子育て座談会~俳優編①~(前編)
子育てを続けながら俳優を続けることについて
座談会

子育て座談会~俳優編①~(前編)

子育てを続けながら俳優を続けることについて

目次

企画について

舞台芸術の仕事と子育てについて、日々抱えている困りごとや不安、嬉しいこと、チャレンジしていることなど、気の向くままに参加者同士で話し合うための会です。今回は俳優のみなさんに集まっていただきました。

『子どもをおんぶして通し稽古』『育児中はセリフが全然入らない』『どんなに大変でも舞台に立ち続けるべき』などなど、俳優業ならではの実体験をお話ししていただきました。どうぞ最後までお付き合いください。

参加者

参加者
おもちさん
俳優。お子さんは2歳9か月の女の子と8か月の男の子。
参加者
カブトムシさん
俳優。お子さんは3歳の男の子。
参加者
あっこさん
俳優。お子さんは3歳。また母親の介護も担っている。
参加者
ライトさん
照明家。お子さんは小学校1年生の女の子。
参加者
松本(プラットフォームデザインlab)
アルバイト。お子さんは6歳男の子、2歳女の子。
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1.子連れ稽古場のリアルと試行錯誤 

松本 俳優さんとスタッフって、同じ舞台の仕事をしてても、スケジュール的にも内容的にも、全く働き方が違うと思うんです。 

私たち、メンバーが全員スタッフなんですね。きっと俳優さんには俳優さんの大変さとか、その分いいこともあると思うけど、分かんないねって。 

だから、俳優さんならではのお話を今日お聞きしたいなって思っています。 

例えば、おもちさんが前回公演されたとき、ご自分が大変だったエピソードとか、他のみんなはどうしてるの?みたいなことがあったら、ぜひ教えていただきたいんですが、いかがですか? 

おもち そうですね…その公演に関わる人たちが、スタッフさんも出演者たちも、赤子が来るだろうことを前提にしていてくれたのはすごくありがたかったかなと。 

人によって「あ~、赤ちゃん!」って来る人と、それを見てる人、みたいな違いはあるけど、子供がそういう場所に来てワーッて言ったりすることに対して、こう、フラットでいてくれてるっていうのはすごくありがたかったです。 

…でも、他はどうなんだろう?っていう気持ちにもなった、っていうか…フラットだったけど、これってもう、最低限の前提だよね、というか。それ以上のケア…授乳をしたりとか、離乳食をあげたりとか、居場所をどうするとかっていうところまで完備された状態では稽古場には入ってなくて、ライトさんが来て初めて「あ、おもちゃだ!」「あ、座布団持ってきてくださった…!」みたいな感じで。でも、もうそういうのはやっぱり、育児してる人・してた人じゃないと分かんないよな~って思いながらやってました。 

ライト ちょっとだけ補足すると、おもちさんの所属してる団体は「子育てしたり、地方にいたりして活動が難しい人も、演劇に参加できるようにしよう」っていう企画前提があって、「どうやったらいろんな生活を抱えながら持続的に公演ができるか」っていうのを試してみようって側面を持っているんです。 

だから、子供がいてもOKで、私も子供が1回稽古場に行ってるし、美術スタッフさんも子供がいる。そういう人を排除しないようにしないと、一緒にやりたい人と演劇できないよねっていう頭が多分あって、それで始まってる企画だったんですね。 

とは言っても、子供いる人みんなウェルカム!みたいな感じでスタートはしたけど、今おもちさんが話してくれたみたいに、稽古場に子供連れてきたけど…さてどうする?みたいなところは全然あるままでやってたんですよね。うちの子が当時5歳で、あと稽古場に来てた子は4歳とか5歳、ちょっと上で小学校3年生…小3の子は2時間見てましたね。通し稽古。 

おもち その子がちゃんとそういうのを見れる子ってのもあったんでしょうけど(笑)。 

ライト うん、そういうふうに、ちゃんと稽古を見れる子、iPad的なものを渡してたらとりあえず落ち着いてる子、とか、That’s 乳飲み子!とか、状況がすごい違いましたね。 

私覚えてますよ、おもちさん、子供背負ったまま……。 

おもち やりました!(笑) 

ライト 通しをしてましたよね(笑)。 

おもち そうそう、そうなんですよ(笑)。 

やっぱり、母親の意識として、子供がそこにいたら、絶対に頭にそのことが貼り付いちゃうんですよ。お芝居中も、子供にふにゃ、って言われたらもう意識がそっち行っちゃうし… 

そのときは通しをやってる途中で起きちゃったから、ダメだここで泣かれたら何もできない…!と思って。おんぶしたら、とりあえず泣かないんで、そのまま子を背負って、いることを忘れるというか、一体になってる感じで、やりました。 

松本 すご~い…。 

おもち やらせてもらえてよかった。よかったけど…(笑)。 

松本 いや、でも、めちゃくちゃ必死ですよね、それ。おもちさん自身がね。 

おもち や、そうです。普段お芝居する以上に、何かを開いて、こう…やってる感じ。 

(頭の上で手をぱーっと開くおもちさん) 

松本 理想を言えば、おんぶせずに通しができた方がいいわけですよね。 

おもち うん、全体を通して、連れてってももちろんいいんだけれども、誰かに預けられたらいちばん嬉しいです…そりゃそうなんですけど。 

まあ、毎回連れて行ってたわけじゃなくって、実家の母に託していったり、夫に頼んだりとかも多くて。保育園とかも特に入っていない状態なので、となると預け先問題とかもあるよなぁって…もう、この歳の子供2人いて誰が演劇できるん??って思いながらですね。 

ライト それはそうだよなぁ… 

おもち 子供が増えてまた壁にぶち当たってます。前回は子供1人だったので、母親に頼んで夜稽古場に行って何とかやるみたいなこともできたんですけど、2人は無理ですって言われちゃって。 

同じ子供がいるでも、何歳かとか、何人いるのかとか、親がどうしたいのかとかで、ベストって全然違うから、難しいよなって思います。 

松本 同じ団体に今も所属はされてらっしゃる? 

おもち そうです、今の団体で、できることを模索していきたいって思ってます。 

松本 今後も子供ウェルカムの方向性で行く感じなんですか? 

おもち そこは多分変わらないんじゃないかなって思います。 

ライト 稽古も、前半戦はZOOMでやったりするんですよね。 

どんなやり方をしたら稽古場に来る日数を減らせるかを模索してて、稽古期間をすごく長くとってZOOMで週1回集まるみたいなのを最初にやってみるとか、逆に稽古期間をギュッと短くしたらどうなるかとか、すごい実験はしてる感じがします。何がいちばん辛くないの?みたいな。 

松本 あぁ、素晴らしいですね。参加されてる方と話して、そうやって変わっていこうと、変えていこうとしてる。 

ライト まあ、ちょっと大変そうです。 それでも、そうやって試行錯誤しているよっていうことが、もっと広まってくれたらいいなって思ってます。 

おもち うん、確かにそうですよね。 

松本 取り組んでること自体がすごいことですもんね。 

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