事(パン屋さんやYoutuberみたいな認知度は決してない)も知ってほしい!」といった個々のささやかで切実な願いと共に一年走り抜けた。

「はたらく劇場探検隊」in 世田谷パブリックシアター、撮影:加藤和也

個別の現場での発見も反省も多々あり、それを一つ一つお伝えしたい気持ちもあるが、それは別の場にして、今日は、回を重ねるうちに徐々にくっきりと浮かび上がってきた「大切にしたいこと」を中心にお話ししたいと思う。

働く人と考える・子どもたちと考える

ひとまず通年実施したプログラムの一つは、子どものためのバックステージ探検や、照明・音響・舞台機構のオペ卓体験である。これは、劇場機構の多彩な引き出しを熟知した技術スタッフさんや、内部事情を把握している公演中のカンパニーさんのお力があってこそ実現した。

映像さんに出会う「はたらく劇場探検隊」in 吉祥寺シアター 撮影:加藤和也

なのでまずは、技術スタッフの皆様に、改めてこの場を借りて御礼をお伝えしたい。この企画は、劇場に働く人と共に作るプロジェクトなのだということを再確認した。

そして次に感謝したいのは子どもだ。当チームスタッフの子どもたちがリハーサルに来ていた時には、実際の子どもたちの反応を見ながら運営や声がけのシミュレーションができたのがよかった。これは、元はと言えば、休日現場で親が子どもを仕事に連れてこざるを得なかったから起きたことではあった。が、親であり当事業ディレクターの佐藤恵氏(職業:舞台監督)は、日常的に「育児」と「現場」を波乗りサバイブしているが故に、こうした相乗効果を織り込み済みでスケジュールを組んだのではないかと察する。

照明スタッフや子どもたちを交えた打ち合わせ・リハーサル風景(「はたらく劇場探検隊」in 世田谷パブリックシアター、撮影:金森香)

振り返ると、これはとても大事なプロセスだった。子どものためのプログラムは子どもと考えるべき、という前提がありつつ、「ときどき起きるこんなこと(子連れ勤務)がプラスにはたらく現場」は望ましいものに思えた。そしてそれを生み出し、現場の一つの当たり前にしていくのは当事者親子本人たちの逞しい姿なんだな、と改めてその光景を思い出す。

舞台監督Hさんの一問一答インタビュー

対象者の紹介

舞台監督さん(男性)、子どもは一人

ご自身が仕事で育児ができないとき、育児を誰に頼っていますか

配偶者・パートナー, シッター

配偶者・パートナーの仕事を教えてください

ペットシッター(個人事業)

家族内におけるご自身が担っている『育児』の割合はどの程度ですか?

朝の用意全般、夜いる日は、夜の世話全般、隔週の日曜日の世話(だいたい2回に一回になるように手分け。)

家族内におけるご自身が担っている『家事』の割合はどの程度ですか?

4割

仕事の理由から、子どもを持つことに迷いや不安はありましたか?迷いや不安があったとお答えの方はその内容を教えてください

不安はあったけど、迷いはない。
不安定な収入と、不規則な時間拘束が不安だった。

子どもを持つことで舞台芸術活動との関わり方、仕事量に変化はありましたか?変化がありましたらその内容を教えてください

朝早くから夜遅くまでは無理になった、世間の休日は、稽古など全てへの、参加は無理。なので朝の現場入りは緩いです。舞台監督としてはだめだと思うが、演出部の存在や、許してくれる(しかたなく?)カンパニーのおかげ。でもクビにもいっぱいなってる。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、困難を感じた経験はありますか?もしありましたら具体的に教えてください

子供に色々あった時期、場当たりを抜けました。初日は空いたけど、ふつうに大事な時を、すっ飛ばしてるので、困難というかなんというか。でもしょーがないなと思って過ごしてる。

子育てと舞台芸術活動の両立が困難だと感じた時、どんな情報がほしかったですか?

予約とかなく、頼むって言って病気の子供を5時間くらい預けれるとこの情報。

子育てと舞台芸術活動を両方する上で、どんな環境が理想的だと思われますか

どれだけ事前準備してもパートナーと2人だと無理な時があるので、両親、姉夫婦と同じ家か、地域にいるとか。昔の村社会みたいに、なんかあったら、だれかがなんとかしてくれるみたいな状態がつくれないと厳しい。5〜6人の誰かが子供をみてる環境が理想。

舞台芸術活動をしている方で、これから子どもを持ちたいと考えている方に対して、何かメッセージはありますか

子どもがいるの最高なので、パートナーと時間の割合とか話して、両親とか義両親とかに頼って。カンパニーと話して、続けることを模索してください。細くても続けるのが大切だと思います。

ご協力ありがとうございました!

こどもと観劇のすすめ

くらいはこわい

仕事・趣味共に舞台と言っても過言ではない私。

舞台作品を観るのがとても好きです。

ただ、残念ながら子供が産まれてからは、自由に観劇できる時間が激減してしまいました。(観劇する機会を失いたくなくて、キッズルームや託児を利用したこともありますが、その話はまたの機会に)

できれば娘と一緒に劇場に行きたいので色々と試してきました。

しかし子供と劇場に出掛けてはじめて実感したことがあります。

暗くなる客席で集中して鑑賞できるというのは、ある意味生き物としてとても高度なことなんですね。

じっとすわっていられない&暗くなると怖がる娘を連れて、休憩中に退席せざるをえないこともしばしば、でした。

ついに、必要にせまられて仕事で劇場へ連れて行こうとすると、暗いところは怖いから行きたくないと断られるように・・観劇も劇場の仕事に連れて行くことも控えるようになりました(涙)

それでも最近、娘が5歳、6歳になってきたごろから少しずつ、娘の興味のある作品に出会うことが増えてきました。

我が家の場合、ポイントは

  • 客席が明るいまま上演するか、暗くなるか、確認しておく

多くの子供向けの作品、特に0歳から対象のキャラクターショーなどは、客席が暗くならずに鑑賞できる作品も多いです。

公式の情報、またもしあれば鑑賞レポを調べておくと、安心でした。

  • 上演時間を調べておく

子供向けの作品は基本的には30分〜1時間程度のものが多いですが、

事前にHPなどやSNSで上演時間を確認してから観にいくことで、子供とも前もって共有することができますし(子供の時間感覚はだいたいとても曖昧なのですが・・・)

上演中の子供の「まだ終わらないの?」という質問にもストレスレスで対応することができました。

  • 対象年齢(推奨年齢)があっているか、確認する

我が家の場合はこれが大事だなと思いました。

推奨年齢より小さくても入れる公演もあったのでチャレンジしたのですが、やはり少し早すぎたと感じました。

早熟の方、成長がゆっくりの方、様々な方がいる思うので当てはまらないお子さんもいるかもしれませんね。

  • 事前準備をする

映画や絵本が原作の場合は、親子で一緒に観たり読んだりする。または公式トレーラーをyoutubeなどの映像で観ておくことで、娘と一緒に観劇を楽しみにすることができました。

動きのある作品は観劇後に踊りを真似したり、音楽のある作品は上演中に「あ!この曲知ってる!」と目をきらきらさせてくれたり、嬉しい反応がたくさん。

子供のyoutube観たい!気持ちを有用なコンテンツを見せることに繋げることができて、一石二鳥!です!

さて、このあとは、娘のハマった作品をいくつかご紹介させていただきます。

劇団四季『アナと雪の女王』

これはディズニー映画でお馴染みの、プリンセス好きの娘も大好きな作品。ノリノリで観劇しました。

ちなみに、親子初めての劇団四季作品でした。

我が家は娘のテンションを高めるために、プチコスプレしていきましたが、会場にも思い思いに仮装してきたミニエルサ、ミニアナがいっぱい!

内容としては、映画の内容+オリジナルのシーンもありましたが、基本のストーリーをよくわかっていることもあり、初めて全編椅子に座って集中して観られた作品かもしれません!

また物語の序盤に子役の方が出ていることで、親近感を感じたようでした。

映画と同じく高橋知伽江さんが歌詞を担当されているのですが、日本語版のために歌詞を変えたとおっしゃっていたので、劇団四季版の歌をきいておくなどしました。

(もちろん時間を作ることができないので、夜寝る前や、夜ご飯の時間に聴き流しです!)

劇団四季「アナと雪の女王」上演前、客席から

ToRmansionの作品『へんてこうじょう』など

こえのわでも記事を書いていただいた、ToRmansionの作品は親子で好きな作品がたくさん!

内容は、パントマイム、アクロバット、マジック、ダンス、歌などで構成されたオリジナルストーリー。

ロビーや受付で出演するキャラクターに出会えたり、鑑賞前に舞台上で開催されるミニイベントに参加したり、舞台に上がって参加させてもらったり、舞台からの声掛けで客席で反応するシーンがあったり、どの作品各所に様々な工夫が凝らされており、少々客席が暗くても楽しんで「舞台作品」を観てくれるようになりました。

舞台上に次々現れる「ちょっと不思議」は、娘の想像力を広げてくれます。

ToRmansionの作品の素敵なところは、作品が始まる前の導入を子供達にわかるように出演者の方が丁寧に説明してくれること。

特に客席が暗くなるときは「くらやみは、魔法のはじまり」と子供達に語りかけてくれます。

また昨年夏には、主催されているワークショップにも参加して、プロの方たちの力を借りた発表会も経験しました。時々教わったパントマイム「壁」披露してくれます。

劇場への苦手意識がなくなったのは、ToRmansionのおかげかもしれません。感謝です・・・

ToRmansion「へんてこうじょう」

山田うんさんの作品『オバケッタ』『せかいいちのねこ』

歌と踊りが大好きな娘は、うんさんの演出されるこの2作品にぴったりはまりました。

新国立劇場『オバケッタ』は絵本作家/美術家のザ・キャビンカンパニーを美術製作に迎えられており、日生劇場開場60周年ファミリーフェスティバル『せかいいちのねこ』は、画家ヒグチユウコ原作の絵本の舞台版。

子供の空想の世界とつながりやすく、入り込みやすい世界観が広がります。

どちらの作品もテーマは子供の日常から繋がるちょっと不思議な世界。親子共に引き込まれます。

またつい口ずさんでしまう、オリジナルの曲たちもとっても魅力的でした!

『せかいいちのねこ』は原作を手に入れて親子で読み、両作品とも公式の紹介映像が出ていたので、家で観ておきました。

娘が観劇する前/観劇した後、家で真似して歌ったり、踊ったりしながら楽しんだことも、いい思い出です。

『せかいいちのねこ』は現在ツアー中で、2月22日の猫の日に熊谷文化創造館さくらめいとで上演予定だそうです。お近くの方はぜひ!おすすめ作品です。

新国立劇場「オバケッタ」カーテンコール

大変、だけど、舞台に行きたい!

こうした素敵な舞台体験のおかげで、この2026 年新年初舞台は、親子で新国立劇場へくるみ割り人形を観に行くことができました!

作品も素晴らしかったですが、娘が多少ぐにゃぐにゃする時間もありつつ、離席せずに最後まで観ることができた娘の成長にも感動しました。

我が家は1人っ子で、ある程度歌や踊りが好きという特徴のある娘にあわせて準備をすることができますが、それでも日頃からアンテナを張り、時には各劇場のサイトなどから情報を集め、観劇する作品を選ぶ時間を作り、チケットを手配して、電車を乗り継ぐなどして連れて行くことは毎回大変なことです。

子供を舞台に連れていくことは、たとえ親が舞台が好きでも、何重にも何重にもハードルがありますね。

でも、観たい。観に行き続けたい。

この記事が、みなさまの子供と舞台を観たい!の後押しを少しでもできることを願って。

to R mansion赤ちゃんや子供向けの作品を作るようになったワケ

「子ども向け」ではなく、「子どもも大人も楽しめる」ライブ体験の機会を創る

「赤ちゃんや子どもが、生の音楽や目の前で物語が紡がれる演劇に慣れ親しんで 成長することは絶対心や感性に良い!そして自分も一緒に楽しみたい!」 出産してすぐ、そう思っていました。

ですが、なかなか難しい現実がありました。 自分がそれまで大好きだった劇団は未就学児童入場不可。 当時はリラックス公演というものもほぼ存在せず。 子ども向けと書かれているものに行ってみるも、なんとなく付き添いで行っている感覚に陥って、自分の好みではない。 いざ行ってみたいと思って予約すると、 電車に乗って行くのも、時間に間に合うように準備して行くのもめちゃくちゃ大変。

子どもの体験ももちろん大切だけど、大人の満足感、めちゃくちゃ大切! 子どもを場所に連れてきてくれるのは大人。 大人が満足できる質の高さや、安心感が必須。 大人が思い切り笑ったりできる視点も大事!だと考え始めました。 子どもが笑うことは大人も嬉しいけど、逆も然り。大人が声を出して笑うことは、子どもにとっても凄く嬉しいこと!

「子ども向け」ではなく、「子どもも大人も楽しめるライブ体験」を提供できるカンパニーto R mansionにしたいと考えたのはその頃から。 子どももお父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、隣の知らない人もみんなが一緒に笑ったり楽しんだりしてほしい。 そうしてto R mansionでは、最初の舞台公演から、0歳児入場可としてきました。

劇場に来る習慣がない、来れない人にもパフォーマンスやステージアートを届けたい

劇場に来る習慣がない、さまざまな事情で劇場に来れない人たちにも、パフォーマンスやステージアートを届けたい!もっともっと沢山の人に!と思い始めました。

劇場で私たちが来てくれるのを待っているだけではなく、私たちから届けに出向いて行こうと思い始め、ストリートパフォーマンスを始めました。いわゆる大道芸です。

自分たちのスタイル・身体を使ったフィジカルコメディシアターの手法はそのままに、通りすがりの子どもも大人も知らない人同士が一緒に笑ったり喜んだりする風景は、まさに当時の理想的な風景でした。

子どもも大人も、劇場よりもリラックスしていて、ベビーカーごと見れたり、犬を連れていても一緒に見れたり、杖をついたおじいちゃんも、車椅子のご婦人も、酔っ払いのおじさんも、近所のお店の人も、さまざまな人が知らない人同士肩を寄せ合って、ひととき一緒に笑って楽しんで、またそれぞれの日常へと去って行く。 ストリートシアターを観て、劇場公演に来てくれる方も大勢いらして、現在のto R mansionのお客様の4分の3くらいは、この大道芸をやり始めて知り合った方々ばかりです。

2歳だった子供たちはもう大学生になっていたり、高校生だった女の子は、大人になり、結婚して、赤ちゃんが生まれたら、0歳の時から一緒に劇場に来てくれます。

劇場には劇場でしかできない演出があり、ストリートでは、ストリートだからこそできることがある。 その両方の経験が、今もとっても役立っています。

その頃自分の息子は、大道芸の時はお客さんとして一番前に座って、他の子供達と一緒にみたり、劇場では楽屋やロビーでスタッフの皆さんに大変よくしてもらっていました。

それもあり、to R mansionでは、稽古場も仕込みやバラシもゲネプロでも、いつでも子どもの参加は大歓迎です。特に通し稽古は子どもたちの反応が、私たちの作品の場合はダイレクトに関わるので、ブラッシュアップができて助かりますし、バラシや仕込みも、お掃除やグッズ作りなど、様々な場所で子どもたちが活躍してくれています。 どのスタッフさんも、全ての子どもにも「助かったよ!」「ありがたいよ!」など優しく声をかけてくれるので、子どもたちも誇らしそうにしていてとっても可愛いです。

子どもを始め、様々な年齢の人たちがそれぞれに活躍できるのは、舞台の仕事の素晴らしいところだなと思っています。キャストやスタッフが赤ちゃんや子ども連れで参加してくれたらとっても嬉しいです。会社で働くお父さんの姿は子どもは見学できないですが、 沢山の働く大人の姿を子ども達が目の当たりにできるのは良い機会だと思っています。

将来、舞台の仕事したいなんて、思ってくれる子どもがいたらより嬉しいなと思ったりしています。笑

息子が国立大学の物理・宇宙専攻に進学した話

2004年生まれの息子は、今年21歳になる大学3年生です。 現在は鹿児島大学の理学部で、物理・宇宙プログラムを専攻しています。

私は舞台美術家、妻は舞台俳優をしており、息子は全く違う道に進んだなと感じています。しかし最近、息子は音響に興味を持ち始め、「音響工学や音響設計を学びたい」「劇場やライブハウスで働いてみたい」などと言い出し、あれっ? なんだかんだで親の仕事に近づいてきたな、とも感じています。 まあ、子供の進みたい道を親が縛ることはできません。結局は本人のやりたいことを尊重し、応援していくしかないのでしょう。 そんな我が家の、大学進学までの子育てについてお話ししたいと思います。

高校はどこにする? eスポーツ、ギター、それとも自由の森学園?

小学生時代の息子の習い事は、公文とサッカーくらいでした。特にサッカーが好きというわけではなかったようですが、中学でもサッカー部に入部し続けていました。しかし、どうも部活に馴染めなかったのか、サッカーへの情熱は次第に薄れていったように思います。

中学生の頃、息子が突然「プロゲーマーになりたい」と言い出しました。当時、彼は「フォートナイト」というゲームに夢中で、お年玉を貯めて専用のパソコンまで購入するほどでした。そして高校進学にあたり、「eスポーツができる高校を選びたい」と。 今でこそeスポーツは一つのスポーツとして認知されていますが、いざ自分の息子が本気で目指すとなると話は別です。子供の意思を尊重したいとは思いつつも、私も妻も「プロゲーマー?」と、かなり不安に思ったことを覚えています。

これと同時期だったでしょうか。息子は星野源が大好きで、それがきっかけでギターを習い始めました。その時に進学先として浮上したのが、星野源の出身校である自由の森学園です。eスポーツの高校の話はいつの間にかフェードアウトし、次は自由の森学園への進学が目標になりました。自宅から通うにはかなりの距離があるため、もし進学するなら寮生活になります。学校説明会にも参加し、寮生活と自宅通学のそれぞれについて、かなり綿密にシミュレーションもしていました。

揺れ動いた進路と、コロナ禍での変化

高校進学に関して、私たち夫婦から何かを勧めたことはありません。そんな折、私と妻が所属する劇団が兵庫県豊岡市へ移転することが決まり、「私たちも豊岡へ行く?」というテーマで真剣に家族会議をしました。実際に豊岡の高校を見学にも行きました。この時は本当に悩みましたが、私たちの実家が関東圏であることや、息子自身が現地を見て「やはり東京の高校に進学したい」と言ったため、豊岡への移住は断念しました。

プロゲーマー、自由の森学園、豊岡の高校。様々な選択肢が浮かんでは消え、高校進学はかなり迷走していました。紆余曲折ありましたが、最終的には都内の進学校を受験することに決め、中学3年生で公文をやめ、夏期講習から塾に通い始めました。公文のおかげで数学だけは得意でしたが、他の教科は今ひとつ。それでも、塾の先生との個人面談で紹介された高校を息子が気に入り、学力的にも合っていたため、そこへ進学することになりました。

息子が高校に入学したのは2020年4月。まさにコロナ禍の始まりと重なります。高校生活がスタートしたものの登校はできず、オンライン授業が続く毎日。このままでは再びゲームの世界にのめり込んでしまうのでは、と心配しましたが、どういう心境の変化か、息子は急に勉強に目覚め、「東大に行く」と言い始めたのです。 どうやらこれはYouTubeの影響らしく、教育系や勉強系のYouTuberに感化され、高校1年生の時に「東大合格」が明確な目標になったようでした。自分でオンライン塾まで調べてきて、「やりたい」と言う息子を止めることもできず、塾代の高さに苦労しながらも通わせることにしました。幸い、その勉強熱は高校3年間続きました。

2021年にドラマ『ドラゴン桜2』が始まると、息子の東大熱はますます高まりました。しかし、やはり東大の壁は厚く、高校2年生から3年生にかけて、志望校は東北大学や九州大学といった地方の国立大学へと変化していきました。この頃から、東京以外の大学にも興味を持ち始めていたのかもしれません。 親としては、国立大学へ進んでくれるのは本当にありがたい話です。学費は私立の半分以下ですから。私が教えている私立の演劇大学と比較すれば、3分の1以下です。そこに通わせているご家庭は本当にすごいなと。

なぜか物理・宇宙へ。そして今はギター三昧の日々

さて、最終的に息子が進学したのは、鹿児島大学理学部の物理・宇宙プログラムです。志望校を決めた時、私も妻も思わず「えっ!? 宇宙、好きだったっけ?」と聞き返してしまったほどです。本人曰く、ホーキング博士の本などから影響を受けたとのことでしたが、そんな話は全く聞いたことがなかったので、本当に驚きの選択でした。まあ、数学が得意だったので、理系に進んだこと自体に大きな驚きはありませんでしたが。

入学後の大学生活も全く予想しないものでした。 もともとアコースティックギターは弾いていましたが、まさか軽音楽部に入ってエレキギターを弾きまくる日々を送るとは。「物理と宇宙はどこへ行ったんだー!?」という感じです(笑)。たまに電話で近況を聞いても、ギターの話とイタリアンでのバイトの話ばかりです。

そんな大学生活もあっという間に2年が過ぎ、現在大学3年生。1年後、息子が何を目指しているのかは全くわかりません。 ただ、劇場やライブハウス、ホールといった場所に興味を持つということは、幼い頃に私たちが劇場へ連れて行っていた記憶がどこかに残っているのかもしれません。